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「義理チョコ」やめよう。「送別会」ももうやめよう。日本人が調和を見直すとき。

日本の年中行事は、企業活動と密接に結びついているものが多い。和を大切にする日本は大好きだ。しかし、私は時折、和を保つための年間行事の多さに疲れてしまうことがある。
義理チョコのイメージ
義理チョコのイメージ

街はバレンタイン一色。かわいらしいパッケージや芸術作品とも言うべきデザインのチョコレートが特設会場にずらりと並べられている。

その華やかさに心躍る一方でよく耳にするのが「義理チョコ習慣」に関する女性たちの会話である。

聞いた話によれば、日本の企業のなかには、バレンタインデーが近づくと女性スタッフが事前に打ち合わせをし、不公平にならないように男性社員全員分のチョコレートを用意して、当日配る会社があるのだという。これには正直驚いた。

そもそもバレンタインはアメリカ人にとっては、妻や恋人をディナーに誘ったり、花を贈ったりするもので、同僚や上司にチョコレートを贈る「イベント」ではないからだ。

当然、「義理チョコ」は存在しない。これは日本人にとって当たり前のことなのかと友人知人に尋ねたら、いわゆる“風物詩”だという。仕事をする上でのコミュニケーションを円滑にするための方法の一つと捉えているとか。

毎月、何かを理由に集い結束を高めている

日本で仕事を始めて12年経つが、考えてみると正月から始まって大晦日まで、日本には多くの「年中行事」がある。

年が明けた1月は、仕事始め直後から新年会、賀詞交換会に赴き、あるいは関係各社に直接行って、しっかりと顔を合わせて新年の挨拶をするという人も少なくないと思う。関係性によっては、「日中の簡単なご挨拶では不十分だから一席設けたい」と丁寧にもてなしたり、もてなされたりが続く。

強いパートナーシップを築くために、メールや電話で済ますのではなく、酒を酌み交わしながら直接会って挨拶するという日本人の丁寧さは、私がとても好きなところでもあるのだが、12月に忘年会を開いて「お疲れ様でした」「ありがとうございました!」と感謝を伝え合い、労いあって、溜まりに溜まった話をし尽くした直後の1月にもう一度というのは何ともいえない気分になる。

もちろん、忘年会、新年会の大切さは分かっているつもりである。しかし会合に膨大な時間を費やし、仕事の時間を奪われたり、夜遅くまで続く宴会で体調を壊すことに一考の余地はないのかと思案してしまうのだ。いっそのこと、新年会か忘年会のどちらかにして6月くらいに「半年会」を開いたらどうかと提案したくなる。

同調する力はどれくらい必要か

こうした日本の年中行事は、企業活動と密接に結びついているものが多いように感じている。和を大切にする日本は大好きだ。しかし、私は時折、和を保つための年間行事の多さに疲れてしまうことがある。日本文化が好きだといいながら、こうしたことを書くのはためらわれたが、最近、こういう集まりや行事に対してストレスを感じているという日本人もいると聞く。「日本人の中にも人づきあいをストレスに感じている人もいるのだ」と新鮮な思いがした。

例えば、前述のバレンタイン。これには職場の雰囲気を忖度して男性社員全員にチョコレートを用意するという行為は会社や周囲の人たちと同調する、あるいは共感することを求められているのかもしれない。しかし、本当にそれは必要とされているのか。同調せずとも、仕事を円滑に進める方法はあるはずだ。グローバル化が進み、日本以外の習慣が流入してるのだから、こうした慣習の醸す同調ムードに違和感を持つ人がいてもおかしくない。ダイバーシティが市民権を得た今、これまでの「人づきあい」の方法はその価値が薄れているのではないだろうか。

働き方改革が進み、歓送迎会も変化している

私がどうしても理解できない行事がもう一つある。それは「送別会」だ。私は送別会の意義を巡って、日本人スタッフと意見が衝突することがしばしばある。明日からはライバルになる相手を喜んで送り出さなければならないのかその意味が分からなかったからだ。

日本人スタッフは、新しい人生の門出を祝ってというが、それでも納得のいかないことであった。ある友人は「あまりよい思い出のない企業だから辞めるのであって、門出を祝われるのは、正直、気まずい…」という。

これには私も大いに同感だ。定年退職ならば、第二の人生の餞と思うことはできる。でも、中途退職でなぜ…?

私は経営者なので、辞められてしまった人というのは、いわばフラれたしまった相手のような感覚を覚える。離婚した相手に食事をご馳走するか?! 気まずいだけではないか。

送られる側にしても同様、「不満を持っているから辞めるのだ」とその場では公言できず、円満退社を取り繕う人もいるだろう。双方にとってこんなにも居心地の悪い送別会が、この日本でいくつ開かれているのだろう。

人生100年時代に突入し、働き方も変化している昨今。日本も選に漏れず働き方改革が迫られている。「日本人らしい人づきあい」にも改革の波が押し寄せているのかもしれない。

(編集:榊原すずみ @_suzumi_s