徳川家康の存命中にスペインで出版、幻の「ドン・キホーテ」が7300万円で落札。「夢のような組み合わせ」

今回出展されたものには、作者のセルバンテスによる手書きの修正も含まれているといいます。

400年以上前に出版された小説「ドン・キホーテ」前後編が12月14日、サザビーズ・フランスで 50万4000ユーロ(約7360万円)で落札された。

オークションに出品されたのは、前編第3版(1608年出版)と後編初版(1615年出版)で、ともにスペイン・マドリッドで印刷された。

日本で江戸幕府を開いた徳川家康が亡くなったのが1616年なので、家康存命中に出版されたことになる。

今回出品された「ドン・キホーテ」
今回出品された「ドン・キホーテ」
DANIEL LEAL via Getty Images

サザビー・フランスの書籍担当者アンネ・ハイルブロン氏は「長い間姿を消していて、少なくとも 3世紀さかのぼる初期の版を入手できる機会は、ほとんどのコレクターにとって、一生に一度のチャンスです」とガーディアンに語っている。

「ドン・キホーテ」はスペインの作家ミゲル・セルバンテスの作品で、今回出品された2冊はもともと、駐仏ボリビア大使だったホルヘ・オルティス・リナレス氏が、1936年に購入したものだ。

作品を調査した古書専門家のジャン=バティスト・ド・プロヤート氏は「これらの本は、ゲーテが 1827年に『世界文学』と呼んだもの、つまり、誰もが知り楽しみ聞いたことのある作品の一つです」と、 エル・パイスに語っている。

エル・パイスによると、オルティス・リナレス氏は当時パリに住んでおり、スペインやラテンアメリカに関連する作品の他、フランスの書籍も収集していた。

「ドン・キホーテ」の初版を手に入れるため、オルティス・リナレス氏はロンドンにある古書専門店マッグス・ブラザーズを訪れたものの、すでに売れていた。

そのため、店に連絡先を残してパリに戻ったところ、数年後に電話で入荷が伝えられ、オルティス・リナレス氏はすぐさまロンドンに行き第3版の前編を100ポンド、初版の後編を750ポンドで購入した。

今回出品された「ドン・キホーテ」
今回出品された「ドン・キホーテ」
DANIEL LEAL via Getty Images

「ドン・キホーテ」は、騎士道の物語を読んで妄想にとらわれた、スペインのラ・マンチャ地方出身の貴族の物語だ。

この貴族ドン・キホーテは、信頼する従者サンチョ・パンサと旅をしながら、行く先々で風車に戦いを挑むなどの行動をとり、人々に嘲笑される。

作者のセルバンテスは、シェイクスピアや現代の作家にインスピレーションを与えた存在として高く評価されており、「ドン・キホーテ」は最初の近代小説とみなされている。

プロヤート氏は、今回出品された2つの本について「夢のような最高の組み合わせの1つ」とガーディアンに話している。

中でも、特筆すべき点は前編第3版にセルバンテスによる手書きの修正が含まれていることだ。

プロヤート氏は「1608年版は、セルバンテスによってチェックおよび改訂された最後のものだ」とガーディアンに話している。

「70年以上市場に出回っていなかった、これほどまでに貴重な本を見つけることができたのは奇跡です」

「この2冊は同じ装丁であるため、例え前編が初版でなくても、間違いなく一流品です」

今回のオークションでは、オルティス・リナレス氏が所有していたセルバンテスの短編集「Novelas ejemplares(模範小説集)」1613年版も、40万3200ユーロ(約5900万円)で売れた。

出品された「模範小説集」は、もともとはルイ14世の最初の司書ジェローム・ビニョン氏のもので、 ハイルブロン氏は、「最も珍しいセルバンテスの作品の1つだ」と述べている。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。

注目記事