政治
2019年05月15日 11時14分 JST

AI時代は社会主義国の方がいい?民主主義はオワコンになる?落合陽一氏、ひろゆき氏らが激論

政治は高齢者だけのものになってしまうのだろうか?若手の論客が「民主主義はオワコンなのか」をテーマに議論した。

AbemaTIMES

 令和元年の今年は12年に1度、参院選と統一地方選が重なる年だ。しかし2065年には実に2.6人に1人が65歳以上となる。世界を圧倒する速さで超高齢社会がやってくる日本。日本の政治はシルバーデモクラシー、つまり高齢者だけのものになってしまうのだろうか。そこで4月30日放送のAbemaTV『けやきヒルズ』では、若手の論客が「民主主義はオワコンなのか」をテーマに議論した。

・落合陽一(筑波大学准教授)
・西村博之(2ちゃんねる創設者)
・西田亮介(東京工業大学准教授)
・竹下隆一郎(ハフポスト編集長)
・佐藤信(東京大学先端研助教)
・磯村暖(美術家)

■シルバーデモクラシーが加速

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落合:民主主義はコンテンツではないんだから、「オワコン」という言葉が正しいかどうか(笑)。そしてシルバー民主主義も「問題」ではなく「現象」で、世代論で切ることに問題があると思う。この前の北区長選でも、友人の音喜多駿さん(35)と84歳の対立構造で語られていたが、年齢は変えられないし、人口動態も変えられないから、全員にとって優しくない民主主義が始まってしまうと思う。

西村:全員に優しい民主主義なんて、もう無理ではないか。

西田:現役世代の年長世代の数は違っているので、利益は対立する。政治には数と金の力が大きく影響するという意味では、現役世代が令和の日本をどうやって維持していくのかを考える上で、世代間の対立を問題にすることもできなくはない。

重要なのは、若年世代が投票に行かないということは必ずしも問題ではないと考えられているということ。人は成熟していくものなので、政治についても考えて投票に行くようになる。ただ、投票率が1970年代の半分くらいになっているので、若年世代がどうやって政治への関心や問題意識を持つことができるのかは考えてもいい。

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西村:そこには”罠”があると思う。仮に若年世代の100%が投票したとしても年長世代の票よりも少ない。つまり、若者が頑張って投票に行こうが行くまいが、高齢者向け政策の方が通りやすいという構造は変わらない。投票に行かない若者の自業自得だ、という”言い訳”として使われているだけだと思う。

西田:まさにそう。だからこそ年長世代をきちんと説得する作業が必要になってくる。資源の量が限られているならば、社会保障費や年金などの資源を若年世代に回して、年長世代には我慢して頂く必要があると。ただ、それは政治的にはとても難しいことだとされてりし、実際には全く進まない。

若年世代が政治的な決定力を握るのは投票率が100%になっても無理だということには同意するが、「時間」の問題が無視されていると思う。若年世代もいずれは年長世代になり、マジョリティになっていく。だからこそ多くの政党が若年世代に好感を持ってもらおうと積極的に動いている。そこで、今のシステムにどんな利点があって、どんな課題があるのか、というメカニズムを理解してもらうことが重要だ。

落合:「時間」というのは正しい考え方だ。人口ピラミッドが減少トレンドに入るのは2035年くらいだが、そこからしばらくすると安定してきて、おそらく全世代が均等になっていくと思う。そこに至るまでの、世代間格差が一番大きくなるここから15年、20年くらいを考えることが重要だ。急激に人口動態が変わると、民主主義にとっては不安定な時期が生じる。

竹下:その期間を耐えられるかどうか。そして高齢者は金持ちで、優遇されていて、というイメージがあるが、高齢者自身も苦しいと思うし、高齢者寄りの政策イコールダメな政策ではないと思う。

■落合氏が”炎上”した「終末期医療問題」

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西村氏:嫌がられる議論だが、医療で寿命を延ばし続けることについてのラインを切らないと成立しなくなると思う。仮に平均寿命が200歳になったら、子どもたちが税金で支えるのは無理だ。国はどこかでその判断をしないといけないのに、後回しにし続けていると思う。意識はない、でも食べものをやり流されて生きている人について、自腹なら好きにやっていい。だけどどこまで税金で支えるのか。

