初のデジタル政党によってもたらされるのは脅威か希望か 〜イタリアで勝利を収める五つ星運動〜

五つ星運動の今後の運命は、熱狂的な支持者次第である。
ROME, ITALY - MARCH 01: Five Star Movement's founder Beppe Grillo attends the closing electoral rally of Five Star Movement at Piazza del Popolo on March 2, 2018 in Rome, Italy. The Italian General Election takes place on March 4th 2018. (Photo by Franco Origlia/Getty Images)
ROME, ITALY - MARCH 01: Five Star Movement's founder Beppe Grillo attends the closing electoral rally of Five Star Movement at Piazza del Popolo on March 2, 2018 in Rome, Italy. The Italian General Election takes place on March 4th 2018. (Photo by Franco Origlia/Getty Images)
Franco Origlia via Getty Images
(左)マルコ・モロシーニ教授、本稿の著者 (右)ベッペ・グリッロ、五つ星運動の創設者
(左)マルコ・モロシーニ教授、本稿の著者 (右)ベッペ・グリッロ、五つ星運動の創設者
(左)Maurizio Maltoni(右)Oliviero Toscani

世界初の「デジタル政党」である五つ星運動は先週の3月4日(日)イタリアで得票率で首位となった。5000万人中1100万人の投票者が五つ星運動に投票した。この記事の中でこの新規性を理解できる事実と見解について説明したいと思う。

そのためにはまず初めに、この素晴らしい政党のイデオロギーと活動―つまりデジタル政治主義―を理解しなくてはならない。後者はドナルド・トランプが行うようなコミュニケーションの手段としてインターネット活用するだけではなく、新党の創設や党の支配、そして権力を征服するための究極の「政治的技術」のようなインターネットの駆使を意味する。

イタリアの政治におけるこの発明がローマ字やオペラのように世界の便益のために広まるだろうか。もしくはマフィアやファシズムのような恐ろしいイタリアの発明として広まるのであろうか。五つ星運動は世界が無視できない影響力のあるデジタル技術である。実際、「デジタル政党」は原子爆弾のようになりうる。一度その原子爆弾が発明されると、その利用は急増すると思って間違いない。我々はこのイタリアの発明に恐怖感を抱くべきであろうか。「デジタル政党」がガンジーやマンデラのような人物の管理下にあるのかそれともトランプやプーチンのような人物の管理下にあるのか、想像してみてほしい。

私はこれに希望を持つ理由よりも懸念すべき理由が多いと思う。この記事では、私の意見を裏付けるための事実や見解について伝えていく。私の分析は独特の個人的な経験に基づくものである。1992年以降、私は、コメディアンであり五つ星運動の代表であるベッペ・グリッロの3000ページのゴーストライターとして彼にひらめきを与えた。

政治的デジタル主義の展望

政治的デジタル主義の信奉者によれば、プラスティックや金属、そしての10億人の脳で構成されているインターネットが、人類が最終的に政党もしくは信条なしにそれ自身を直接的に支配する。政治的デジタル主義の預言者によると、これを機に人類は、政治に対する無関心な状況から抜け出すこととなる。この展望とともに、五つ星運動の創案者であるジャンロベルト・カザレッジョがどのように世界を変えるかを説明するために2004年10月29日に私の元を訪ねた。そして彼は、私がベッペに彼を手助けするように説得することを頼んできた。こうしてカザレッジョによってできた五つ星運動が、3月4日の総選挙で勝利を収めた。これから社会はどうなるだろうか。あり得る世界を見るために、カザレッジョによって制作されたこの動画をご覧いただきたい。あなたが魅力もしくは恐れの感情を抱いたとしても、それはどちらであっても間違いではない。

完全デジタル政治

五つ星運動は文字通り「クラウドの中に存在する政党」である。住所もなく、電話番号も、総会もしくは議会もなく、あるのはデジタルの儀式だけだ。その大聖堂となるのは、ウェブポータルサイト「"Rousseau - Operating system of the 5-stars Movement」で、ここではメンバーらが法案や国民投票、企画の承諾、候補者の投票などを行う。

