あのサービスも実は学生発! 東大で「開発甲子園」開催中、新サービス誕生か

大学とは何をするところだろうか。学問をするところ? 就職に必要な知識を身につけるところ? それとも遊ぶところ?どれも正しいのだろうが、「大学にもっと別の価値もあるはず」と考える人たちが、東京大の本郷キャンパスでこんなイベントを開いている。

大学とは何をするところだろうか。

学問をするところ? 就職に必要な知識を身につけるところ? それとも遊ぶところ?

どれも正しいのだろうが、「大学にもっと別の価値もあるはず」と考える人たちが、東京大の本郷キャンパスでこんなイベントを開いている。

工学部2号館では、顔をつきあわせて「どのAPIたたけばデータ取れるかな?」とサービス設計について話し込む学生たちや、ノートパソコンを開いて「開発言語はどうしようか?」「パイソンでいきますか」などと話しながらキーボードを打ち込む学生たちが集まっていた。

理工系の学生なら、ちょっとしたソフトウェアを書くのは日常茶飯事だが、基本的には自分たちの研究のためのもの。だが彼らが開発しようとしているのはインターネット上の新しいウェブサービスやアプリなど、生活を便利にすることや問題解決を前提にしたソフトだ。

イベント事務局を務める株式会社ギブリーの山根淳平氏がいう。

「世界を席巻するグーグルやフェイスブックも、元々は米国の学生が始めたサービスなんです」

そういえばそうなのだ。

グーグルはスタンフォード大の大学院生2人が、同大のサーバー上で情報を整理するために作った検索エンジンだったし、フェイスブックもハーバード大の寮から生まれた、学生同士のコミュニケーションサイトだった。それが今や世界を代表するネットサービスに成長、莫大な収益を上げている。

同じことが日本でも起きないだろうか。そのための基盤づくりとして行われているのがこのイベント。

「JPHACKS」

といい、学生たちに開発を競わせることで、第二、第三のグーグル、フェイスブックを日本から生みだそうという狙いだ。

山根氏が続ける。

「学生による開発甲子園を目指しています。

学生たちが開発に集中できる環境を整え、学問では学べない実践的な技術を身に着けさせたい。

企業へ就職するのがゴールではなく、自分が世の中に何を生み出すかを考えるきっかけにしてほしい」

(右が山根氏)

同様のイベントは、企業が最近よく開いている。

エンジニアやデザイナーらがチームに分かれ新しいサービスやアプリ、ソフトを開発し、アイデアやサービスの出来を競う「ハッカソン」と呼ばれるものだ。

朝日新聞社メディアラボでも「ニュースの新しい読み方、楽しみ方」というテーマで10月に開いた。

だがハッカソン発祥の米国では近年、マサチューセッツ工科大の「HACKMIT」や、イエール大の「YHACK」など、大学によるハッカソンの開催も相次いでおり、その仕組みを東大が輸入したというわけだ。

開催を主導する東大大学院情報理工学系研究科の木戸冬子特任助教がいう。

「日本では情報やプログラミングについての社会的な認識がまだまだ高まっておらず、グーグルやアマゾン、マイクロソフトに匹敵する世界的な情報系企業が育っていません。

昔に比べると、ソフトウェア開発をベースにして起業する学生が増えていますが、ハッカソンのような刺激的な場を学生に提供することで、社会にイノベーションを起こす若い起業家が育ってほしい」

今回のイベントには、国内外から110人の大学生、大学院生、専門学校生らが参加している。

参加者はどんなことを考えているのだろうか。

北海道の公立はこだて未来大4年、兵藤允彦さん(23)は今回、同じ大学の4人で参加し、新しいブラウザを開発中だ。

そのブラウザでは、あらゆるサイト上で、同時に訪れた人が感想や思いなどをチャットのように話し合える仕組みが実現するという。

「チャットルームや、LINEやフェイスブックなど、限定的なコミュニケーションが流行していますが、もっとオープンでリアルタイムのコミュニケーションの場を作りたい」

駒澤大4年、種井覚道さん(22)ら4人は、同じIT企業への就職内定者のチーム。

「タイムスリップ」をテーマに、今そこにある空間をそのまま情報として記録し、記録した空間を実際に体感できるサービスを創ろうとアイデアを練っている。

「入社してからも、会社として、個人として、様々なサービスを自ら生み出せるエンジニアになりたい」

パソコンやスマートフォンを使い慣れた「デジタルネイティブ」の学生たちは、果たしてどんな夢を形にするのだろうか。

12月13、14日に開発を行い、20日にはプレゼンテーションと審査、結果発表がある。

20日は学生限定で一般観覧者を募集中。詳しくはJPHACKSホームページhttps://jphacks.com/で。

グランプリを獲得したチームには、開発研究や調査資金として最大50万円が補助される。

果たしてどんな成果が出てくるか。改めて報告したい。

(朝日新聞社メディアラボ)

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