一橋大アウティング事件から4年。LGBTQ当事者を支援する「プライドフォーラム」が同大でスタート

「二度と同じような悲しい出来事が一橋大学で起こらないようにしたい」。その思いが形になりました。

LGBTQ当事者の学生や教職員が、安心・安全に過ごすためのプログラム「一橋プライドフォーラム」が、一橋大学でスタートする。プログラムを立ち上げた任意団体「プライドブリッジ」が、8月8日に発表した。

「プライドフォーラム」は、一橋大学ジェンダー社会科学研究センター(CGraSS)とプライドブリッジが、共同事業として立ち上げた。

具体的な活動内容としては、大学内にLGBTQ当事者や支援者(アライ)が立ち寄ったり、ジェンダーやセクシュアリティに関する情報を得たりすることができるリソースセンターを設けるほか、性の多様性を学ぶための寄付講座を開始する。

(左から)プライドブリッジ副会長の川口遼さん、会長の松中権さん、副会長の神谷悠一さん
(左から)プライドブリッジ副会長の川口遼さん、会長の松中権さん、副会長の神谷悠一さん
satoko yasuda / Huffpost Japan

■一橋大アウティング事件

「プライドブリッジ」立ち上げのきっかけになったのは、2015年に起きた「一橋大アウティング事件」だ。

この事件では、一橋大学の法科大学院生の男性が、同性の同級生に恋愛感情を抱いていることを伝えた後、その同級生によって男性が同性愛者であることが他の同級生たちにアウティング(暴露)された。

アウティングにショックを受けた男性は、暴露した同級生と顔を合わせるとパニック発作が起こるなど心身に不調をきたすようになる。

男性は心療内科を受診し、一連の出来事や症状を大学のハラスメント相談室や保健センターに伝えていたが、2015年8月に校舎から転落し、亡くなった。

プライドブリッジ会長で同大学卒業生の松中権さんは「『彼は私』でした。一橋大アウティング事件で、電通を辞めて向き合ったひとつの感情」というハフポスト日本版への寄稿で、この事件に大きなショックを受けたと綴った。

現在はゲイを公表し、LGBTQの人たちをサポートするNPO法人「グッド・エイジング・エールズ」などの代表を務める松中さんだが、大学在学中にはカミングアウトしていなかった。

「私が大学生の時は、カミングアウトは選択肢にも入っていませんでした。学校の中に相談できる場所があったらよかったと思いました」と、松中さんは語った。

松中権さん
松中権さん
satoko yasuda / Huffpost Japan

■ 安心・安全な場所をつくる

「二度と同じような悲しい出来事が一橋大学で起こらないようにしたい」そう思った松中さんは、一橋大学のキャンパスをLGBTQの学生や教職員にとって安心・安全な場所に変えるために、プライドブリッジを立ち上げることを決意。

同大学の在校生・卒業生に呼びかけて、賛同者を募った。現在までに129名が賛同しており、今回の立ち上げにつながった。

プライドフォーラムの最初のアクションとして9月に学内に作られるリソースセンターでは、ジェンダーやセクシュアリティに関する資料を準備し、集まってきた人が資料を読んだり交流したりするほか、小規模イベントなども開催する予定だ。

松中さんは一橋大学ではカミングアウトしていなかったが、大学在学中に留学したメルボルン大学で、LGBTQの当事者が集まるための部屋を見つけ、そこでカミングアウトすることができた。その時に「こういう場所があったらいいな」と思ったという。

また、同じく9月にスタートする「ジェンダー・セクシュアリティとライフデザイン」という全13回の寄付講座では、LGBTQの当事者や支援者などをゲストスピーカーとして呼び、企業やNPOなどによるジェンダーやセクシュアリティの先進的な取り組みなどを学ぶ。

それ以外にも、LGBTQフレンドリーな教育環境整備のための実態調査や、学生と教職員の定期的な意見交換会などの開催も予定しているという。

ハフポスト日本版への寄稿の中で、LGBTQの当事者にとって「安心」した場所をつくることと同時に、何かがあった時に頼れる、何かを事前に食い止められる「安全」な場所があることも大切だと訴えた松中さん。

9月からスタートするプライドフォーラムで、「LGBTQの学生や、働く人がいて当たり前だということが共有できる流れができてほしい」と語った。

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