世界からCが消えたらどうなる? デザイナーでステージ4のがん患者・中島ナオさんの思い

「がんを治せる病気にしたいという想い」を可視化するプロジェクト「deleteC」始動
デザイナーの中島ナオさん
Nao Nakajima
デザイナーの中島ナオさん

ふたりにひとりが、がんになる時代。

あなたは、「deleteC」というプロジェクトを知っていますか?

この世界から、がん(cancer)の頭文字の「C」を消して、「がんを治せる病気にしたいという想い」を可視化するプロジェクトです。

なぜ、Cを消す(deleteする)のでしょうか?

どうしたら、がんは治せる病気になるのでしょうか?

「deleteC」の発起人で代表の中島ナオさん。デザイナーでステージ4のがん患者でもある中島さんは、なぜこのプロジェクト立ち上げたのでしょうか?

これまでの歩みや、日本の医療のがん治療の現状、これからの計画について聞きました。

「がん×ライフスタイル」をデザインする。

中島さんが、乳がんと診断されたのは、31歳。教育系NPO法人に勤めているときのことでした。

当時、「5年生きれば長生き」とされる病状だったそうです。

その後、治療しているとき大学院受験を決意し、1年後には大学院生に。

2年前に転移がわかり、がんが最も進行している「ステージ4」と診断されました。

気づけば、がんと診断されてから5年ーー。

いまも「がん」の治療をつづけながら、普段の暮らしを続けています。

デザイナーとして、がん治療中に頭髪に抜けた経験をもとに、髪があってもなくても楽しめるヘッドウェア「N HEAD WEAR」を開発。“がんになっても「大丈夫!」といえる社会”の実現を叶えるために、活動しています。

「deleteC」って、どんなプロジェクト?

そんな中島さんが、新たに立ち上げた「deleteC」は、日本におけるがん治療を前に進めるためのプロジェクトです。

実は、進行しているがんの治療が難しい理由のひとつは、「自分のがんに効く薬を見つけるのが難しい」ことなのだそう。

例えば、海外で使われている127種のがんの薬が、日本での使用を認められていません。

海外と比べると、がん治療の選択肢が限られているのです。

がんを治療している人にとっては、治療の選択肢が増えることは、生きる選択肢が増えること。

命と向き合う患者は、ひとつでも「受けられる治療」を増やしてほしいと願っています。

しかし、これらの薬が認可されるには、治療の有効性を調べる”治験”が必要で、そのためのお金が必要。日本では予算が足りないのが現状です。

2018年、がん関連の薬剤の治験数 日本とアメリカでは治験の数が大きく異なる。
deleteC
2018年、がん関連の薬剤の治験数 日本とアメリカでは治験の数が大きく異なる。

「deleteC」は、「治験をする医師の支援に資金を活用し、 その希望を増やしていくことを目指す」プロジェクト。現在、クラウドファンディングで法人立ち上げのための寄付を呼びかけています。

どうやって参加するの?

「deleteC」プロジェクトへの参加方法は、簡単。がん(cancer)の頭文字であるアルファベットの「C」を、身の回りの言葉から、消せばいいのです。

きっかけは、アメリカ有数のがん医療機関「テキサス大学MDアンダーソンがんセンター」の腫瘍内科医、上野直人さんにもらった一枚の名刺だったそうです。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHP。左上、病院名のCancerに赤い線が引かれている。
MD Anderson Cancer Center
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHP。左上、病院名のCancerに赤い線が引かれている。

Cancerを消す名刺のデザインを見て、「C」を消すアイデアが浮かびました。

企業のロゴや商品にある「C」。

個人の名前にあるの「C」......。

※企画の性質上、著名な企業のロゴを使用していますが本事業の協賛企業ではございません。
deleteC
※企画の性質上、著名な企業のロゴを使用していますが本事業の協賛企業ではございません。

身近にあるCを、消してみたら...?

「がんを治せる病気にしたい!」という、みんなの想いの可視化できたら、治療中の患者にとっては、大きなエールや希望となるのではないでしょうか。

1)Cを消した商品を販売する
2)Cを消して想いをかたちにする
3)寄付をする

中島さんたちは今、それぞれのかたちで1〜3に参加してくださる企業や団体を探しています。そして、その商品やサービスの売上の一部を、新しい研究や薬の開発につなげたいと話します。

「みんなの行動が、希望につながる」

「deleteC」のアイデアは、どんどん仲間の輪を広げていきます。

このアイデアを一緒に考えたのは、認知症の状態にある方々が働く「注文をまちがえる料理店」を企画したプランナーの小国士朗さん。さらに、国立成育医療研究センター研究員で子宮頸がん経験者でもある長井陽子さんも、医療の知識をもつ強力なメンバーになりました。

(左から)長井陽子さん、中島ナオさん、小国士朗さん

中島さんは、「ステージ4の私の場合、薬が効かなくなる日は必ずくるといわれる現状がある。そんながん治療を少しずつでも変え、未来を手繰り寄せるきっかけを作りたい。想いをみんなで行動に移せば、希望につながる」と語ります。

「患者は、希望を持ちたい。選択肢を持ちたい。動いている人がいると実感できるのは、うれしい。応援してくれる企業の存在は、日常に届く、大きな勇気になる

ふたりにひとりが、がんになる時代。がんという病気に対して思いのある人はたくさんいます。

「ニュースで、著名な方が亡くなられたときに、たくさん報道され、多くの方が思いを寄せます。知り合いの場合でも、ご家族、友人……病気に悲しみ、何かできることがあればしたかったと思う人がいる。その思いだけが残っている。それを行動に変えられたら…」

中島さんは、「ランチで、がんは話題になりにくいけど、きっと話題に上がってくるのがdeleteC。パソコンにもキーがある”delete”という言葉を選んだのは、自分たちができることを行動に移せるプロジェクトにしたかったから」と話します。

世界からCが消えたなら、どんな新しい景色が見えるでしょうか。

がんを治せる病気にする挑戦が、始まりました。Cのない世界、一緒に想像してみませんか?

ハフポストに、Cがないのが残念です。