デモの写真を撮って2年近く刑務所に ~エジプト獄中からの手紙~

エジプト人報道写真家、マーモウド・アブー・ゼイドさんは、同国で悪名高い刑務所の小さな監房に600日間拘禁されてきた。罪状は2013年8月のラバー・アルアダウェヤで、座り込みデモの人たちが暴力的に解散させらされた様子を写真に撮ったことだ。

今年1月、4年前の革命を記念する日にも各地でデモや集会があり、衝突で死者を出した。©AFP/Getty Images

エジプト人報道写真家、マーモウド・アブー・ゼイドさん(27才)は、同国で悪名高いトラ刑務所の小さな監房に600日間拘禁されてきた。罪状は2013年8月のラバー・アルアダウェヤで、座り込みデモの人たちが暴力的に解散させらされた様子を写真に撮ったことだ。ムルシ元大統領が2013年7月に追放されて以来、多数のジャーナリストが逮捕されてきた。ゼイドさんもそのひとりだった。

以下はゼイドさんが監房から送ってきた痛ましい手紙である。

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「私の人生は2013年8月14日の朝、永久に変わってしまった。カイロの通りで抗議のデモをしている人たちを撮っていたら、警官がやってきて通りを封鎖した。多くの人が一網打尽に逮捕された。その中には、モルシ元大統領派ばかりでなく、無関係な人たちも含まれていた。私も、フリーランス仲間のフランス人の報道写真家ルイ・ジャメも、米国人ジャーナリストのマイク・ギグリオも捕まった。

私たちは警察の車に乗せられ、カイロスタジアムへ連行された。

死ぬんだと思った。

スタジアムに着いて2時間後、一部の人たちが解放された。ジャメとギグリオも自由になった。残った私たちは、その日はそのままスタジアムに拘束され、その後警察署に移された。

とても狭くて換気口もない監房に押し込まれた。そこには40人が詰め込まれ、座ることもままならず、異常な暑さの中で息ができなかった。ここでの3日間、食べ物や飲み物は一切なかった。

警官たちはどう殴り、拷問するのが痛みや危害を効果的に与えられるか、話し合っていた。彼らは毎時間やってきては、あらゆる物で私を殴りつけた。これまでの人生で最悪の日々だった。今でもその当時のことを思うと痛みを感じる。

警察署での長い3日間が過ぎ、全員が小さなバンに詰めこまれて、刑務所に移送された。

刑務所の前庭に着いた後の状況は最悪だった。ドアをロックされたバンの中のうだるような暑さの中で、水も食べ物も換気もなく7時間ほっておかれた。同じような車が15台くらい待機していた。1台から全員が降ろされるのに相当な時間がかかっていた。私たちは3番目だった。

後ろの車では37人が死んだ。警官がその車に催涙ガスを投げこんだのだ。悲鳴が上がった。周りの人が空気を求めてあえぎ、祈るのを聞きながら、私も死ぬような気がした。拷問のような7時間が過ぎ、警官がドアを開け、刑務所に入れられた。4カ月後にここトラ刑務所に移され、裁判を受ける前の勾留で600日を過ごしている。

トラ刑務所は墓地のようだ。冷たいタイルの床に寝て、所持品は壁から突き出ている釘にかけてある。食事の用意をする小さな台所がある。その台所はしゃがんで用を足すトイレのすぐ隣にあり、ふたつの間には、かろうじてプライバシーを守るための毛布が吊るされている。

私がいる監房は4メートル四方もない。そこに政治囚12人がいる。何日も、ときには何週間も、太陽や新鮮な空気から遮断される。

私は報道写真家であり、犯罪者ではない。無期限に拘禁されていることは精神的に耐えられない。どんな動物でもこのような状況では生き残れないだろう」

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エジプトでは2013年7月にモルシ大統領が失脚し、その後、モルシ支持派のデモや座り込みが各地で起こった。それを治安部隊や警察が武力で排除し、8月には1,000人近くが死亡した。デモに関係ない人も多くいた。

当局は暴力的な抗議行動を行ったとして、これまでに400人を超える死刑判決を下した。3月には、その1人の死刑が執行された。一方、大勢の市民が死亡した件では、有罪となった当局側の人間はほとんどいない。

当局の姿勢を問題視するジャーナリストやNGO関係者の不当逮捕も続いた。

先週5月16日、エジプトの裁判所は、モルシ元大統領をはじめ105名に対して、死刑が相当であるとの判断を下した。死刑を政敵排除に利用し、デモ規制法を制定して弾圧傾向を強めるエジプト政府に対し、国際的な批判が高まっている。

▽関連ニュース:モルシ元大統領ら100人以上に死刑判断

(アムネスティ・インターナショナル日本)

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