それにもかかわらず、五つ星運動の本部となるのは「ザ・ブログ」なのである。皆がそれはまるで人もしくは賢人かのように呼ぶのだ。ザ・ブログも政党も、設立者であるカサレッジョ・アソシエーティにより創設、運営されている。2016年、創設者の一人であるジャンロベルト・カザレッジョの死により、息子であるダビデ・カザレッジョが会社や政党を引き継ぐこととなった。しかし、ザ・ブログは決して個人、ましてやベッペ・グリッロの日記でもない。少なくともベッペ・グリッロの弁護士らが裁判でそう訴えた。今年の1月22日に至るまで、長年ザ・ブログは2つのアイデンティティーと役割を演じてきた。一方では、世界の将来について先見性のある立場の人物(例えばジョセフ・スティグリッツやムハマド・ユヌス)による記事を投稿してきた。もう一方では、ザ・ブログは、五つ星運動の運営者のプロパガンダを行い、敵、記者、裏切り者の評判を汚したり政党員を追い払ったり、そして何よりも募金を行うための広告マシーンとして機能してきた。こうした意味では、五つ星運動は決してボトムアップの民主主義運動というより、上意下達の「ブログ・ダウン」型の政党だ。

41歳のダビデ・カザレッジョが真のリーダーである。彼は父から五つ星運動の力の中核となる政治のソフトウエアと政治のビッグデータを引き継いだ。しかし正式な党首は、首相になることを目指している31歳のナポリの議員ルイジ・ディ・マリオである。デジタル化の進行の面で、イタリアはG7加盟国中で最も低い水準になっている。それでも五つ星運動の中で重要人物のほとんどがデジタルの専門家である。商業的、政治的な新しい富がデータだとすれば、金でなくデータに基づいた社会的階級制度がうまれようとしている。

デジタル投票

五つ星運動のプラットフォームに投票することは、信頼性に欠ける。このプラットフォームにおいては、「審判」と「選手」は同じ存在である。独立した運営者がいない。ボトムアップ型の意思決定を行う政治のソフトウエアシステムはデジタル国民の参加を増進するだろう。しかし、もし政治のソフトウエアが上位によって管理されるものであれば、デジタル住民の支配と操りが可能となる。政党内代表選というものは、一方的なプロパガンダを持った運営によって行われる偏見を抱いた国民投票である。支持者は国民投票を提案することができない。たった一度を除き、支持者は運営側の意思を全て受け入れている。スマートフォンによって数分で投票できるにもかかわらず、140,000人とされる支持者の4分の3以上が投票しないという。現行の政治階級に対して反対の意志を表すために今まで棄権をしてきた新しい政治階級にしては、これは極めて不思議な現象だ。

投票の行い方

一般的に、朝に突然届いたメールから投票が始まりその夜7時に終了する。こうして利用者に焦りを感じさせる方法はしばしばテレビショッピングの番組に利用される。この場合、特定のネットユーザー(若者、無職もしくは暇な時間が多い者)と特に男性を呼び込むことができる。2016年7月5日のルソーウェブポータルの待望のデビューは、有権者の本質を理解する上で、示唆に富む。国の重要課題に関する法案に対した129個の提言の中で、二番目に投票数が多かった提言は、売春宿の再開と売春の合法化に関する提言であった。

左翼と右翼のハイブリッド

月のように、五つ星運動には二つの顔がある。世間に知られた最近の顔は右翼である。少ない法と政策、減税、移民・難民、また政治家・政党・労働組合・生協の減少、国営放送の削減を求めている。調査によると、投票者の多数は男性と中小企業・小規模企業者だという。彼らは、五つ星運動が中道左派と同盟を組むよりも、むしろ極右(北部同盟、イタリアの同胞)と同盟を組んでもらうこと望み、そしてマクロンやメルケルよりもトランプやプーチンやルペンを好む。しかし、隠れているが最も歴史的な顔は、対照的に社会環境中心的だ。それが参考にしているのは、ドイツのシンクタンク、気候、環境、エネルギー分野で研究を行うヴッパタール研究所であり、そしてそのベストセラーとなっている『持続可能な未来』だ。五つ星運動の2,200人の選出された者の多くは、ヨーロッパの社会主義者、緑の党の考えを支持しており、また欧州議会の中でこうした政治家に最も投票を入れているのは、五つ星運動だ。

