孤独だった野良猫、子猫に囲まれて天国に旅立つ 「グランパ」の愛称で多くの人が虜に

「どんなに傷だらけで汚れた猫でも愛を受けるに値します」
Facebook / Grandpa Mason and his kittens

子猫の世話をする姿が愛され、“グランパ”の愛称で親しまれてきた猫のメイソンが9月19日、静かに息を引き取った。

3年前まで野良猫だったメイソン。カナダの動物保護団体「タイニー・キトゥン」に救出された時は、傷だらけで重い腎臓病も抱え、余命が長くないと言われていた。

初めは人間に激しい敵対心を見せていたメイソンが、子猫たちとの出会いを通して変わっていく姿は、多くの人を虜にしていた。

■初めは、人間に敵対的だった

タイニー・キトゥンは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州のフォートラングリーにあるNPO団体だ。

2016年に保護された時、メイソンは足や尻尾を激しく怪我しており、歯の治療も必要だった。「たくさんの傷が、生き残るために戦ってこなければいけなかったことを物語っている」とタイニー・キトゥンのウェブサイトには書かれている。

メイソンは人間になついていなかった。そのため、タイニー・キトゥンは傷の治療と去勢手術をした後、メイソンを元の場所に戻して餌を与え続ける予定だった。

しかし血液検査の結果、メイソンが末期の腎臓病であることがわかる。このまま外に戻せば、メイソンはきっと冬を乗り切ることができないだろうと考えたタイニー・キトゥンの創設者シェリー・ロッシュさんは、メイソンを自宅に連れて帰ったと、動物ニュースサイト「The Dodo」に語る。

短い余生を居心地のいい場所で過ごして欲しいという思いで引き取ったが、慣れない場所に怯えたメイソンは激しい怒りをみせた。

「野生の本能が、人間は敵だと告げたのでしょう」とロッシュさんは綴る。

■子猫とグランパ・メイソンの幸せな日々

メイソンがやって来てからしばらくして、ロッシュさんは数匹の子猫を自宅に連れて帰った。子猫たちは将来里親に出す予定で、新しい環境に慣れるための訓練だった。

その頃には家の暮らしに慣れつつあったが、まだ人間には心を許していなかったメイソン。小さい子猫たちを威嚇してはいけないと心配したロッシュさんは、すぐ横で見守った。

ところがロッシュさんの心配をよそに、メイソンは自分の体によじ登って甘える子猫たちを興味深そうに眺め、温かく迎え入れた。

お気に入りのベッドで子猫たちと寄り添って寝るメイソンを見て、心が溶けたとロッシュさんは綴る

「メイソンが必要としていたのは、他の生き物との触れ合いでした。メイソンはそれを人間の私ではなく、同じ種類の猫たちに求めたのです」

その後、ロッシュさんは定期的に子猫たちを自宅に連れ帰った。

子猫たちと一緒に走りまわったり、遊び疲れた子猫たちを抱き寄せて寝たり、面倒見の良いメイソンには、グランパというニックネームがつけられた。

末期だと言われた腎臓も、安定した状態を保っていた。

しかし2019年9月になりメイソンの体調が悪化する。そして9月18日、血液検査の結果メイソンの腎臓が機能しなくなったことがわかった。

メイソンが苦しまずにすむように願ったロッシェさんたちは、安楽死を選ぶ。

最後の夜、メイソンは大好きなベッドで、いつものように子猫たちと一緒に過ごした。

メイソンは子猫たちに囲まれ、自宅で「穏やかに、痛みのない最後」を迎えたという。

ロッシェさんたちはFacebookで「1069日の間、私たちはこの“見込みがない”と言われた野良猫を愛さずはいられませんでした」と、メイソンへの感謝と愛を綴る。

「私はその1日、1日全てに感謝したい。たとえ今、私たちの心が悲しみで粉々になっているとしても」

「そして私たちの決断が、メイソンに心の平安と穏やかな日没をもたらすものであったことを願ってやみません。メイソンは自宅で、そして心安らかな状態で、痛みを感じずに愛する子猫たちに囲まれて旅立ちました」

ロッシェさんたちは、メイソンのストーリーを通して、どんなに傷だらけで汚れた猫でも愛を受けるに値すると訴える

そして、メイソンを知って心を動かされた人たちに、大変な環境で生きなければいけない野良猫を減らすために、地元の動物保護団体のTNR活動(野良猫を捕獲し、避妊手術や去勢手術して元の場所に戻すこと)に協力してほしいと伝える。

「傷だらけで強そうに見える野良猫たちの内側には愛情にあふれています。彼らが優しさを受けるに値する存在だということを多くの人に伝えてください」

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