西田:人の命よりもコストの方が重要なのか。終末期の判定は価値の側面が大きく、臓器移植法の採決でも多くの政党が党議拘束を外した。コストの問題は合わせて考えない方がいいと思う。

西村:誰が払うのかという問題だ。僕は少子化を解決しないと、こういう問題も解決しないと思っている。最終的には子どもを生む、育てるにお金を使わないといけない。でも高齢者の寿命を延ばすために大きなお金が動くようになっているし、人を生かすことにお金を使ってしまうと、どうすれば子どもが生まれるか、どうやって教育をするか、がどんどん削られてしまう。どこかにコストの問題が出てくる。お金は無限ではない。

落合:僕は年末年始に終末期医療の話で炎上した。その後、有識者の人たちから論文をもらったが、終末期医療にかかっているコストは実はそんなに高くないし、終末期であることを判定するための方法論もまだ確立されていない。それを予測するのはほぼ不可能だということ。しかし高齢化に伴う労働コストや、それに対するサポートコストはテクノロジーで減らしていかないといけない。命の決定よりも、社会の中でその人たちがどうやって働いていくのかとか、疾患に付き合いながらどうやって社会参画していくのかというところはもっと考えることができると思う。

西田:つくづく「人生100年時代」はキツいと思う。

落合:構造的には高齢者にも働いてもらうしかないから。

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竹下:だから本当に若者の意見が重視される国にして、若者寄りの政策を実現させようと思うのなら、1人1票の原則を変えるしかない。

西田:1人1票以外の仕組みを実現するためには憲法改正が必要だし、コストも極めて高くなる。

西村:それはもう民主主義ではなくなってしまう。金持ちだけが投票できた時代のように、権利を持っている人と持っていない人に分かれてしまうことになる。

佐藤:安全保障のように、社会保障以外の政策も大量にあって、そこにまで世代間対立を持ち込むと、本当は折り合えることも折り合えなくなってしまうし、結局は「このシステムは本当に頼れるのか」という正統性の問題だと思う。若年世代が「もう詰んでいるからこのシステムには頼らなくていいじゃん」と思ってしまえば、政治には参加しなくなる。

西村:参加しても解決できないし、政治を変えることも不可能なので、せめて自分だけは守ろうと海外に行くんだと思う。僕の周りのお金持ちは子どもをインターナショナルスクールに入れて、日本では育てないつもりでいる。

西田:それができるのはごく限られた人だからこそ、民主主義は重要だ、民主主義というのは配分のシステムなので、そこに参加しないということは自分たちのところには利益の配分が回ってこないかもしれない、ということを言い続けなければいけない。それから、資源の配分の問題、マイノリティの問題などを解決する方法を民主主義の外に置くことも必要だと思う。それはテクノロジーでも対応できる問題だし、行政的なアプローチでも対応できる問題だ。

西村:民主主義をやっている限り若年世代に資源は回ってこない、とも言えると思う。民主主義ではない形にしないといけないという話ではないか。

■社会主義>資本主義?

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 世界に目を向けてみると、イギリスでは民主主義の最たる手段とも言われる国民投票によって今もEU離脱の混乱の中にある。一方、台頭する中国では、習近平国家主席の「国家がどんな主義を実行するかは国家が直面する歴史的課題をどの主義が解決できるかだ」「中国特有の社会主義だけが中国を発展させられる」「資本主義は最後には滅亡し、社会主義は最後に勝利する」という論考が話題になっている。

落合:結論の出ないテーゼを言われると「分からん」としか言いようがないが(笑)、数十年の単位で社会主義が勝利するとは思わないが、自然の生態系みたいなものだと考えれば、100万年とか200万年単位で考えれば合っているのではないか。ミジンコが物理法則と池の資源量の中で全体最適になるように暮らしている、みたいな。

