伊藤詩織さん、オンラインでの中傷を語る「本人の前で言えるのか、考えて」

「オンラインの中傷は『見なければいい』という声が聞こえますが、インターネットはもはや生活に欠かせないもの。通学路や通勤路のようなもの」

Twitterの投稿に名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが6月8日、漫画家らに対する損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

伊藤さんが性被害について世の中に訴えてから3年。Twitter上などでは、今回提訴した3人だけでなく、現時点でもなお、多くの人から伊藤さんに対する中傷コメントが投稿され続けている。

伊藤さんは記者会見で、オンラインでの中傷を受け続けた自分の体験についても語った。そして「傍観者にならない、アクションを」と訴えた。

記者会見で話す伊藤詩織さん
記者会見で話す伊藤詩織さん
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

「オフラインで言えるのか」考えて

オンラインの中傷は「見なければいい」という声が聞こえますが、インターネットはもはや生活に欠かせないもの。通学路や通勤路のようなもの。「見るな」と言われても難しい、見なくても入ってきてしまうもの。3年間続いたことは精神的に大きな負担になっていました。

言葉には、すごく大きなパワーがあり、サポートしていただいた心強い言葉もたくさんありました。ただ、同時に言葉には人を傷つけ、時には死に追いやってしまうこともたくさんあります。言葉で人をこれ以上傷つけることがないよう、何かアクションを起こしていく必要があると思っています。

(中傷の)言葉を受けつづけて、外を歩けなくなってしまったこともあります。変装をしていたんですけど、変装をやめて外を歩いた時に気づいて声をかけてくれた方は、皆さんすごく応援してくださった。

オフラインの世界では面と向かって苦しい言葉を投げかけられる経験はありませんでした。そういった言葉を投げかける方に対して、本人の前で責任を持って言えるのかということを考えて、言葉を発する前に考えていただきたいというのが願いです。

「受け皿を」

誹謗中傷、オンラインストーキング、ハラスメントには、どう対処したらいいのかわからないものがたくさんあると思います。私もその一人でした。そういった方たちへの受け皿が必要なのではないかと思います。

個人的な体験ですが、こういった言葉に慣れることはありませんでした。私の場合は、近くにいる友人に言葉にして、なるべく一人でいないようにしました。一人でいる時に追い詰められてしまうことが多くあったので、できるだけオンラインで話したり、友達に相談したりしました。でも、それができない方もいるので早くハラスメントから守られる受け皿や相談窓口が必要だと思っています。

「プラットフォームの責任投げかける」

(制度の)改善面でお願いしたいのは、(発信者の)情報開示のハードルがやはりあること。それをもっと低くしてほしい。そこから、言葉についての議論を進めたいと思います。

幸運なことに民事サポートチームができ、リサーチ結果を元に色々なノウハウが集まったので、各ブロバイダやTwitterなどのプフラットフォームに対して責任を投げかけるためにも、法的なアクションを起こしていきたいと思っています。

「大人が取り組まなくてはいけない問題」

こういった言葉を受けると孤立してしまう。その声が一部だったとしても大きく聞こえてしまい、声に取り囲まれる気分になってしまう。

私の場合は日本語で誹謗中傷が多かったので、英語で発信することや、海外に行けたので、楽になりました。

ただやっぱりそうではない、オンラインが生活の大きな世界を占めている人にはとても苦しいものだと思う。特に若くなればなるほど、これは深刻な問題だと思います。大人たちが取り組まなくてはいけない問題だと思います。

「傍観者にならない、アクションを」

アメリカでは、保護者が端末に専用のアプリを入れて本当にこの投稿をしていいのか?と問いかけるアプリもあります。加害者や被害者にならない、そして傍観者にならないということがすごく大きい。

また、オンラインだとスルーしてしまうことがあると思うんですが、そういった言葉に対してどうかスルーせずに。どうしたらこういった言葉がなくなるか、おかしいと思ったら通報する。そういったアクションを取っていただければと思います。

ネガティブな言葉に対して、もっとポジティブな言葉でどんどん埋めていくことが必要だなと感じています。心で思っていて伝えないということもあると思います。でも、それを言語化していくことによって、誹謗中傷に対してネガティブな発言に打ち勝てるということはあると思います。自分でもポジティブな発信をしていきたいと思っています。オンラインハラスメントについては法整備でもそうですが、法だけではどうにもならない部分もあります。海外でどういった取り組みがあるかということも、調べて行きたいと思っています。

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