カエルの合唱、実は高度な技だった 通信開発へ応用も?「IoT社会実現のヒントになる」

鳴き声を分析すると、最初は声が重ならないようにタイミングをずらして「輪唱」し、平均約25秒後に全員が鳴きやんだ。

ニホンアマガエル(筑波大の合原助教提供)

カエルの合唱、実は高度な技だった 通信開発へ応用も?

集団で鳴くニホンアマガエルは、互いの声が重ならないように「輪唱」したり、疲れると一斉に休んだりと一定の法則性があることを、筑波大と大阪大の研究グループが解明した。円滑にデータをやりとりする通信技術の開発に応用できる可能性があるという。

筑波大の合原一究(いっきゅう)助教によると、ニホンアマガエルはメスを呼ぶためにオスが1秒間に約3回「クワッ」と鳴く。オス3匹を1匹ずつ飼育箱に入れて並べて鳴き声を分析したところ、最初は声が重ならないようにタイミングをずらして「輪唱」し、平均約25秒後に全員が鳴きやみ、同約5分後に再び輪唱を始めた。

こうした現象は、生物が集団になると高度な知能があるかのように行動する「群(ぐん)知能」と呼ばれ、すべてのものがネットにつながる「IoT社会」で必要な通信技術を開発するうえで注目されている。

共同研究者の大阪大大学院の小南大智助教によると、例えば交通事故を防ぐため、多くの車から速度データなどを集める場合、車1台ずつが基地局に直接データを送る方法だと互いの送信がぶつかって読み取れなくなる「パケット衝突」という障害が起きる。

しかし、カエルの合唱のように、周囲の車同士でデータをやり取りすればパケット衝突が起きにくく、台数が増減しても大きな混乱が起きにくいという。実際、研究グループが通信機器100台が隣り合う機器と通信し合いながら情報を伝えるモデルをシミュレーションしたところ、タイミングをずらして情報を伝え合ったり、一斉に送信を止めたりして、パケット衝突は起きなかったという。

合原助教は「カエルの合唱が最も効率がいいかはまだわからないが、群知能はIoT社会実現のヒントになりうる」と話す。研究成果は9日付の英国科学誌に論文として掲載された。(三嶋伸一)

(朝日新聞デジタル 2019年01月17日 10時10分)

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