4月22日は「地球の日(アースデイ)」。新型コロナ対策が環境悪化にブレーキ?

世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスが、地球環境の悪化にブレーキをかけてくれる可能性があります。

4月22日は「地球の日(アースデイ)」です。米国の上院議員のゲイロード・ネルソンが環境問題についての討論集会を呼びかけ、1970年4月22日に討論集会を開催し、以来4月22日のアースデイ集会は世界各地に広まりました。50年の節目を迎えた今年、新型コロナウイルス感染防止のための外出制限や生産活動の停止などが、地球環境改善に寄与しているかもしれないのです。

新型コロナ対策が環境悪化にブレーキ?

地球環境が年々悪化してきましたが、今年になって世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスが、地球環境の悪化にブレーキをかけてくれる可能性があります。

2020年1月1〜20日(左)と2月10〜25日の二酸化窒素(NO2)濃度の比較(NASA提供)
2020年1月1〜20日(左)と2月10〜25日の二酸化窒素(NO2)濃度の比較(NASA提供)
ウェザーニュース

図は今年3月2日にNASA(米航空宇宙局)とアースオブザバトリーが公開した衛星画像で、二酸化窒素(NO2)の濃度を示しています。左が1月1〜20日、右が2月10〜25日になります。中国の武漢から始まった感染拡大で全国的に移動制限や生産活動の制限を行った結果、色が濃い500μmol/m2といった高濃度地域が消えて、大半が100μmol/m2以下に下がったのです。

二酸化窒素は、自動車や航空機の排気ガスや工場の排煙など高温燃焼に伴って発生する有害ガスです。二酸化窒素の濃度が低下したということは、地球温暖化の主因とされる二酸化炭素(CO2)や微小粒子状物質(PM2.5)なども減少したと思われます。つまり、大気がきれいになったのです。

欧米も生産活動の低下で大気が改善

新型コロナウイルスの感染が蔓延したイタリアでも二酸化窒素排出量が激減しました。欧州宇宙機関(ESA)が二酸化窒素排出量変化(10日間における移動平均値)の動画をホームページ上で公開しています。1月の平常時(図1)と感染が拡大して移動制限と工場操業停止が行われた3月(図2)を比較すると、特にイタリア北部地域で二酸化窒素排出量が顕著に減少していることがわかります。

図1、ESAの人工衛星(Sentinel-5)による二酸化窒素排出量の衛星画像(2020年1月)
図1、ESAの人工衛星(Sentinel-5)による二酸化窒素排出量の衛星画像(2020年1月)
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図2、ESAの人工衛星(Sentinel-5)による二酸化窒素排出量の衛星画像(2020年3月)
図2、ESAの人工衛星(Sentinel-5)による二酸化窒素排出量の衛星画像(2020年3月)
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アメリカでも、同じような現象がみられます。NASAの人工衛星の測定データによると、車の通行量が減ったことなどにより、アメリカ北東部では窒素酸化物が30%も減少したそうです。

日本の大気汚染物質も減少

空気のきれいさを表す指数(CII)
空気のきれいさを表す指数(CII)
ウェザーニュース

黄砂やPM2.5などの大気汚染物質の監視や予測を行っている、ウェザーニュース予報センターの解析によると、日本でも3月の大気がきれいになっていることが分かりました。

大気汚染物質の少なさを表す指数(CII:Clear aIr Index〈※〉)をみると、2019年3月の全国平均は0.78だったのに対し、2020年3月は0.81前後と、0.03ポイント高い結果に。中国大陸で大気汚染物質が減少し、越境汚染が低下したことなどが原因として考えられます。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、外出制限や生産活動が縮小・停止されたことで、一時的とはいえ地球環境の改善につながったと言えそうです。人間の活動と地球環境は切っても切れない関係にあることをいみじくも証明してくれました。新型コロナウイルスが収束した後も、地球環境の悪化を防いで、持続可能な社会を目指していきましょう。

※CIIは、オゾンやPM2.5などの大気汚染物質の少なさを表す指数で、NICT-情報通信研究機構による計算式をもとにウェザーニュースが独自で算出しています。値が高いほど空気がきれいなことを表しています

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