近江商人の『三方よし』の考え方をベースにすると良い。日本になじむ「SDGs」とは何か

これからの地方創生は「SDGs」を中心に据えよう- 第2回未来まちづくりフォーラム

2月19日・20日にパシフィコ横浜で開催されたサステナブル・ブランド国際会議2020。

2日目の20日は、「第2回未来まちづくりフォーラム」が開催された。

>>>1日目のレポートはこちらから。

自治体の首長や識者など持続可能なまちづくりを目指すメンバーが集い、「新たな地方創生モデル」について語り合った。

日本的な「SDGs」とは?

まずキーノート・トークでは、「未来まちづくりフォーラム」実行委員会の笹谷 秀光実行委員長より「日本創生SDGs経営」をテーマに話が繰り広げられた。

「未来まちづくりフォーラム」実行委員会 実行委員長 笹谷 秀光氏
「未来まちづくりフォーラム」実行委員会 実行委員長 笹谷 秀光氏
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笹谷さんが注目するのは、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」。

地方創生においては、日本各地で行われている取り組みをSDGsの17ターゲットにあてはめてみると、意外にもすでにSDGsを達成しているケースがあるという。

例えば岐阜県飛騨高山の「飛騨の匠の技・こころ」という取り組みは、目標4、9、11、15、17を達成している。また富山県富山市の「コンパクトシティ」も目標11に到達しているともいえる。

そして、日本のビジネスパーソンが、SDGsについて考える時は、近江商人の『三方よし』の考え方をベースにすると考えやすいそうだ。

笹谷さんはこう言う。

「『三方よし』の「自分よし、相手よし、世間よし」という考え方に「子孫の繁栄も大切にしよう」という考え方を加えれば、SDGsが完成します。大事なことは、SDGs の取り組みを行ったら、積極的にPRすること。つまり「発信型三方よし」への変革が重要です」

企業、市民、行政が連携してSDGsの課題を解決し、市民のくらしを変える

スペシャル・シンポジウム 「SDGs未来都市と関係者協創の最前線 -関係者連携による「協創」で日本一/オンリーワンを目指すには-」では、国内でも先駆けてSDGsに取り組んできた5人が、最前線の取り組みについて語った。

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まず、2018年「SDGs未来都市」にいち早く選定された山口県宇部市の久保田后子市長は、住民にいちばん近い「基礎自治体」として、企業、市民、行政が連携してSDGsに取り組んできたと胸を張る。

山口県宇部市 久保田后子市長
山口県宇部市 久保田后子市長
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例えば、参加者が300人を超える日本最大規模の子ども食堂『みんにゃ食堂』は地元企業が食材を提供し、地域のお寺などがその開催場所となっている。そこに、子どものみならず大人や高齢者など地域の人たちが広く集う。

「市役所の職員も、自分の部署がSDGsターゲットの何番を担当するのかはっきり言えるようになり、SDGsを行政の共通言語にできるようになったことが、浸透につながっています」(久保田氏)

SDGs宣言で地方創生を牽引する滋賀銀行 頭取の高橋祥二郎氏さんも熱く語った。

滋賀銀行は、2018年に滋賀県が立ち上げた『滋賀SDGs×イノベーションハブ』で、ビジネス支援やコンサルティングソリューションを提供。これまで数々の企業のSDGs宣言をサポートしてきた。

また、地方銀行9行による広域連携組織「TSUBASAアライアンス」にも加盟。滋賀銀行の加盟をきっかけに残る8行もすべてSDGs宣言を行ったという。

「私たちは『サステナビリティデザインカンパニー』というコンセプトを掲げ、持続可能な社会をデザインする企業であろうという姿勢を示しています。自社のみならず、地域の持続的な成長やビジネス創出に貢献していきたいですね」(高橋氏)

本業を基点に世の中の働き方改革に様々な提案を行うオカムラの薄 良子氏は、自社で取り組む働き方改革のコンセプトとして「WiL-BE」を掲げてきたと話す。

「社員一人ひとりがWork in Lifeを自らデザインし、自身が思い描くLifeを実現できる会社へとドライブしていこう、という考え方を示した言葉です。『働く場をつくる』ことが事業ドメインの一つとなっていて、自社で取り組む働き方改革の失敗・成功が、ダイレクトに本業のビジネス・サービス開発へと繋がっています」(薄氏)

