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2019年07月17日 08時08分 JST | 更新 2019年07月17日 08時08分 JST

周りはみんな結婚しているのに……。僕の視界の隅には、いつも「GAME OVER」の文字が点滅していた。

数年間にわたる婚活で感覚が麻痺。世界にとって自分が不必要な存在じゃないかと疑っていた。

Kenji Ando
視界に浮かぶ「GAME OVER」のイメージ画像

1年ほど前のことだ。道を歩いていても、仕事をしていても、視界のどこかに「GAME OVER」の文字がちらつくようになった。実際にはそんなものは見えないけど、何となく脳裏にそんな感覚があった

テレビゲームで遊んでいるうち残機がゼロに。とっくにゲームは終わっているのに、コントローラーを手から放すことができず、テレビの前でボーっとしている。そんな感覚だった。

子供のころ、大人になったら自動的に結婚しているものと思っていた。そうして、気が付くと30代に突入。せめて40歳までには…と焦っているうちに40代になった。

高校の同級生たちは、結婚して子供がいるのに。職場の同年代の同僚の多くは結婚しているのに……。結婚してない自分には何か欠陥があるんじゃないか。世界人類にとって、自分は不要な存在なのでは……。

そんな思いが日常にまとわりついていた。ベッドで寝ていると時折、「このまま年老いて一人で死ぬのではないか」と怖くなった。

 

■転職を期に「結婚」への漠然としたイメージが浮かんだ

「結婚したい」という思いが強くなってきたのは、2012年ごろからだった。27歳で新聞記者を辞めてから、フリーのノンフィクションライターとして6年間、活動を続けてきた。

単行本の売上げが伸び悩んで、34歳で再就職した。ライブドアやドワンゴでは、アルバイトや契約社員としてニュースサイトの編集をしていたが、2013年4月に「ハフィントンポスト日本版」の立ち上げスタッフとして久しぶりに正社員になった。

その後まもなく親族からお見合いの話がいくつかあった。親族からしたら「正社員になったことだし、そろそろ…」という思いがあったのだろう。しかし最初は実感が沸かず、まだ書きたい本もあった。「すぐに結婚したい」という考えではなかった。

だが、その頃からふんわりとではあったが、結婚というのを前向きに考えるようになった。36歳だった僕は、「結婚」に漠然としたゴールのようなイメージを持ったまま、数年も経てば簡単に結婚できるだろうと思っていた。もちろん現実はそう甘くなかった。

 

■婚活疲れで感覚が麻痺

 約7年間の婚活を通して、トータルで会った人数は、全く覚えていない。結婚相談所、婚活パーティー、マッチングアプリ、婚活SNS、友人知人の紹介など、ありとあらゆる手段を使って女性に出会った。軽い形での交際をすることもあったが、長続きすることは、ほとんどなかった。

2018年6月ごろに「この人は…」という出会いがあった。僕は最初のデートで「結婚を前提にお付き合いしましょう」と告白するほど、舞い上がってしまった。OKが出たはずだったが、なぜか次回以降のデートがキャンセルされる日々が続いた。先方からほどなく「どうしても無理です」とお断りをされた。その詳細は省くけど、ショックだったのは確かだ。

視界の隅に点滅する「GAME OVER」の文字は、ますます大きくなっていた。気が付けば42歳。自分が5歳だったころの父親と同じ年齢になっていた。

ほぼ週末を婚活に費やして、多くの人に会っているうちに困ったことが起きた。

どういう人と結婚すればいいのか、価値判断ができなくなってしまったのだ。人に会いすぎたために、誰が自分にとって良くて、誰が自分にとって良くないのか分からなくなった。まるで麻酔を打ったかのように心の感覚が麻痺してしまっていた。

 

■もう少しだけ婚活を続けることに

もう疲れた…。もう婚活を辞めたい…。

今まで「趣味が合った方が良い」とか「話しやすい方がいい」とか「俺の話を聞いてくれ」とか、結婚相手に求めるハードルを無意識に上げていたのかもしれない。

もし、直感的にピンと来る出会いがあったなら、あれもこれもと欲張らずに、直感を信じて決めてしまおう。

もし、いい人が見つからないなら、趣味でやっている電子音楽を極めるなり、単行本をバリバリ書くなど別の人生もあるかもしれない。43歳の誕生日まで頑張って、もしダメだったらもう諦めようと思った。

「GAME OVER」の文字は相変わらずチラついていたが、もう少しだけ婚活を続けることにした。

 

■落ちたスプーン。思いがけない言葉

そんな中で、2018年11月ごろ「こんな人と結婚できたら幸せだろうな」と思う人と対面する瞬間があった。でも、多分ダメだろうと思った。これまでのパターンでは、僕が「こんな人がいい」と直感した人に限って、相手から断られることが多かったからだ。

その予想は裏切られて、何度かデートを重ねることになった。年が明けた1月4日、明治神宮に初詣に2人で行った後、東京・渋谷のポルトガル料理店でプロポーズした。

Kenji Ando
東京・渋谷のポルトガル料理店。この後、スプーンを落とした。

よほど緊張していたのだろう。「け、結婚を前提に……」とまで、しゃべったところで、フォークやスプーンを床に落とした。ガシャーン!と、店中に乾いた音が響いた。

完全に失敗した。せっかくのチャンスを無駄にしてしまった。もう何の希望もない。そう思いつめそうになったところ、予想外の言葉がテーブルの向かい側から聞こえた。「こちらこそよろしくお願いします」。

43歳の誕生日を迎えた2カ月後、2019年6月に入籍。視界の隅に見えていた「GAME OVER」の文字は、いつの間にか消えていた。

  

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