「本」は行動の起点になれるのか? 私がネットメディアと一緒に本をつくろうと思った理由をお話させてください。

ネットと書籍は、読者の時間を奪い合うものではなくて、補完し合うもの。
竹下隆一郎さん(左)と
竹下隆一郎さん(左)と
Tsuneaki Yahagi

本をきっかけに会話が始まる。

思いもかけなかった人と。

考えが違っていても一緒にいられると知る。

そして、静かに、しかし、確実に、変わっていく…。

自分の中の何かが。そして、私たちの社会が。

最初は軽い思いつき

最初は、ちょっとした思いつきだった。

ハフポストブックスが出せたら、いいかも。

ハフポストは、英語版のハフィントンポストしかなかった時代から、なんとなく親近感を持っていて、時々読んでいたし。

そんなとき、ハフポスト日本版で、弊社でデビュー作をお出しいただいている手塚マキさんの連載「裏読書論」が始まって、これはぜひに!と思った。と同時に、まるでテレパシーでつながっているみたいに、竹下編集長からFacebookのメッセージが届いた。書籍化のご提案だった。そこから、ディスカヴァーとハフポスト日本版のコラボプロジェクト、ハフポストブックスは、始まった。

ネットメディアで面白そうなコンテンツや書き手を見つけ書籍化を提案する、あるいは、書籍化が決まっているコンテンツを提供することは、これまでもごく普通に行ってきた。だから、最初はその延長のような感覚だった。NewsPicksと幻冬舎とのコラボへの対抗意識みたいなものも、あった(苦笑)。

でも、約一年、準備を進めていくなかで、これはちがうぞ! と思い始めた。いい意味で。

なんだ、ミッションと方法論、想像以上に似ていない?

そのひとつは、想像以上に、私たちが同じ志を持っていた、ということ。

ハフポスト日本版の記事は、英語版以上に、生活者目線。大きな事件であってもそれに関わる個人の想い・生活・人生にスポットを当てる。ごく普通の日常の中に潜在化している小さな違和感、疑問、課題をすくい上げる。

大上段に偉そうに、「意識高い系」の人びとが語るのではなく、ごく普通の一人の人間としての私たちが語る。行動する。その結果としての社会変革を狙っている。

まさに、わたしがディスカヴァーで行おうとしてきたことだ。行動の起点としての本。そして、個人が変わる。

それによって、社会が変わる。

収束と拡散思考のスパイラルを起こせる予感がする。

もうひとつのいい意味での想定外は、ネットメディアと書籍(紙であれ電子であれ)の違いと特性が明らかになるにつれ、それは、読者としての私たちの「時間」というリソースを奪い合うものではなくて、互いの質を相互に高め、補完し合うものであることが実感されてきたことだ。

人間の思考には、「収束」思考と「拡散」思考があるが、書籍はいわば「収束」、ネットメディアは「拡散」だ。独りで深く読書し、それをネットで発信する。すると、誰かがそれに応えてくる。共感もあれば、反論もある。書き手本人から反応があることもあるだろう。炎上することもあれば、ベストセラーになることもある。そして、「拡散」した言説を再び新たな本という形に「収束」させ深めていく。

最初は、その本に「ついて」会話しているつもりが、実はそうではないことに気づく。本は、きっかけに過ぎない。リアルな生活ではなかなか出会えないような人びととの会話のきっかけ、視界が広がるきっかけだ。

それはこれまでの、弊社のサイトやブッククラブなどのイベントでも行ってきたことではあったが、ハフポストというメジャーのネットメディアとは数も違えば、速度も違う。桁違いだ。何千倍ものスピードで、会話が広がるのだ。

さらに、書籍が中心となる場合、どうしてもそれが好きな人だけが集まる。意見の違う人と接することは少ない。それでは、肝心の壁は超えられない。自分の視点の壁。意見の違う人びととの壁。ネットメディアは、能動的に、自分の貴重なお金を払ってコンテンツを読むわけではない人の目にも触れることによって、これまで出会うこともなかった人同士の間にも、あるテーマに関する会話が生まれる可能性を持つ。

視点を変える 明日を変える

これぞまさに、ディスカヴァーの本でめざしていることではなかったか!

そう、「視点を変える 明日を変える」。

これまで、本の内容によって、読む人の「視点を変え、明日を変える」ことを目指してきたディスカヴァー。「ハフポストブックス」では、本は、その起点にすぎない。読む人びとがともに、互いに互いの「視点を変え、明日を変え」ていくことになるのだ。

なんか、ひさしぶりにいつもの「干場節」で書くつもりが、えらく固くなってしまった。これでは、わたしがきらいな、偉そうな意識高い系の文章じゃないか!

でもまあ、これだけ力入っているということで、最初だから、許してください!

せっかくなので、既に出ている本を読んだ感想を書いてみますね。

仕事のために、嫌いな人とでも我慢してつき合う、ということは、幸いなことに、私の人生にはなかった(相手はどうだか知らないが)。たまたまどうしても好きになれない人と遭遇した場合は、直ちにフェードアウトしてきたから。だって、人生短い、出会う人の数だって限られているのだから、やっぱり好きな人と時間を過ごしたい。それだって足りないくらいなんだから。でもビジネスのためには、それって甘い? と、内心劣等感を持っていたのだけれど、ああ、それでよかったのね、と安心。それと、竹下さん、こうしてディスカヴァーと組んでくれるのだから、私のこと、好きだったのね! ああ、よかった! 相思相愛じゃない!

同じく4月20日には『裏読書』も発売されました。

夏目漱石の「こころ」、なんでこれを小学生の息子に女性教師がすすめるのか分かりませんでした。手塚さんがバッサリ斬ってくれてスカっとしました。ほかにも12作の「名著」について、手塚さんが独自の読み方を教えてくれます。

《 竹下編集長がネットメディア側の視点からハフポストブックスに取り組む意義を書いた「『本なんて売れないよ』と何度も言われた。それでもネットメディアが書籍を作る理由。」はコチラ→ https://www.huffingtonpost.jp/entry/huffpost-books_jp_5cb7fc11e4b081fd1693105f

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