佐藤:色々な形の民主主義があって、その一つとして国民投票をやった結果、イギリスではブレグジットの問題が生じてしまった。日本においても高齢化などの問題で民主主義が行き詰まりを見せている部分もある。どういう文化の中でどういう形の民主主義が最適か、ということは考えないといけないし、社会主義の国々であっても、より平等でみんなが政治参画できる民主的な社会を作るということに関してはそれなりに言っている。だから「中国は民主主義ではなくて我々だけが民主主義だ」みたいな主張には固定概念が入っているとも思う。

西村:やはり長期的には民主主義と資本主義では平等な社会は作れないのではないか。

たとえばFacebookに莫大なお金を払っていた人がユーザーの投票行動を変えてしまったということが事実として起きているし、テレビにガンガン広告を出せば多くの人に影響を与えることもできる。つまり資本主義では投票権を買えるし、政治システムを動かすことができる。アメリカではロビイストがいて、メディアは自由にした方がいいとか、インターネットは自由な方がいいという法案を通しているし、メディアを規制する法律だって事実上買えることになる。一方、社会主義こそ1人1票で、メディアも規制されている(笑)。だから習国家主席の言っていることも正しいのではないかという気がしてしまう。

■技術競争が民主主義を崩壊させる?

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竹下:民主主義がうまくいっている国がないという話になっている。個人の自由を尊重しましょうとか、そういう憲法的精神、立憲主義が危機的状況なのではないか。

一方、AIなどテクノロジーの文脈から考えると、データを取りやすい中国が最強という説がある。つまり、個人の平等や自由は大事だけれど、日本やヨーロッパで個人情報が、平等とは…などとグチャグチャ話してAI技術や経済は停滞しているうちに、中国は経済発展を重視して一足飛びでやってしまう。そのどちらを取るのか、という岐路にあると思う。

西村:医療技術でも中国には勝てなくなると思う。お金を払って「この血液型で肝臓を移植したい」というと、同じ血液型の同じ年齢の人がなぜ突然死ぬのか不思議だが、3日後くらいには出てくるらしい(笑)。クローン技術などについても、他の国が”これはマズいよね”と言っている間にガンガン進めている。いずれ中国の成功例を我々が使うことにならざるを得ない。

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落合:単純に中国のやり方を批判することはできない。我々の国だって高度経済成長期には国の後押しで産業を伸ばしてきたし、関税の交渉も国主導で結構やっていた。哺乳類が生き残ったみたいな話で、社会システムは多様性がある方が変化に対する安定性が高い。だから「ここは民主的に解決しよう、ここは全体最適的に解決しよう」という、2つのイデオロギーを両立させるような民主制度は取り得ると思っている。例えば地方自治やローカルな問題では共産主義的な解決策、全体は民主主義で解決するというような。そういうふうフレキシブルなシステムも設計できると思う。

西村氏:ヨーロッパの人は自分の好きなシステムの国に移動して社会システムを選べるから。

西田:民主主義国といっても統治の形は多様だ。大統領制もあれば、我々やイギリスのように議院内閣制の国もある。そういう統治機構の多様性、バリエーション、規制のあり方についても考えていくべきだと思う。成長産業を作っていくという側面からの規制緩和と、個人の権利を尊重するための規制の厳格化を同時に行う局面を迎えていると思う。「民主主義か社会主義か」という議論になりがちだが、むしろGDPRを日本に持ってくるのか、それともアメリカの寄せていく方がいいのかなど、小さな話が必要な時代になると思う。

■AIが民主主義を破壊する?

