新井浩文被告、検察側の「ダメは『ダメ』ですよね?」の質問に「仰る通りです。ただ、言い方は違います」 改めて無罪主張

新井浩文被告の裁判。女性側から「ダメです」などの言葉はあったものの、「抵抗がなかった」ため、「(当時は)同意があると誤信していた」と主張した。
新井浩文被告
新井浩文被告
Koki Nagahama via Getty Images

派遣型マッサージ店の女性従業員に性的暴行を加えたとして、強制性交罪で起訴された新井浩文被告の第二回公判が9月26日、東京地裁で開かれた。

この日は被告人質問が行われた。新井被告は、女性従業員に対して「申し訳なく思っています」と謝罪したが、頭を手で押さえつけるなどの暴行・脅迫行為は「一切やっておりません」と否定し、改めて無罪を主張。女性側から「ダメです」などの言葉はあったものの、「抵抗がなかった」ため、「(当時は)同意があると誤信していた」と述べた。

一方で、行為の後に金銭を渡そうとした理由について聞かれると、「同意があると思っていたが、ちょっと不安もあった」と語った。

裁判で新井被告は何を語ったのか。詳報する。

(※記事中には具体的な被害の描写が含まれています。フラッシュバックなどの心配がある方は注意してご覧ください。)

新井被告は、2018年7月、マッサージのため自宅マンションに呼んだ女性に性的暴行を加えたとして、2月21日に起訴された。

新井被告は起訴内容について、性交の事実は認めているが、暴行脅迫はなかったなどとして無罪を主張している。

事件では、①強制性交罪の要件に含まれる「暴行脅迫」があったかどうか、また、②性交の合意があったと被告人が誤信していたかどうか(故意の有無)、この2つが主な争点となっている。

「心底嫌だったんだなと思い、本当に申し訳なく思っています」

黒いスーツに黒のネクタイ姿で法廷に現れた新井被告。弁護人による被告人質問では、まず初公判での女性従業員の証人尋問を聞いた感想について質問があり、新井被告は女性への謝罪を口にした。

「事件後、初めてAさん(女性)の言葉を直接聞いて、改めて、心底嫌だったんだなと思い、本当に申し訳ないと思っています」

新井被告によると、事件前の6月30日は夕方から友人と食事をし、一人で行きつけのバーに寄った後、翌7月1日の深夜1時前後に帰宅。「仕事で体が疲れていて、マッサージをやってほしい」と思い、女性が勤める派遣型マッサージ店に電話したという。

女性を指名した理由については、「(女性のプロフィールに)得意なマッサージがアロママッサージと書いてあったからです」と回答した。弁護人によると、新井被告はアロママッサージを好んで利用していたという。

「暴行脅迫」はあったか? 「抵抗はなかった」と主張

女性が自宅に着くと、新井被告は紙パンツに着替え、寝室のベッドでうつ伏せになり施術を受けた。

施術を受ける前に、「リラックスできるのと、寝てしまうかもしれない」という思いから部屋の明かりを消していいか女性に尋ね、了承されたという。はじめはベッドボードの照明をつけた状態でマッサージを受けていたが、次第に眠気を感じ、女性の了承を得た上でベッドボードの照明を消したという。

その後、30〜40分ほど眠りにつき、仰向けに体勢を変えたあと、足のマッサージがはじまった。新井被告は「徐々に性的な気分になり」、女性にもっと上の方をマッサージするよう伝えたという。

女性は「ダメです。そういう店じゃない」と伝えたが、新井被告は「実際(股間にギリギリ当たるか当たらないかまで)マッサージはしてくれました」と主張。その後、女性の右手を掴んで自身の陰茎に押し付けたという。