省エネ、省資源、より少ない労働

ベッペ・グリッロは2008年に「私には夢がある」と言った。『トリプル・レス〜なぜ私は投票しないのか〜』(Internazionale 4月11日)の中の記事で、彼は3つの戦略的本質を基盤にした社会を夢見ていることを明かした。まず初めに、省エネのために、スイス連邦工科大学とスイス政府によって考案された2000ワット社会(現在の一人当たりの年間消費エネルギーの6000ワットから2000ワットへ削減)の目標を採択した。次に、労働時間短縮であるが、これは、1930年ジョン・メイナード・ケインズによって、また1985年ドイツ経済界の黒幕オスヴァルト・フォン・ネル・ブロイニングの著書『人は働きすぎなのか?』において最初に提唱された平均労働時間を30時間に続いて、週20時間に直ちに削減するよう呼びかけているものである。最後の原則は、循環型経済の実現によって、一人あたりの資源消費量を40トンから20トンにまで削減することを目指す。循環型経済の先駆者は、すでに五つ星運動の行事においてスピーチを行っているスイスの建築家ウォルター・スタヘルである。それから10年経った現在でも、五つ星運動の政府プログラムはこうした原則以外に、他の社会環境的目標を持ち続けている。こうしたプロジェクトを進めていく際に、権威のある学者や思想家に積極的に発言の機会を与えている。例えば、国会議員の候補者、経済発展の影の大臣として選ばれたのは、『幸福の経済学:成長無き世界で成功する』や『GDP – Gross Domestic Problem』の書籍を発表してきている、経済学者のローレンツォ・フィオラモンティだ。もう一つの例としては、五つ星運動のダリオ・タンブラノである。彼は欧州議会におけるエネルギー政策に関して5番目に影響力のある人物である。また彼は、エコの先駆者ベルトラン・ピカールが、世界初の太陽光エネルギーを動力にした飛行機ソーラーインパルスでの世界1周飛行中に欧州議会議長と行ったライブ配信のビデオ会議のまとめ役を担った。

「悪者」は「良い物」に投票することがあるか

五つ星運動は魅力的な政治目標や意欲的な人々が不足しているわけではない。ただし、イタリアの変革を起こそうとするこの運動で欠けているのは、数多くの投票者の確保だ。実際、ある五つ星運動の政党員がかつて次のように私に伝えた。「北欧では成長を超えた、エコロジカルかつ連帯の社会的変革を目指す運動は魅力的だろう。しかしイタリアではそれは自殺行為となる。」と。実際、常識としてほとんどのイタリア人がわずかに左翼を支持しながらもわずかに後ろ向きだという。反対に、左翼を支持しながら前向きに進もうとするイタリア人は皆に失敗に終わる。これを回避するための唯一の政治的手段は他の誰かになりすまし、そして十分な援助を集めることができた際に、元々志していた自分になることだ。比較として、ドイツの緑の党は8年もの間、数人の大臣を置いていた。2011年以降、緑の党の州首相ヴィンフリート・クレッチュマンはドイツで最も裕福で技術的にも進歩しているバーデン・ヴュルテンベルク州の赤緑連立政権を率いてきた。しかしイタリアでは緑の党が新聞やマスコミによって取り上げられることがほとんどない。それ故、右翼の美辞麗句は選挙に勝利する唯一の方法になっているようだ。

デジタルの排他

あらゆる問題がある中で、最も心配すべきことは、デジタルの締め出しだ。政治のデジタル主義は国民参加を「全国民参加」に拡大すると美辞麗句を並べている。残念ながら、それは真実ではない。イタリアでは実際、全デジタル政治モデルはネットを利用しない国民を除外している。十分なお金や教養の不足あるいは年齢的な理由によって、ネットを利用しない国民はイタリアの成人人口のほぼ半分を占めている。仮に世界的にデジタル限定の政治活動が広まった場合、世界人口の3分の2以上を排除することになる。そのため五つ星運動は全ての国民を代表する政党ではなく、コンピューターを管理する方法を知っているため国も管理できると信じている多数のデジタル政党員で構成された「ユーザーの政党」である。実際、イタリアのインターネットに長けている人口の半分が手に入れた政治的な強みは、社会の格差を無くさないばかりか、悪化させるだけである。

