フリーランスと会社員、大きな「意識」の違いは? 副業したい人の新たな課題も(調査結果)

会社員の4割は副業に意欲的。これからの新しい働き方は?
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フリーランスの醍醐味は? 会社員の「副業」希望の動向は?

フリーランス協会は2018年5月、ランサーズとWaris(ワリス)、政策金融公庫それぞれが実施したフリーランスの実態に関する調査結果についてセミナーを開催した。

フリーランス協会が4月に発表した「フリーランス白書2018」から見えてきた、新しい働きかたとは? フリーランスと会社員とは何が違うのか、その実態をレポートする。

フリーランスの年収は?

同白書に回答したのは、同協会の一般会員とメルマガ会員など計1411人。調査結果によると、フルタイムで働くフリーランスの年収は、大学生や定年退職者などを中心とした「すきまワーカー」を除いて、300~500万円の割合が30.2%と一番高い。

その年収分布は会社員と大きな差はないが、年収100万円未満と800万円以上の割合はフリーランスの方が多く、会社員よりも年収のバラつきは大きくなっているという。

フリーランスと会社員の平均年収比較 出典:フリーランス協会

フリーランスと会社員、大きな違いは...

フリーランスと会社員の「満足度」を比較すると、全項目でフリーランスの方が満足度が高くなっている。

「就業環境」や「プライベートとの両立」といった項目だけでなく、「社会的地位」や「収入」においてもフリーランスの満足度が高くなっているのが特徴的だ。

フリーランスと会社員の「満足度」比較 出典:フリーランス協会

フリーランス協会の河合優香理氏は、「フリーランスには自ら働き方を選択し、納得したうえで自律的に働いている人が多いのではないか」と推察している。

また、フリーランスと会社員の仕事に対する「意識」比較では、面白い傾向がみられた。

フリーランスの場合、会社員と比べて「セルフブランディング(+26.5%)」「顧客/市場のニーズの把握力(+34.5%)」「自分の幅を広げる努力(+23.8%)」「成長に結びつく専門性・能力・経験(+20.7%)」といった項目が、大きくポイントの差がついた。

このように、フリーランスは会社員と比較して自分の能力や資質をより重視している。

しかし、会社員が唯一フリーランスと比べて重要視している項目があった。「忍耐力」だ。

フリーランスと会社員の満足度比較 出典:フリーランス協会

フリーランス白書2018に調査協力した法政大学大学院 政策創造研究科の石山恒貴教授は、次のように語った。

「日本の会社員における『やりがいの低さ』が目立つ結果となりました。企業の中で働くうえで、自分を売る力を高めたり、とがった挑戦をすると、陰で文句を言われてしまうような現状があるのかもしれません。しかし、専門性を高めることなく、目立たないように我慢を続けることが、果たして幸せなのかということを会社員は考え直す必要があるでしょう」

会社員の4割、副業に意欲的

一方で、会社員の「新しい働き方」に対する関心は高まっている。

フリーランス白書2018の「今の働き方をより良くするために考えていることは?」という問いに対して、会社員の41.8%が「副業」の挑戦に意欲的だったのだ(※)。

この数字は「転職」の31.2%より高い。しかし、新しい働き方への興味はあっても「漠然とした不安感」「何から始めてよいか分からない」という回答が多いのが現状のようだ。

※会社員への調査結果は、マクロミルが1000人の会社員を対象に実施。

会社員が新しい働き方を実践するときの障壁 出典:フリーランス協会

副業、企業はどう受け入れるのか

副業を希望している会社員の受け皿はあるのか。

石山氏は、現状について「副業を容認する企業に注目が集まりやすいですが、どのように受け入れるかといった話まで関心が及んでいません。多くの企業が、副業人材やフリーランスを活用しようという認識をまだ持てていないのは大きな課題」と語った。

経済産業省の「平成28年度 働き方改革に関する企業の実態調査」によると、フリーランスの人材を活用している企業は18.9%。「現在活用しておらず、今後の活用も検討していない」企業は47.6%と、およそ半数を占めている状況となっている。

フリーランス人材の活用に関する状況 出典:経済産業省

フリーランス協会理事で、文系フリーランスと企業のマッチング事業を展開しているWaris代表取締役の田中美和氏も、ハフポスト日本版に対して「個人の意識の変化スピードに比べると、多様な人材を受け入れる側の企業の変化はもう一歩足りない」と指摘する。

「ビジネス領域のフリーランスを活用するメリットの一つは、社内になかった知見が得られること。フリーランスと聞くと、社会保険の負担もないですし、リーズナブルであることが注目されがちです。しかし、本質は専門人材を活用することで、『事業の成長』『イノベーションの創出』までのスピード感を、より早くできることだと考えています」(田中氏)

新しい働き方を広めるために

ここまで、フリーランス白書2018の一部を紹介してきた。より詳細な結果は、協会のサイトに掲載されている。

最後に、「新しい働き方を日本で広めるためには何が必要だと思いますか」という問いに対して、フリーランスの人たちが自由回答で答えた内容の一部を紹介する。

当事者だからこそ分かる、新しい働き方を実践していくうえでの課題が浮かび上がった。

・正社員として働くことより社会保障が手薄なので、充実してほしい。

・保育園の優先順位が低いことの見直し。

・育児・介護・病気などで働けなくなったときのリスクヘッジ制度

・ローンや賃貸契約を結ぶのも簡単ではない。

・大企業と個人という関係であっても一緒に仕事をするパートナーとして、内容に見合った報酬、条件を提示するようにならないといけない。

・フリーランス側が自分のスキルを高める努力をすることも必要

代表理事の平田麻莉氏は、ハフポスト日本版に対して「フリーランスには育児休業制度がなかったり、社会保障制度が不利といった現状があります。企業やフリーランスの意識改革だけでなく、長期的には法改正を視野に入れた活動も展開したい」とコメントした。

フリーランス協会は、年会費1万円で賠償責任保険や所得保障制度、各種優待が使えるベネフィットプランの提供やイベントの開催などを実施している。

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