2019年05月10日 11時57分 JST | 更新 2019年05月10日 11時57分 JST

令和はジェンダーギャップのない時代に。男女ともに本音で生きられる社会について考える

カギは、心のブラックボックスを開くこと。【#本音で生きよう 連載第4回】

令和の時代が幕を開けた。バイアスのない世の中を実現するため、昭和、平成を生きてきた私たちができることは何か。#本音で生きよう 連載最終回は、男女の本音をぶつけ合う座談会を開催。仕事、家庭、社会において変わり続けるジェンダー観について語り合った。

KAZUHIRO SEKINE
(左から)ノンフィクションライターの石戸諭さん、フラワーアーティストの前田有紀さん、小説家の白岩玄さん

女性の起業、男性の育児参加

――平成時代の31年間で就労環境は大きく変化しましたが、なかでも女性の働き方は大きく変化したのでは?

石戸
男女ともに平等な雇用環境が整備され、女性の採用が増えると同時に、働きやすさを考える対話が始まりましたよね。今では、男性の育休取得なども語られるくらいに。前田さんがアナウンサーを辞めて起業されたのは、いつ?

前田
私は6年前に辞めたんですけど、当時はそこそこなインパクトがあったようで、社内外で「なんで辞めるの!?」と言われました。今では転職や起業などのジョブチェンジは当たり前で、生き方も働き方も多様化していますよね。

――起業されたのが、妊娠・出産のタイミングだったとか?

KAZUHIRO SEKINE
前田有紀(まえだ・ゆき)1981年、神奈川県生まれ。元テレビ朝日アナウンサー。2013年に退社し、ガーデニングの勉強のためロンドンへ留学。現在はフラワーアーティストとして活躍中。

前田
そうなんです。妊娠してすぐに個人事業主の届けを出しにいきました。まわりは専業主婦が多かったので「子育ては大変なんだから起業なんて無理」とか「次のタイミングがある」とか言われたんですけど、自分の中では「チャンスは後にも先にも今しかないんだ」という気持ちで、起業と出産を同時進行しました。夫の支えも大きかったです。子供がいて働くには、夫の家事や育児参加は不可欠だと実感しています。

――白岩さんも著書『たてがみを捨てたライオンたち』で「二人の子供なんだから二人で参加するのが当たり前」と言及されています。

白岩
はい。でもそう言えるのは、作家という“家でできる仕事”をしているのが大きいと思います。同世代の一般企業で働いている友人に聞くと、どうしても時間的にお迎えは難しいとか、いろいろと事情があるのはわかるので…。
でも実際、仕事ありきでの育児参加という男性がほとんどで、仕事を長期で休んだりしてまで家事や育児をやって妻を支えようという人は、あまりいませんよね。

男性に「仕事以外の選択肢」はあるのか?

――小説の文中にあった「家事や育児が問題なくできたとしても、仕事が人並み以下だったら、男としては二流のような気持ちになってしまう」という表現が衝撃でした。

白岩
やっぱり男性同士って、プライベートで集まっても仕事の話になりがちなんですよ。そこでもし自分が仕事していなかったら、発言しにくいというか。仕事なくて大丈夫? なんて心配されたり、いたわられたり。仲間外れにされるような空気感があるんじゃないでしょうか。

石戸
女性が出産と同時に辞めるのは不思議じゃないと見られるけれど、男性が育児休暇をとったり、結婚や出産を機に退職して専業主夫になるというと、まだかなり驚かれる。

白岩
例えば自分の母親が「それでいいのか」と言ってきたり、友達からも、仕事を長く休んでまで家事や育児をするのは「男としてどうなの」って言われたり。ちょっと奇異の目で見られる。だから逆にいうと、男性は「仕事以外の道を選びにくい」という苦労はありますよね。

――今回の #本音で生きよう キャンペーンでも、男性側から「男性は働いて社会進出するしか選択肢がない」とか「男性も本音で生きられない」というコメントが届いています。