デジタルの大流行

他の新しい技術と同じく、デジタル技術もリスクや被害を生んでいる。それらの利用と乱用は、今ようやく現れ始めている中毒や病気の原因となる。我々は皆影響を受けているのだが、その中でも他の人よりも影響に曝されている人々がいる。それは児童や未成年、デジタル政党員である。多くの五つ星運動のメンバーにとって、デジタル中毒は職業病である。私は五つ星運動の政党員と会う際、スマートフォンが彼らの手や脳の一部のようにさえ感じる。多くのメンバーの生活は実世界よりもサイバー空間の中で展開しているように見受けられる。

デジタル盲目

市場の原理によって拡大されつつあるデジタル社会によって、人間、精神、健康、社会、政治、環境の面で多くの被害が生まれていることに関する科学知見が、徐々に蓄積されている。しかし、五つ星運動はこれに関して理解していないように思う。さらにデジタル社会において多大な力を抱えている組織に対抗しようとしない。歴史上最大の寡占、GAF(Google、Amazon、Facebook)について、ある経済学者が「デジタルの飼い慣らされたタイタン(ギリシャ神話に登場する神)」でありBAADD (大きく、反競争的で、中毒性があり、民主主義を破壊させてしまう)だと、『エコノミスト』雑誌が予言している。ザ・ブログと五つ星運動の議員はデジタル・タイタンの負の側面に立ち向かおうとしない。さらに、インターネットの利用者の拡大、インターネットの民主化、または国民のレベルからインターネットおよびデジタル世界の統治などを図る五つ星運動の政治的課題も設けられていない。

デジタル王者=政治王者ではない

党の全ての事項をインターネット上で行うことは、内部の選挙にも影響を及ぼす。実際、内部の予備選挙に勝利するために、時には楽々と選出され下院議員になるには数十票(時には10票以下)で十分である。これらの票は親類や友達、click sellerから容易に集めることができる。ソーシャルメディアそのものが政治的メッセージとなり、その作業が求めるのは、短文で攻撃的かつ単純なメッセージの頻繁な発信だ。五つ星運動の議員のメッセージで利用する表現のほとんどは、壮大な政治的プロジェクトより、愚痴を行うために利用されている。私が望んでいるのは、他の政治家のプロジェクトに対して批判を述べるより、トーク番組に出演した政治家が国民に対して自分の政治的なプロジェクトについて巧みに語る、という日の到来だ。

デジタル資本主義

五つ星運動の戦場となるのはソーシャルメディアである。実際に、Facebookやツイッターやそこに付く「いいね」は世界一生産性のある広告会社であると言える。その人員は10億の従業員で構成される、日々自主的にパソコンに向かう私たちを含む。私たちは3つの意味で搾取されている。まず、タダで働く労働者として。そしてその労働者が勤める広告会社が対象とする消費者として。さらにはその広告が売り込む製品を購入する者として。これは、原子でなくビットで成り立つ新しい資本主義であり、その中ではスタンダード・オイルの石油企業というよりデジタル情報を取引するFacebookが巨大な権力を握ることになる。実際に、現在では無尽蔵にある「チャット」は有限である石油を取引するより儲かるのだ。

五つ星運動とデジタル資本主義における無意の相乗効果で最悪の結果は、政治文化の劣化である。テレビで報道される討論や街の中での街頭演説は、広告による利益を生み出さないため、ソーシャルメディアに取って代わる。それらはアイデアを動かすだけで、貨幣を動かすわけではない。一方、真の意味での価値を生み出すのは、市場の原理によって動かされる、常に情報を発信し続けて中毒の恐れが潜んでいるインターネットである。そうは言っても、ここで注意すべきなのは、政治的議論の質の劣化をさせているのはインターネットそのものではない。インターネットは、あらゆる可能性を引き出す力を持っている素晴らしい発明だ。しかし、インターネットとテレビを含めたメディアの質を下げているのは、クリックや利用者の数を増やすために社会の最も醜く衝撃的な性質を刺激する商業的支配なのだ。

3月4日イタリア総選挙後

今回の3月4日の選挙の勝利によって、我々が知っている五つ星は大きく変わるだろう。下記に十分あり得る運命として、4つの将来的シナリオを述べる。

第一のシナリオ:7年続くイタリアの政治安定性はこの先さらに5年は続くであろう。新たな五つ星運動反体制派の脅威は、共和党に100ものの政党に過去70年認められなかった安定性を与えることとなりうる。

