はじめてのSDGS
2020年01月06日 10時26分 JST

なぜ地球温暖化が不平等を拡大するのか

あなたが行動しないことで、紛争や干ばつが起きるかもしれない。

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2020年が来ようとしている。私たちは、地球温暖化や不平等の拡大、ナショナリズムの高まりという複雑に絡み合った、非常に難解なトリレンマに直面している。官民が連携して気候危機に対応するために綿密に計画したネットゼロ戦略に取り組みながら、同時に、不平等に直面する人たちに経済的機会をつくることにも取り組む必要がある。(翻訳=梅原洋陽)


地球温暖化は不平等を拡大する

貧しい国はより貧しくなり、その影響を恵まれない人ほど大きく受ける。例えば、マラウイの農家はスイスの農家に比べると圧倒的に干ばつに対して脆弱だ。シリアにおける内戦の主な原因は2006年から2011年の地球温暖化によって悪化した干ばつにある。その結果、多数の農家は農耕地を放棄し、すでに人で溢れている都市に移り住まざるをえなくなった。

同様に、善意からの気候変動対策が不平等を助長してしまう可能性もある。フランスの黄色いベスト運動によると、燃料税の値上げは社会の恵まれない境遇にある人達に明らかに負担となっていると伝えている。汚染を減らす目的の税金は運転手への負担になっているかもしれない。
不平等の拡大によって、数百万人がより安全な場所への移住を余儀なくされる

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地球温暖化とそれによる不平等への影響は有害な組み合わせだ。海面上昇の影響で、沿岸にすむ数百、数千万人が近いうちに移住を迫られるだろう。深刻な干ばつはアフリカの広大な農地を不毛にし、農家の人達は別の方法で生計を立てる必要が出てくる。苦しんだ末に移住してくる多数の気候変動難民に対して、地元の人達は2015年の欧州難民危機の時のように強く保守的に対応するだろう。

環境問題に関連する要因に、ナショナリズムで対応していくのは間違った路線だろう。負のサイクルに陥る可能性がある。国家主義の政党が力を握ったとしても、気候変動対策に力を入れる可能性は少ないだろう。むしろ、実際に米国で起きているように、トランプ政権下で、ナショナリズムの強化と石油燃料への揺るぎない支持は環境問題や社会的不平等への予算分配をより遠ざけることになっている。根本の問題に対処するのではなく、環境問題によって引き起こされている影響や不安に対して軍隊の配備という策をとっている。


負のサイクルは止められる

温室効果ガスの排出削減プロジェクトやクリーン・テクノロジーへの投資は社会において恵まれない人達へチャンスを届けることも可能であり、不平等と戦うことができる。利益を得られるだけではなく、温室効果ガスを減らしたり、なくしたりすることも可能だ。

発展途上国は低炭素経済を実現するための投資に回す資源がない。しかし、今この投資が行われなければ、人々は炭素に頼ったインフラでの世界を生きることになり、パリ協定の目標を達成する可能性を失うことになる。必要な支援がなければ、集権的な石炭発電所をつくることが分散的な再生可能エネルギーの送電インフラより重視されるだろう。もしクリーンな輸送機関やビルがつくられなければ、汚染された巨大都市が溢れることになる。

現実的な話をすると、アフリカの6億人以上の人たちは、電力がない生活をしている。これは、36のアフリカの国の中で、5人に2人しか、信頼できるエネルギーを手に入れられていないということだ。多くの地域では、電力なしの状態で生きるか、費用が高い(汚染も引き起こす)ディーゼルの発電機を使うかの2択しかない。ソーラーやミニグリッドは回収期間が短く、ディーゼルの燃焼を防げるためにCO2の減少に直結する。これは不平等にも直接的に影響を与えられる。ランプをつけて、本を読んだり、勉強したり、電話を充電したり、ラジオを聞くことができるようになる。

今年は、多くの人が初めて、触発されて気候正義のためにアクションを起こした。2019年を通して、グレタ・トゥーンベリに影響を受けたであろう地球上の若い人達が道路に出て、環境問題に対する行動を求めた。Fridays for the Futureという抗議が求めるものは、2030年までに社会全体がネットゼロを目指す目標を立てることだ。

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ネットゼロとはいったい何か

企業や政府はこの目標を達成するために、どのような方法を取るのだろうか。答えは企業や政府の置かれている状況によりけりではあるが、説得力のある意欲的で意味のあるネットゼロ戦略は2つの事柄の達成を目指すべきだろう。

1つ目は、直接的、間接的な温室効果ガスを減らすこと。そして2つ目は、自分たちのシステムの境界にある温室効果ガスもゼロに減らすことだ。可能であれば、恵まれないコミュニティに経済的チャンスを提供し、SDGsを支援するプロジェクトやテクノロジーに投資をして、排出量をゼロ以下にし、クライメイト・ポジティブを目指すべきである。地球温暖化が不平等を拡げている。実行に移す戦略自体が、問題をさらに悪化させないように気をつけるべきだ。

 

世界は岐路に立っている

ネットゼロを目指す上で、気候変動を緩和し、環境問題が一番影響を与える人たちを支援する必要がある。孫の代にどのような未来を残すかを決める力が私たちにはある。安定した気候、貧困の撲滅、そしてオープンで寛容な社会を目指すには、大きな目標が必要だ。何より、変化を生む行動が必要だ。今すぐに。

 

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