社内にWiL-BE推進委員会を設け、社長自らリーダーとして経営課題としてこの社会貢献に取り組んでいるのだという。

大手町・丸の内・有楽町(大丸有地域)に根ざして、コミュニティの場を提供している「エコッツェリア協会」の田口 真司氏は、「地域に横たわる課題を常に掘り下げていくことが重要だ」と話す。

企業はどうしてもソリューションに走りがちだ

「企業はどうしてもソリューションに走りがちで、そもそもどんな課題を解決するはずだったのか忘れてしまいやすい。なんのためにSDGsをはじめたのかに常に立ち返るべきだと思います」

SDGsで得られた成果や喜びを積極的に多くの人に分け合って、世界や次世代へ向けて発信するSDGsに取り組んだ方がよいと田口氏は話した。

SDGsを共通言語として課題解決に取り組むPwCコンサルティングの野口 功一氏は、コンサルタントの観点から、現在の「地方創生におけるSDGs」が抱える課題について話した。

「地方創生におけるSDGsでは、なかなか成果が出ない、成果がわかりにくいという話をよく聞きます。その解決のためには、①SDGsに取り組むメリット・インセンティブを明確にすること ②本質的な課題の設定 ③市民を巻き込んで意識を変える という3つのポイントが重要。適切かつ本質的な課題設定を行い、参加した市民の日常生活が劇的に変わるという手応えがあれば、地方創生のSDGsはうまくいくはずです」(野口氏)

「未来まちづくりフォーラム」実行委員会 実行委員長 笹谷 秀光氏
「未来まちづくりフォーラム」実行委員会 実行委員長 笹谷 秀光氏
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最後に、ファシリテーターの笹谷氏は「様々な関係者や世界でSDGsに取り組む方々とコラボして、どんどんSDGsコミュニティを広げ外に発信して欲しい」と締めくくった。

愛知県の「SDGs未来都市計画」が描くこれからの地方都市

スペシャル・トークには、2019年7月に「SDGs未来都市」の一つに選定された愛知県の大村秀章知事が登場。「SDGs未来都市あいちの取組について」をテーマに、地方創生におけるビジネスのあり方について語った。

大村秀章 愛知県知事
大村秀章 愛知県知事
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愛知県は人口約755万人、東京に次いで外国人住民数の多い多様性に富んだ自治体だ。日本のほぼ中央部に位置し、大都市圏と豊かな自然の両方を抱え、利便性の高い交通ネットワークを携えている。

県内では名古屋市、豊田市、豊橋市が「SDGs未来都市」に選定され、全国2位の選定数を誇る。そんな愛知県では「SDGs未来都市計画」を策定した。それは2027年に東京-名古屋間の開通を目指すリニア中央新幹線がもたらす経済的インパクトを最大限生かしながら、経済・社会・環境面でSDGsの考え方に則った大都市を目指すというものだ。

「経済面では、自動車産業をはじめとする産業の強みを生かして、世界をリードする日本随一のイノベーション拠点になることを目指します。また、社会面では経済活動を支えるすべての人、すなわち高齢者や障害者、女性などが活躍できる仕組みを整えたいと奔走しているところです。そして環境面でも日本のフロントランナーにならなければならないと考えています」(大村氏)

例えば経済面では水素ステーションへの補助金助成制度や、産学官連携による自動車運転技術の研究・実証実験などに取り組む。

社会面では多様性のある自治体を目指して、「あいち・ウーマノミクス推進事業」や「あいち外国人材適正受入れ・共生推進協議会」などを実施。環境面では、2022年に長久手市の「愛・地球博記念公園」に、緑あふれる「ジブリパーク」が開業予定だ。

大村秀章 愛知県知事
大村秀章 愛知県知事
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大村知事は最後に、こう力を込めた。「経済・ダイバーシティ・環境と3つそろってこそ愛知県の地方創生は成し遂げられる」。

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