ニューノーマル時代の「幸せな働き方」とは?テレワークはワーキングマザーの生き方をどう変える。

Business Insider Japan統括編集長の浜田敬子さんに聞きました

新型コロナウイルス感染拡大に伴う「テレワーク」という働き方。そのメリット・デメリットや家族間での家事負担の課題など、これからの在宅時間拡大を見据えた重要な要素「仕事と家事の両立」に注⽬しました。

今後、ますます「働き方」は大きな変化を求められます。これからの時代に女性がイキイキと働き、幸せに生きていくためのヒントとして、働く女性に関する執筆や提言をされてきた浜田敬子さんにアドバイスをいただきました。

浜田敬子さん/ 1989年に朝日新聞社入社。99年からAERA編集部。その後、AERA初の女性編集長に就任。その後、朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして、「働く×子育てのこれからを考える」プロジェクト「WORKO!」や「働き方を考える」シンポジウムなどをプロデュース。2017年より世界17カ国に展開するオンライン経済メディアBusiness Insiderの日本版統括編集長。
浜田敬子さん/ 1989年に朝日新聞社入社。99年からAERA編集部。その後、AERA初の女性編集長に就任。その後、朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして、「働く×子育てのこれからを考える」プロジェクト「WORKO!」や「働き方を考える」シンポジウムなどをプロデュース。2017年より世界17カ国に展開するオンライン経済メディアBusiness Insiderの日本版統括編集長。
HAPPY WOMAN

── 日本において「テレワーク」は、今後も定着・拡大していくと思われますか?

緊急事態宣言発令後、なかなかテレワークが進まなかった企業でも実施が増えましたが、解除された途端、100%出社に逆戻りしてしまった企業もあるのが現状です。企業間で非常にバラつきがあって、進んでいる企業では今後も半恒久的にテレワークを維持していこうという方向性も見られます。

部下を管理・監視する企業や、テレワーク環境が整っていない中小企業などで定着していないのですが、このタイミングで環境を整えることが重要だと考えます。もちろん全てをテレワークにできなくても、「出社と在宅のハイブリッド」にするなど、臨機応変に対応していく必要があります。

── テレワークの圧倒的なメリットは「通勤時間」。しかし逆に仕事量が増えてしまっている状況も懸念されています。

自分できちんと時間管理をしないと、ついつい仕事をしている時間が長くなってしまうと思います。時間管理、健康管理などの「自己管理能力」がより重要になりますね。

しかし、それを差し引いてもメリットの方が大きいと感じました。私自身、子供が帰ってきた時に家にいられることは今までなかったし、家族全員で食事をすることも、昼間に洗濯物を取り込んで、夕方スーパーに行ったことも初体験でした(笑)。

HAPPY WOMAN

── テレワーク下での課題として「家事・育児」があります。浜田さんのご家庭ではどのように対応されていますか?

在宅勤務で夫もずっと家にいるのに、普段より妻の家事・育児負担が増えた、というデータもありました。うちは、たまたま夫の方が料理もマメにやるし、そもそもこの期間、私の方が圧倒的に忙しかった。仕事で必死になっている姿を見て、自発的に食事は夫が作ってくれるようになりました。子どもは「パパ、今日の夕飯何?」と聞くのが日課になりましたから。

なぜここまで夫が家事ができるようになったのか、といえば、私が育児休暇から復職するタイミングで、夫が3カ月の育児休暇を取得したのが大きかったですね。中途半端に手伝うのではなく、家事・育児を一旦100%夫に任せてみた。最初は不安や不満もあったのですが、勇気を持って任せてみると確実に変化がありました。

また、ワーキングマザーは、会社や上司には様々な交渉をするのだけれども、家庭で夫とはなかなか交渉できない人が多いです。我が家もどちらが家事や育児をやるのかと散々揉めてきたので、これ以上家庭内の雰囲気を悪くしたくない、というのもわかります。ですが、私は、後輩達には「大袈裟ではなく、あなたが夫と交渉して夫を変えることが、社会を変えるんだよ」と言っています。

例えば、週に1回でもいいから、全ての家事・育児を「夫がする日」などと決められるといいですよね。その日に妻は、自分のために時間を使う。目一杯時間を気にせず過ごせる日があると、気持ちがとても楽になります。

── 女性自身が、やるべきことをやれていないと罪悪感を感じ「疲れ」が増加しているデータもあります。

女性たちはとても頑張っていて、もうこれ以上頑張る必要はないと思います。家族で協力しあい、定期的に掃除を「家事代行」に頼んでも良いのです。自分で自分を追い詰めることをせず、もっと自分が楽になる方法を考えたほうが良いと思います。

HAPPY WOMAN

もともと男性が認識している家事と女性が認識している家事には大きな開きがあります。料理、洗濯などざっくりした分類ではなく、朝窓を開ける/布団を干す/醤油が切れたら補充する/保育園の連絡帳を記入する、など全ての細かい家事まで全てを可視化して見せることで、夫に家庭をマネージすることの大変さを理解してもらうのも効果的です。

そして可視化したリストを共有し、夫との「交渉」に臨んでみてください。「文句」ではなく「交渉」です。あくまでも交渉なので冷静に(笑)。

── 女性の社会進出が進むことで少子化が加速しているというジレンマもあります。

この議論は、世界で見れば間違っていますよね。実際、フランスのように出生率が増えている国を見ると、女性が社会で活躍することと出生率の相関性はありません。女性の社会的進出をサポートする保育園のような制度が整い、家事・育児の分担が進むことが必要なのだと思います。

日本や韓国のように少子化が進行している国の特徴は、性別による役割が固定化している、ということ。女性たちは今や仕事だけでなく、家事も育児も、と負担が増大している。こうした負担をどう解消していくのか、男性の意識改革だけでなく公的な支援の充実も求められると思います。

── 頑張っている女性たちへメッセージを

何事も真面目すぎるので「人生に少し手抜きをしたほうがいい」と伝えたいです。何でも完璧にやろうと思わない、楽をすること・自分を甘やかすことも大切です。

女性が働いている理由も、生活のためだけではなく、働くことが面白いし達成感もあるからですよね。家事や育児とは違う達成感があるから大変なことがあっても毎日頑張れるわけです。やはりその本質を夫や家族に理解してもらっていると、気持ち的にとても健康な状態を保てると思います。

(2020年7月30日のHAPPY WOMAN ONLINE掲載記事「【インタビュー】浜田 敬子氏|Business Insider Japan 統括編集長/元アエラ編集長」を再編集して転載しました。)

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