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YouTubeは20億人の視聴習慣を分析、アルゴリズムで最適動画をおすすめしている。その結果、視聴される動画の70%はユーザが選んだ動画はなく、おすすめされたものだという。また、元オブザーバー編集者のキャロル・キャッドウォラダー氏は先月、ケンブリッジアナリティカの元社員が8700万人のFacebookのデータを不正に入手し、トランプ陣営とEU離脱のために動いたと明かしている。また、AI規制派のテスラCEOのイーロン・マスク氏は「AIは悪魔を召喚する所業に等しい。今すぐAIを規制するべき」としている。

落合:人がコミュニケーションを取るところに常に誰かの意思が介在したり、情報を提示されたりしたら本当にフェアな判断はできない。ただ、今までの世の中がフェアだったかと言われれば、それもノーだ。その介入度合いが個人ベースで最適化されることで高くなっているし、その意味で人間に対する世論操作の効率が高まったのは間違いない

西田:ただ、それによって民主主義が破壊されたとまで言えるかどうかはよく分からない。落合さんの話で言えば、それほどの影響を持つ媒体に対して、どのように規制をかけていくのかだ。たしかに現実的には主体的な投票はあり得ないし、何にも影響されない、意見が左右されないということはないが、主体性に関する”フィクション”の維持は考えないといけない局面を迎えている。

西村氏:AIでコントロールされて行動すると決めたとしても、満足していて困っているわけでもないので、規制をする必要が果たしてあるのか。

竹下氏:規制というより、こういうふうにデータを使って、こういうふうにターゲティングをしている会社だとオープンにはすべきだ。

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西田氏:この番組はテレビ朝日のスタジオで撮っているが、地上波の番組は放送法の影響を受けるので、ガイドラインもある。しかしAbemaTVの場合それはない。ただ、視聴者が数百万人のレベルになるのであれば、マスメディアに準じた規制を設けるのが筋だと思う。特にネットの場合はテレビよりもパーソナライズして影響力を行使することが可能なので整合性がとれる。

竹下氏:AbemaTVは国内企業なので規制できるが、海外の企業はどうするのかはポイントだと思う。

西村:このメディアは規制されていて安全だから見てもいい、なんて無理だ。”規制があるから安全だよね”ではなくて、”インターネットは安全ではないよね”と諦めて、出てくるものを信じるのはいかがなものか、という教育をするしかないと思う。

佐藤氏:AIが民主主義を破壊するといっても、AIの技術が破壊しているわけではない。それがコミュニケーションの間に入ってくることの問題だと思う。テレビだったらチャンネルを変えることは簡単にできるが、新聞の場合、特定の新聞だけを購読する家庭で育った人たちは、他の新聞が何を言っているのか併せて読んでいないことになる。そういうことが我々の当然の前提になっていることを認識していくことがそもそも大事だ。

■語るなら「今」を

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磯村:ここまでずっと未来の話ばかりしていると思う。それよりも今の問題を考えたい。規制の話以前に、人を傷つけることはダメとか、そういう最低限の話ができていない状態だと思う。投票を促す映像や広告の内容にフェイクが混ざっていて誰かを傷つけていたとしたら、それをどうするかだ。令和になったから社会が変わるわけではないと思っている。現在の反省が抜けているような気がした。未来の勝利とか成功を語る時に、現在どういうことをやっているかの話の背景を考えないといけない。

落合:全体論を見る時に、長いところを見る。長い時間のスパンが下りてくるのに時間がかかるが、それを決める人にとっては今の話だ。ローカルのことをパラレルで決めた方がいいというのはおっしゃる通りだ。

佐藤氏:未来像についてはみんな言いたいことがあるし、語りやすい。全然リアリティのないことも言えてしまう。しかし、その真ん中でどれくらいのビジョンを見せられるのかというのが実は重要な時代だ。磯村さんがおっしゃったように、平成を振り返ることは大事だ。平成はその”中期”の視点が弱かったと思う。政治改革という大きな変革があったが、それをどうすれば10年とか20年のスパンで動かせるかがやはり欠けていた。結果として民主党政権ができたが、うまくいかなくてその後に反発が起きたAIの話についても、自分の人生にどういう影響があるんだろうというふうに落とし込んで考えていくことがあってもいいと思う。

竹下:”ウルトラウエストを目指せ”だろう。とことん欧米化した方がいい。それは憲法や人権などの近代主義だ。AIとかシリコンバレーとか中国みたいにぶっ飛んだ国を目指したいが、日本は愚直にやろうかなと。規制をしたり、歯止めをかけたりすることが大事だと思う。

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