あの人のことば
2019年10月23日 11時23分 JST

「相手を思いやるがゆえに、心がすれ違う」 一徹さんが語る現代のセックスの難しさ

難しさを乗り越える鍵は、「イヤ」の気持ちを伝え、失敗を許容し合うこと。

HuffPost Japan
一徹さん

好きな相手をわざと傷つけようと思ってる人なんていない。

セックスの難しさは、相手を思いやるがゆえに起こってしまう“悲しいすれ違い”なんじゃないでしょうかーー 

そう語るのは、「女性向けAV俳優」として活躍する一徹さんだ。

一徹さんの元には女性から数多くのお悩み相談がくる。その多くは「好きな人をがっかりさせたくない」という思いからきているように感じる、と一徹さんはいう。 

パートナーとのセックスは大事なコミュニケーションのひとつだが、気軽に本音を話し合うのはなかなか難しい。 

ハフポスト日本版のネット番組「ハフトーク」に出演した一徹さんと、改めてセックスについて話し合ってみた。

多くの女性が苦しんでいたこと。それは…

 これまで15年以上、AV俳優として活動してきた一徹さん。

2009年に女性向けAV専門レーベル「SILK LABO」の作品に出演して以来、女性に向けたAV作品を中心に出演・制作し続けてきた。

一徹さんの元には日々、数多くの女性たちからメールや手紙でセックスにまつわる悩み相談がくる。

悩みに答える中で、一徹さんはある「呪縛」に気づいたという。 

《日本では学校での性教育もまだまだですし、多くの男性が知らず知らずのうちに、AVでセックスのことを学ぶということが多いように思います。実際にはAVとリアルなセックスは違うのに、多くの男性が演出されたAVのセックスシーンを“お手本”のように受け止めてしまう。「女性はこうやったら喜んでくれるんだ」「セックスではこうするといいんだ」など、セックスには“正解”や“ゴール”があるように錯覚してしまうこともしばしばだと思います。

僕が多くの女性の声を聞く中で気づいたのは、このことが多くの女性を苦しめているということでした。》

一徹さんが女性向けの作品を作り続けているのは、セックスの描かれ方に「もっと多様な選択肢をもたせたい」からだという。

《一言で言うのは難しいですが、簡単に言ってしまうと、男性向け作品はムラムラを解消するもの、女性向け作品はキュンキュンを生み出すもの、という傾向があります。 

一般的に男性は女性を支配したいという気持ちが強いとされているので、そのニーズに沿う設定が多いですね。男性視点のカメラアングルが多く、行為までの展開がはやいです。一方、女性向けは行為の前後をかなり大事にしています。セックスに至るまでの過程も含めて楽しめる内容が多いです。

ひとまとめにするような言い方はしたくないですが、男性と女性で「セックスのゴール」が違うので、必然的に演出にも差がうまれる、という部分はあると思います。》

最近では、男性向けの定番演出を女性向けの映像に取り入れたり、その逆もあったりと、内容がかなりボーダレスになってきているというが、「まだまだお互いに真似しあえる部分もあるかも」と一徹さんは語る。

 《例えば、手を握るとか、コンドームを付けるなど、行為の前の演出は、男性向けのAVでは省略されがちです。でも実際のセックスでは、そんな風にいきなり挿入するわけではないですよね。

AVを参考にしてセックスをする人は、AVで描かれていないことはしなくても良いことだと受けて止めてしまうこともあると思うんです。だから僕は作り手の責任として、特にコンドームの装着などについては、啓蒙の意味でもなるべくきちんと表現するようにしています。》

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一徹さん

失敗を許容しあうことが大事。

MeTooムーブメント以降、お互いに性行為をする際に意思確認をする「性的同意」の重要性が改めて指摘されるなど、セックスのあり方を話し合う機会が増えている。

AVなどのアダルトコンテンツが与える影響の大きさを実感しながら、作品や書籍などを通じてセックスの難しさと楽しさを伝えるための活動を続ける一徹さん。

《すごく難しい時代だと認識しています。でもこういう時代だからこそ、男性も女性も以前より一層パートナーを思いやっている気もするんです。相手を大事に思うがゆえに、考え込んだり忖度したりして、結果的に“悲しいすれ違い”が起きていることも多いのではないでしょうか。》 

どうせ傷つくならもう誘うのやめようかな?

相手は自分を求めていないんじゃないか? 

想像に想像を重ねて、セックスに億劫になってしまう男女もいるのではないか。 

一徹さんは、こう続ける。

《セックスは時に人を傷つけてしまう可能性がある。まずはそれを自覚しながら、相手の気持ちをきちんと確認することが一番大事なことだと思います。ホテルに行く=セックスOKとか、家に行く=セックスOKなどと、勝手に思わないこと。いくらお互いに好意を伝え合っていても、たとえ夫婦であっても、その時の気分でセックスをしたくない時だってありますよね。それをお互いに確認して、伝える。》 

《伝え方はとても難しいです。相手のことを嫌いになったわけではなく、あくまで状況によって今はしたくないだけだよ、というのをきちんと示すのは大事かもしれません。何よりもその都度その都度、相手の気持ちを尊重することだと思います。》 

最後に一徹さんは、言葉を慎重に選びながらこう語った。

《失敗を許容するという姿勢はとても大事ですよね。セックスに上手い・下手なんてないんです。誰でも“失敗”することはあります。僕もあります。もしうまくいかなかったとしても、男性にはあまり落ち込まないで欲しいですし、女性には「自分に魅力がないから」と思わないでほしい。そのためにも、やっぱりお互いがお互いを許し合うマインドが大事なんだと感じています。》

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一徹さん

一徹さんが、もっと詳しく“これからのセックス”について語った著書『セックスのほんとう』が「ハフポストブックス」から刊行されています。全国の書店、ネット書店で販売されています。

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『セックスのほんとう』