記者が食いつく「6つの視点」とは? 良いことをやっても広まらない…と悩む企業に教えたい電通のメソッド

「良いことをやって、お金になる。しかも、結果SDGs」を実現する方法とは

「なぜSDGsに取り組むのか?」。それを「SDGsストーリー」と称して、企業理念からのアプローチ、イシュー(社会課題)からのアプローチについて連載してきた。本記事では、オリジナルメソッド「PR IMPAKT®️」を活用し、世の中の反応から逆算してアクションを設計する方法を考えてみたい。社内外のステークホルダーの巻き込み方に頭を悩ませているサステナビリティ推進担当者の一助になればと思う。

良いことやっても広がらない?

これまで企業とSDGsの関係性については、パーパス(社会的存在意義)をはじめ、たくさんの議論がなされてきたが、多くの企業にとって、SDGsは経営トップやコーポレート部門のマターであり、事業部門や現場にとっては、どこか他人ゴトだった。

食や衛生など生命に関わるような事業、いわばMDGs※1的な課題に近い事業ならSDGsへの貢献を感じることは多いかもしれないが、業態によっては、日々の業務とのつながりを実感するには想像力が必要だ。「良いことをやっても、広がらない。それで売れるの?」という意見も出てくるかもしれない。“社内浸透”は、どの企業にとっても悩ましい課題の一つだ。

「良いことをやって、お金になる。しかも、結果SDGs」。企業の推進担当者にとっては、「世の中の反応」が目に見えるということが、ベストプラクティスを生み出すための大きなモチベーションになるのではないだろうか。

※1 ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)。途上国の開発問題を中心に、2015年までに達成する8つの目標を掲げた。SDGsの前身。

PRとしてのSDGs(その不可分な関係)

少し極端な言い方かもしれないが、ステークホルダーに伝わらず、世の中の反応・動きがなかったとすれば、それは、対外コミュニケーションとしては「やっていない」とほぼ同義である。SDGsという共通言語を企業のブランドコミュニケーションに活用したいものだが、「知られていない・伝わっていない」では意味がない。そんな悩みに応えるのが、PRのチカラだ。

少し具体的に話そう。PRとしてまず考えられるのは、自社サイトやSNSアカウントなどオウンドメディアで継続的に発信し、情報を蓄積しておくことだろう。でも、それが直接届くのは、自社のファンや既に関係構築できている人たちが大半。もっとさまざまなステークホルダーに広く伝えるには「アクションがニュースとして報道されること」が効果的な手法となる。

このグラフは、企業広報戦略研究所(電通パブリックリレーションズ 内)が2019年に実施した調査だ。SDGsに対する企業の取り組みに関する認知経路は、生活者の約3人に1人が「番組や記事」という結果が出ている。

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出典:全国生活者1万500人を対象とした 「2019年度 ESG/SDGsに関する意識調査」から/SDGsに関わる具体的な企業の取り組みを想起できた人(n=4,609)の認知経路

では、どうすれば自社のSDGsの取り組みがニュース報道されるのだろうか。

PR IMPAKT®️とは

そこで、「世の中がどう反応するか」を検証する電通グループのオリジナルメソッド「PR IMPAKT®️」を紹介しよう。メディアがニュースを報道する際、どのような視点で取材し、題材を取捨選択しているのか。膨大な報道の調査・分類から「メディアが報道したくなるポイント」として6つの視点を抽出している。

Inverse(逆説・対立構造)、Most(最上級・初・独自)、Public(社会性・地域性)、Actor/Actress(役者)、Keyword(キーワード・数字)、Trend(時流・世相・季節性)の頭文字を取って「IMPAKT」。(英単語ではIMPACTだが、ここではIMPAKTとしている)。6つすべての視点を網羅する必要はないが、この視点を入れながらアクションを創造することで、メディアで報道される確度を格段に高めることができる。

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SDGsアクションをPR視点で見る

もう少し分かりやすくするために、6つの視点を3カテゴリーに大別してみよう。

まずは、PublicやTrendを合わせた「時代の気分」。今の社会が求めているか、時流の兆しがあるか、風向きと合っているか、といった視点だ。例えば、昨年10月の「食品ロス削減推進法」施行に伴い、10月は「食品ロス削減月間」となった。関心や報道が高まるこのタイミングで、食品ロスに関連する取り組みを戦略的に実施、情報発信していくのが効果的だ。

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次に、InverseとMostを合わせた「メッセージの強さ」だ。「世界初」「日本一」などの見出しで表されるような、独自性や自社だけの強みが挙げられる。これまでの慣習をひっくり返し、生活者に大きな共感や驚きをもたらすニュースだ。SDGsのアクションに限ったことではないが、InverseとMostは「PR IMPAKT®️」の中で、特に重要なポイントとなる。どちらかは、必ずアイデアに盛り込むことを考えたい。

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最後にActor/ActressとKeywordを合わせた「伝わりやすさ」。Actor/Actressとは、社内のキーパーソンや、取り組みを体現する第三者(生活者、有識者など)といった語り部のこと。Keywordとは、アクションを分かりすいネーミングや具体的な数字で表現すること。うまく言葉や数字を使えばコミュニケーションスピードを上げることができる。

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SDGsアクションのブラッシュアップ

アイデアを創造・検証する過程で、「良い取り組みだけど、メッセージ性が弱い、伝わりづらい」といった懸念が出てくるかもしれない。そんなときには、アクションを少し「ズラして」設計してみるのもコツだ。Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、How(どのように)の1点をズラしてみると、「PR IMPAKT®️」に当てはまる新たな視点が生まれやすい。

ただ、あくまでもSDGsで大事なのは、取り組みを行ったという「アウトプット」よりも、「アウトカム」(成果)である。短期的なニュースの獲得が目的になってもいけない。SDGsの取り組みが事業につながっているかどうか、あるいは社会や地域、生活者がどう変容したか。それをストーリーとして語ることが、生活者のみならず投資家を含むステークホルダーとのリレーション強化につながっていく。量だけでなく、質での評価も大事にしたい。

本記事は、アクション開発における「PR IMPAKT®️」の6つの視点、また、それを大別した「時代の気分」「メッセージの強さ」「伝えやすさ」の3カテゴリーを紹介してきた。アイデアを創造したり検証したりする際には、自分が新聞記者や雑誌の編集者になったつもりで、ぜひ、この視点をチェックしてみてほしい。

<プロフィール>

電通パブリックリレーションズ

国内外の企業・自治体・団体などの戦略パートナーとしてレピュテーション・マネジメントをサポート。インサイトに基づくコンテンツ開発と最適な情報流通デザインを通し、クライアントと共にソーシャル・イノベーションへの貢献を目指している

#電通TeamSDGs

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