石戸
仕事の量を減らしてもっと家庭にコミットしたいと思っている男性もたくさんいるんでしょうね。

KAZUHIRO SEKINE
石戸諭(いしど・さとる)1984年、東京都生まれ。毎日新聞やBuzzFeed Japanの記者をへて、現在はフリーランスのノンフィクションライターとして新聞・雑誌・Webメディアを中心に活躍中。著作に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)。

男性の心の中は「ブラックボックス」

白岩
僕、最近考えていることがあって。男性の育児参加とか、家事をやる・やらないみたいな話題って、よくあるじゃないですか。でもそれはあくまでも表面的な話でしかなくて、本当は根っこの部分で「男性が女性に心を開いていない」状況が、問題の核心にある気がするんですよね。
というのは、もし本当に心を開いていたら、困っているパートナーをなんとかして助けようという気持ちが、もっと湧いてくると思うんです。女性への“思いやり”が出てこないのは、男性が大人になっていく過程で、女性に対して心を開きにくくなる構造があるんじゃないか。もちろん人にもよるんでしょうけど、男性が弱さを見せられなかったり、共有するのが下手だったりするのも、その辺りが関係しているのかなと。

石戸
男性も、規範というか、「男らしさ」みたいなものに縛られて生きている。そういうのも心が開けなくなる要因のひとつかも。

白岩
そうですね。

石戸
男らしさ女らしさみたいな話って、価値観にダイレクトに影響しますよね。「これが男らしさだ」と押し付けられ、要求されるものに対して「応えなきゃいけない」となる。それらが生活とか価値観とか、根本的な部分にすごく影響を与えている気がする。

白岩
男の子が大人の男性になるまでの過程に、受け入れていかなきゃいけないことや、要求される振る舞いがたくさんありますよね。例えば思春期のエロ話なんかがそうで、そこに乗っかれるか、入っていけないかで、その後の生き方に何かしらの影響がある。そうしたある種の通過儀礼の中で、男性の心や思考回路がどう変わっていくのかは、一般的にはまだあまり知られていない感じがする。男性の心の中もブラックボックスなんですよね。もうちょっと解明されて社会で受容されていけば、今よりももう少し男性が男らしさから解放されていくんじゃないでしょうか。

――前田さんは息子さんがいらっしゃいますよね?

前田
はい、今年2歳です。なのでこういう話、すごく興味深いです。
私は息子には「男の子なんだから」とは絶対に言わないようにしています。男とか女とかじゃなくて“その人らしさ”だけが大事だと思うし、子どもであっても、肩書きで判断してしまうと苦しくなるだろうから。もし弟や妹ができても「お兄ちゃんなんだから」というのも言いたくない。とにかく「この子らしさとは何か」だけを見ていきたいなって思います。
ただ家庭ではそうやって気をつけていても、生きていくうえでは社会環境にもさらされるじゃないですか。

白岩
学校など外の世界でも、いろんな価値観の家庭の子供たちが集まって、そこでの集団意識みたいなものが作用することもありますからね。自分もそうでしたけど、決して家庭だけの影響で大きくなったわけではないから、親のかける言葉ですべてが良くなるとは言い切れない。家庭内でどんなに「男らしさや女らしさを気にしなくていいんだよ」って教えたとしても、そういう親を反面教師として育ってしまうかもしれない。

KAZUHIRO SEKINE
白岩玄(しらいわ・げん)1983年、京都府生まれ。2004年、『野ブタ。をプロデュース』で第41回文藝賞を受賞。タイプの違う男性3人の本音と弱音に迫る『たてがみを捨てたライオンたち』が話題。

石戸
ある種の自分の規範みたいなものが家庭で作られたとしても、一歩外に出たら敵だらけになることもあるわけですし。

前田
私2年前に鎌倉に引っ越したのですが、鎌倉という社会とか、街の人たちから学ぶことがたくさんあるんです。個人事業主とかお店をやっている人が多いので、男女分け隔てなく、やりたいことに向かっている人を応援するという気風があるんですよ。みんなが自分軸で生きていて、街全体が、既存のバイアスから解放されているような雰囲気があるんです。環境によってはそういうところもありますよね。