2日の初公判で、女性はこの時「そういうことをするのであれば帰ります」「やめてください」などと言ったり、新井被告の腕を引っ張ったりして抵抗したと主張していた。

女性側の抵抗について、新井被告は「ちょっとした力で引かれた気はしましたが、通常の状態に戻りました」と述べた。

その後、女性の衣服を脱がし、体を触るなどの行為に及んだという。女性側はそうした行為を受ける間、「触らないで」と訴え続け、膝を閉じたり腕を押したりして抵抗したと主張している。

一方で新井被告は、「(嫌がる素ぶりや言葉などは)特になかったです」と主張。「大丈夫というか、受け入れられているのかと思いました」と話し、女性側の主張を否定した。

また、女性の頭を両手で押さえつけて陰茎に押し付けようとした行為については、「やっていません」と全面否定。性行為に及ぶ時に、女性が陰部を抑えて抵抗したとする証言についても、「していなかったです」と否定した。

同意書は「正直全然確認していません」

検察側の被告人質問では、暴行脅迫の有無や、新井被告の「同意」に関する認識について質問が集中した。

女性が働いていた店舗は、性的サービスを提供しておらず、初めて利用する客は「性的サービスを要求しない」などの禁止事項が書かれた同意書にサインする決まりになっているという。

新井被告もこの同意書にサインしていた。店へのイメージを聞かれた新井被告は、「健全な、グレーゾーンではあるけれどマッサージ店だと思っています」と回答。

同意書にサインしたことについては、「書きましたが、正直全然確認していません」と答えたが、同意書に「性的サービスがない」との内容が書かれていたことは認識していたという。

新井被告の証言によると、これまでも別のマッサージ店舗などで、セラピストと性行為に及ぶこともあったという。「禁止行為とわかっているのになぜやってしまうのか」と検察側に問われると、新井被告は「すみません、わかりません」と答えた。

検察側の被告人質問 「ダメは『ダメ』ですよね」に「仰る通りです」

検察側の被告人質問では、「同意があったと思っていた」と主張する新井被告が女性の抵抗をどう認識していたかどうか、という点に質問が集中した。

検察側の被告人質問(一部)

ーー(検察官)1回「ダメ」と言われて、それ以上やらない、とは思わなかったんですか?

それは繰り返しになりますが、その時は口調とか、ものすごく柔らかくて、言葉は「ダメ」とは言っていても、そのようには思えませんでした。

ーー「ダメ」は「ダメ」ですよね

仰る通りです。ただ、言い方は全然違います。

ーー女性は「ダメ」と言っているのに、なぜ股間を触らせようとしたんですか

同じ答えになってしまいますが、口調、トーンがダメという風に聞こえなかったので。

ーー女性は手を引っ張っている。それは「ダメ」の意思表示じゃないんですか?

そうは思いませんでした。

ーー他のマッサージの人とも性行為をしたことがある。他の人は手を引っ込めようとしたことはないんですか?

しなかったと思います。

ーー女性と以前の人とは、対応が違うのではと思いませんでしたか?

そこまできつい引っ張り方じゃなかったです。

新井被告は、性行為が終わった後、女性に金銭を渡している。女性は受け取りを拒否したが、バッグのポケットにお札を押し込んだという。

検察側は「性行為に合意しているなら、お金はいらないですよね」と指摘し、女性側に金銭を渡した理由について質問。新井被告は、「合意はあると思っていたが、ちょっと不安はありました。それ以上は何もないです」と回答した。

検察側の質問が終わった後は、約15分間の休廷を挟み、被害者参加制度により被害者側弁護人の質問が行われた。

被害者側弁護人は、新井被告が無罪を主張しているにも関わらず、2000万円の示談を申し出ている理由などを質問。示談の申し出について、新井被告は「同意がなかったことに対する謝罪」のためだとして、以下のように説明した。

「Aさんと私には食い違う点があります。ですが、いま現在同意がないと思っていて、認めていて、それに対しての謝罪です。Aさんは前回の証言の時に『お金じゃない』と言っていて、どうしたらいいかわからない気持ちです」

次回公判は、10月23日に開かれ、結審する。判決は12月2日を予定している。

注目記事