日本のものづくりを応援したい。元銀行員が選ぶ、地域の魅力と作り手の思いを込めたギフトサービス。

「日本人がメイド・イン・ジャパンの品物に触れる機会がどんどん減っているのです。それがメイド・イン・ジャパンをさらに衰退させてしまうことになります」
A-port

ものづくりの国・日本。その高い技術とクオリティーは、世界でも定評がある。しかし、その技術が海外製を中心に低価格の製品に押され、深刻な危機にあることも事実だ。

そんな衰退の危機にある「メイド・イン・ジャパン」を守ろうと、地域と協力してギフトとして届けるプロジェクト「【Special Local Gift】消えゆく『made in Japan』を守る、新しいギフトサービス」が、A−portで進行中だ。クラウドファンディングのスタート初日で目標金額30万円を達成した後も勢いは留まらず、1カ月で140万円を超える支援が集まっている。

日本人の手に届かない「メイド・イン・ジャパン」のジレンマ

プロジェクトを起案したのは、通販業のGAIKEN代表・浜井啓介さんだ。浜井さんは大手都市銀行の銀行マンから転身し、同社を起業。メイド・イン・ジャパンにこだわり、日本のものづくりの想いとすばらしさを世に広めたいと奮闘中だ。

浜井さんが、日本のものづくりの現場を「なんとかしなくては」と思うようになったのは、銀行員時代の経験にさかのぼる。
「法人営業として、多くの中小企業とお付き合いをしてきました。その技術は優秀でも、業績に結びつかず、みなさん非常に大変な思いをしていました。とてもすばらしい商品を生み出しているにもかかわらず、倒産してしまう企業も少なくありません。作り手として技術への自信やプライドがあっても、それを世の中にうまく発信できていないことも、歯がゆく思いました」(浜井さん)

グローバル化と低コスト化が進む中、日本の繁栄を支えてきた中小企業の工場は激減。浜井さんが家族のように親しくしていた企業も、ある日突然、倒産してしまったという。

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「こんなにクオリティーの高いものを生み出しているのに、その技術が埋もれてしまうのはもったいない。ましてや、会社そのものがなくなる状況をなんとかできないか」(浜井さん)という強い思いに揺り動かされたという。

銀行員という安定した道を捨て、日本のものづくりを救おうと、行動を開始。日本人として「メイド・イン・ジャパン」への誇りも感じていた。

「日本製の品質のよさは、みなさん理解されていると思います。しかし、それだけに値段も高くなってしまう。必然的に、自分たちの身の回りは安価な海外製であふれてしまっています。

日本製の商品は特別な贈答用などにニーズが限定され、日本人がメイド・イン・ジャパンの品物に触れる機会がどんどん減っているのです。消費者の手に届かないから、作り手の想いも伝わらない。それがメイド・イン・ジャパンをさらに衰退させてしまうことになります」(浜井さん)

キーワードは「ものづくり×地域活性化×心を贈るギフト」

起業して最初に扱った商品は、以前から企画をあたためていた日本製のメンズのインナーだった。浜井さんの狙い通り、高品質なクオリティーが評判を呼び、好調な売れ行きを示した。さらなる商品の展開を検討したときに浮かんだのが、「地域とコラボして、その土地のメイド・イン・ジャパンをギフトとして届ける」というアイデアだ。

きっかけは、浜井さんの妻が新潟県出身だったこと。妻の実家を訪れたときに、銀製品の町・燕三条の存在を知り、ヒントを得た。
それまでも、全国300カ所もの中小企業を回ってきた浜井さん。燕三条でも、ものづくりにこだわる企業や農家を尋ね歩き、「一緒にメイド・イン・ジャパンを消費者に届けませんか」と熱い気持ちを伝えた。

そんな浜井さんの熱意に賛同した企業や生産農家の協力を得て完成したのが、今回のクラウドファンディングの「Special Local Gift」だ。

「単にその地域の特産品を箱に詰めるのではなく、“大切な人に真心を贈るギフト”というコンセプトにこだわりました」と浜井さん。

その背景には、自身が小さいときから面倒を見てくれた大切な祖母の存在がある。浜井さんは、銀行員として関西に転勤した際、東京で浜井さんを心配する祖母宛に、折りに触れて地元の特産品を送り続けた。大事な孫からの贈り物に喜ぶ祖母の様子に、送る方も送られる方も笑顔になれることを実感したという。

そこにメイド・イン・ジャパンの想いをのせられたら、もっとすばらしいギフトになるはずだ──。

祖母と浜井さん
祖母と浜井さん
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こだわりの最高級品を詰め合わせて、手軽なギフトボックスに

燕三条の「Special Local Gift」に詰め込む商品は5つ。特別なギフトボックスということで仕入れ価格を抑え、包装を簡易にすることで、5000円という手頃な値段を可能にした。

手触りや口当たりがなめらかな「Saks Super700」シリーズ「Zeus(ゼウス)」のスプーン。通常は箱入りでセット販売される最高級品だが、1本だけ使ってみることでそのよさを知ることができる。熱伝導と保冷性に優れた「ニュースペシャルマグ」の銅製マグカップは、いつものビールをよりおいしくしてくれる。

一緒に詰め合わせるものには、地域の特産品も含まれる。新潟地方だけで栽培される高級いちご「越後姫」の手作りジャム、新潟特産である幻の洋ナシ「ル・レクチェ」のジュース、そして伝統の老舗の味・マルヨネの「車麩」。

「どれも私が実際に作り手の方のところに足を運んで、信頼関係を築いて選んだ品物ばかり。100円ショップのスプーンは、2、3工程で完成しますが、“Zeus(ゼウス)”のスプーンは職人さんが何十回も削って、なめらかに仕上げるんです。黙々とスプーンを削り続けるその姿を見ているだけで、心にぐっと訴えかけるものがあります。その想いを、なんとしても全国のみなさんに届けたい」(浜井さん)。

ギフトボックスには、作り手の想いと地域の魅力をオリジナルでまとめたしおりを同封。作り手からの直筆のメッセージも掲載し、消費者とのつながりを深めていく。

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日本のものづくりを応援したい。その気持ちが大きな支援に

クラウドファンディングをスタートして、驚くほどすぐに多くの支援が集まった。その理由について浜井さんは、「“ものづくり”や“メイド・イン・ジャパン”というキーワードに、多くの人が心を動かされたのだと思います。日本のものづくりを応援したい、その技術を守りたいと思ってくれている人がそれだけたくさんいるということ。多くの共感を得られたことが、次への自信にもつながりました」と、笑顔を見せる。

第一弾の燕三条に続き、第二弾、第三弾の「メイド・イン・ジャパンのものづくり」を発信していきたいと、浜井さん。被災地支援なども候補に入れながら、全国各地の地域活性化に協力していくつもりだ。

《【Special Local Gift】消えゆく「made in Japan」を守る、新しいギフトサービス》のクラウドファンディングは4月15日まで支援を受け付けている。プロジェクトの詳細はこちら
(工藤千秋)

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