医学部不正入試、元受験生が3大学を提訴 「絶望と諦めの気持ちが大きい」

損害賠償請求について、弁護士は「問い合わせは多数あるが、実際には正面に立って言い出せない、戦えない方ばかり」と明かしました。

大学医学部の不正入試問題で、得点調整などで不合格にされた元受験生の女性が6月5日、東京医大、昭和大、順天堂大を相手取り、慰謝料など計約3621万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

会見に出席した河合弘之弁護士
会見に出席した河合弘之弁護士
Kasane Nakamura

訴状によると、女性は2014年に大学卒業後、約2年の医療機関勤務を経て、2018年1月に3大学の医学部を受験。不当な得点調整などの末に不合格とされたという。

不正発覚後、実際には3大学の2次試験や1次試験に合格していたとして合格通知を受けとったといい、「無駄な浪人生活を余儀なくされた」「大学で学び、医師として働く時間も奪われた」など主張した。

提訴後に記者会見した女性は、女子差別や年齢差別について「噂レベルでは聞いていたけれど、不正入試が明らかになり、率直な気持ちとしては絶望と諦めの気持ちが大きい」と切り出した。

「一次試験には通っていたので、学力的には(合格ラインを)満たしていたのに、素養が不十分とされたのか、医師としての適性がないとされたのか、悲しくて色々考えた」と不合格とされた当時の心境を振り返り、「なぜ不合格にされたのかというと、私が女性であって年齢も18、19歳ではなく、親族に医師の縁故者もいなかったから。私のように医師になる道を諦めてしまった人は私だけではないという風に思っている。この現状を広く知ってもらいたいし、改めるきっかけにしてもらいたい」と提訴に込めた思いを語った。

さらに、不正発覚後に合格通知を受け取った時の心境を尋ねられ、「喉から手が出るほど欲しかった合格通知だったけれど、実際には不正で落とされていたと知り、正直(合格を知っても)あまり嬉しくなかった」と明かした。

「(性別や年齢など)属性ではなく、個人個人の違いの方がはるかに大きい」と強調し、「私たち一個人を見て、医師になる適性があるか、きっちり判断してほしい。公平な入試をしてもらいたい。今後は女性や多浪生がフェアな入試できちんと評価され、医師になる道が閉ざされないよう対策を求めていきたい」と訴えた。

会見に同席した河合弘之弁護士は「入試における女性差別、年齢差別について多くの元受験生から問い合わせを受けたが、実際には正面に立って言い出せない、戦えない方ばかりだった。他の大学で勉強中だったり、他の職業に就いていて、表立って自分で戦えないという人ばかりだった」と説明し、原告の女性以外にも多数の声なき声が存在することを強調した。

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