――必ずしも外の世界から悪影響を与えられるわけでもない。

白岩
そういう環境が、ある種の逃げ場というか、サードプレイスみたいになるといいですよね。全員が家庭や学校など決められたコミュニティーに居場所を作らなければいけないということもないですから。

それでもやっぱり「男もつらい」は全面に押し出せない

前田
今回の座談会で「男もつらいんだよ」という声がひしひしと聞こえてきて、考えさせられました。

白岩
でも、それを全面に押し出すのはダメだと思うんですよ。

石戸
そのとおり。

KAZUHIRO SEKINE
3人とも80年代前半生まれの同世代。

白岩

女性の方がずっと抑圧されて大変な状況にいるのは事実で、それを差し置いて「男だって、つらい!」と声高にいうのはおかしい。ただ、互いのつらさに耳を傾けずに、男対女の戦いで傷つけ合って溝が深まっていってしまうのは、やっぱり悲しいじゃないですか。男だけ/女だけの問題としてではなく、たまたま違う性をもって生まれた同じ人間の問題として捉えて、ともに乗り越えていけたらいいんですけど。

石戸

僕は最終的に、誰もが「虚勢を張って生きてく必要はない」っていうところに尽きるかなと思いますね。

変に虚勢を張って、できないものをできると言う必要もないし、やらなきゃいけないって思う必要もないし、もう少しリラックスしていいというか、落ち着けるといいなと思う。

「諦めてもいいじゃん、明日でもいいじゃない」みたいにリラックスできると、ジェンダーのいさかいとか争いも減るんじゃないかな。

本音で生きるためには、準備も必要?

KAZUHIRO SEKINE

白岩
#本音で生きよう というテーマですけど、お二人は仕事を変えたりして、本音で生きるための選択をした経験があるわけですよね。同じように違和感があっても環境を変えられない人とか、「本音で生きられない」っていう人もたくさんいると思うんですけど、お二人はどうして貫けたんでしょう?

石戸
僕は会社員を辞めてフリーランスになったんですが、自分で主導権を握って自分で決められる利点が圧倒的によかったのはもちろん、その分のリスクを背負うのも気持ちいいと思えたんですよ。

前田
そうですね、自分が自分の舵を握っているっていう感覚はすごく大事。
私はアナウンサー時代、自分はどういう人間か、何が好きなのか、5年くらいかけて考えました。いろいろチャレンジして、長続きしたのがお花だった。それを仕事にしました。

白岩
なるほど。本音で生きるためには、それ相応の準備も必要ということですよね。

前田
ちょっとずつでいいと思うんです。週末だけ何か趣味をやったり、その人らしい何かを見つけて少しずつ視野を変えてみるとか。
周囲の応援もすごく力強いですよね。アナウンサーを辞めた時、いろんな人が応援してくれたんです。「自分にはできない。けど応援するよ」って。そういう声に励まされたので、私もチャレンジする人の背中を押してあげたい。

石戸
本音で生きる人が活躍できて、それを前向きに受容できる環境になるといいですよね。そのためには、自分自身も選択肢を多く作って、自分の本音に向き合う体制を作っておくのは必要かも。趣味でもなんでもいい。意外とそういうコミュニティーで思わぬ誘いがあって新しい何かが開花するかもしれないし。

白岩
本音で生きるなんて、昔の人が聞いたらびっくりするでしょうね(笑)。

前田
そういうのが当たり前の時代になるように、バトンを渡していかないとですね。近い将来には、こういう座談会すらなくなっているかも。「男らしさや女らしさから解放されたい!」ってわざわざ話し合う必要もない時代になるといいですよね。

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日本HPとハフィントンポストは共に、今年の3月8日の国際女性デーを契機に、「#本音で生きよう」のメッセージのもと、女性が自分らしく豊かに生きていくためのヒントを、識者や読者の方たちと一緒に考えていきます。

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