第二のシナリオ:その中で最も尊重されている人物(例えば、ミラノ市長ジュリアーノ・ピザーピア、ラウラ・ボルドリーニ、ステファノ・ドロタ下院副議長)および五つ星運動の左翼の概念そのものの名を汚すという戦略は、ようやく実を結ぶ。極右翼の悪行である、つまり反ファシズムの批判、右翼特有の考えの導入などに対する五つ星運動の沈黙も、ようやく実る。それ故、シルヴィオ・ベルルスコーニ政権は過去10年の間に五つ星運動のリーダーたちが木を揺らして落とした「選挙の実」を得ることとなるだろう。そして世界で最も老害が支配する国において、70代のグリッロ(不適格者、有罪判決を受けた者)が80代のシルヴィオ・ベルルスコーニ(同じく不適格者、有罪判決を受けた者)に意に反して譲り渡すことになるであろう。これはベルルスコーニの3度目の勝利となりうる。この先5年間、私は過去四半世紀の間に「おいイタリア人たち!何て奴をどういうつもりで選んだのだ?」と自問自答してきたことをまた続けなくてはならないだろう。

第三のシナリオ:五つ星運動の政治家、ジャンルイジ・パラゴーネ(極右派北部同盟の新聞パタゴーニャのディレクター)は自称「北部同盟と五つ星運動の対話を担った人物」として成功をするであろう。さて最も恐ろしいシナリオはこれからだ。

第四のシナリオ:五つ星運動の始まりに関わった「グリッリーニ(グリッロの弟子を意味する造語)」らは、今まで沈没を続けていたにも拘らず、ついに出馬して活動することになるかもしれない。

津波のその後

津波ツアーは2013年に行われ、40日間に80もの凄まじい演説を行った総選挙の政治集会ツアーの名前だ。この悪い波は163人の若い「国民」を国会に押しやった。しかし津波が引いた後、こうして取り残された「国民」はどうなるだろうか。五つ星運動の「素晴らしい同盟」だけが残るであろう。非政治主義を除いては、彼らは全ての課題で分かれている。

五つ星運動は今現在、船員が救命浮標を壊してしまった状態のタイタニック号である。ヨーロッパを築いたイデオロギーの信頼を損なわせることによって、さらにその津波はアイデアを押しやった。ベッペ・グリッロは、統合力が「いいね」を収集したり「フォロワー」や「友達」を越えることがないような「おバカ世代」を育成している。政党そのものを支える概念、すなわち、労働組合、生協、NGOなどは、今まで五つ星運動の運営陣により痛烈な批判を受けてきた。

勇気ある生存者

五つ星運動の津波が去って、地図もコンパスも持たない生存者が残された。2014年5月5日に私はグリッロに次のように述べた。「我々は失敗して共倒れする。我々は真実と正義の占い棒とスマートフォンを持って未開の地を進んでいるのだ。」と。これらの言葉とともに、私はグリッリーニの立場に立ってデジタルの理想郷の本質を理解しようとした。五つ星運動のために、数え切れないほどの人が、多くの時間と努力をこの冒険に注いできた。もし五つ星運動がこの誓いを守らなければ、一体どれほどのものが失われるであろう。そのうち、何人が他の場で正義と真実を追求しつづけるだろうか。68年の学生運動が終焉したのと同様に、五つ星運動の時代の終わりがいずれは来るだろう。私達も50年後にやっと反省することになるのだろうか。ここ50年の間に2度も焼けた理想郷の焼け野原の上では、数十年以内に理想郷が再生することは想像しがたい。

もし若き五つ星運動の政治家が国会議員になろうとしたら、彼らの間の矛盾する政策が多くの酷い問題を生むことであろう。カザレッジョとグリッロは、カザレッジョが求めていた素晴らしい相乗効果を増強した。しかし、彼らは成功者を育成していない。五つ星運動の今後の運命は、熱狂的な支持者次第である。政策の根本的な修正を行えば、民主主義で新たな道を切り開きたかった占い棒として、この先歴史に残るだろう。しかし、その一方、彼らは大胆な夢を叶えなければ、五つ星運動の中でのもっとも優秀な人々は私たちのために重要な教訓を残したことになる。すなわち、他の者はその同じ道を歩まないものだと。

翻訳:トレンチャー奈津美

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