PRESENTED BY ヤンセンファーマ

こころの病を抱える兄が天職を見つけた理由。薬学研究者と歌手のAIさんが精神疾患のリアルを語る

100人に1人(*1)が抱える「統合失調症」。実は身近な病気だけど、症状や必要な支援など、正しく知られていないことがたくさんあります。薬学研究者が、こころの病を抱える兄の体験をもとに語るリアルとこれから。歌手のAIさんが新曲「Not So Different」での新たな挑戦についても教えてくれました。

ダイバーシティ&インクルージョンという言葉が浸透してきた現代。“こころの病”を抱える人については、あまり話題にされてきていないのでは。だが、精神疾患の患者数は、2017年では400万人以上(*1)と、近年大幅に増加している。その中で、うつ病などと並んで多く、100人に1人が罹患するといわれる(*2)のが「統合失調症」だ。

統合失調症はどんな病で、どんな知られざる課題があるのか。NHKの福祉情報番組「ハートネットTV」で様々な障がいを抱える人と会話を重ねてきた歌手のAIさん、兄のこころの病をきっかけに「統合失調症」の新薬開発に取り組むヤンセンファーマの渡辺小百合さんが、実体験を打ち明けながら話し合った。

左から、ジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門ヤンセンファーマで統合失調症の薬剤開発に取り組む、渡辺小百合(わたなべ・さゆり)さん、歌手のAIさん。
左から、ジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門ヤンセンファーマで統合失調症の薬剤開発に取り組む、渡辺小百合(わたなべ・さゆり)さん、歌手のAIさん。
Kaori Nishida

◾️統合失調症って?

渡辺さん(以下敬称略):私の兄は、生まれつき統合失調症と似たようなこころの病を抱えていて、私はそれが普通のことだと思っていたんです。でも、誰もいないのにしゃべっているとか、遠くに向かって怒鳴っているとか、なぜだろうと徐々に気になるようになって。頭の中の仕組みが知りたくて、脳科学の研究に進みました。

AIさん(以下敬称略):私は統合失調症の方と、レギュラー出演させてもらっている「ハートネット TV」で出会いましたが「違和感なくコミュニケーションできるじゃん」という印象でした。ただ、私が知っているのはその方のごく一部。今日はもっと病気のことを知りたい! という気持ちで来ました。

AIさん:2000年『Cry,just Cry』でデビュー以来、日本を代表するR&Bシンガーに。日本人の父と日系米国人の母を持つ。「ハートネットTV」では、様々な障がいを抱える人と交流してきた。
AIさん:2000年『Cry,just Cry』でデビュー以来、日本を代表するR&Bシンガーに。日本人の父と日系米国人の母を持つ。「ハートネットTV」では、様々な障がいを抱える人と交流してきた。
Kaori Nishida

◾️「100人に1人」がかかる病

渡辺:統合失調症とは、脳のネットワークに何らかの異常があり、脳内物質を「統合する=まとめる」機能が失調する病気です。日本の患者数は約79万人、100人に1人くらい。決して珍しい病じゃないんです。

統合失調症の症状
統合失調症の症状

典型的な症状は「誰かが自分の悪口を言っている」とか「虫が手の中に入ってきて気持ちが悪い」といった幻覚や妄想。本人は苦しんでいるので、電車の中で急に叫んだり走り回ったり……ということも。他にも、意欲が低下したり、やる気が出なくなってしまったり、物事に集中できなくなってしまったりする症状があります。

統合失調症は、誰もが持っているような性質が一部分だけ強く出てしまう病気ですが、放っておくと脳が萎縮する可能性もあります。薬物治療でかなり症状を抑えられるので、早めに受診することが大事です。

◾️盗みを疑われた兄。職を転々とする日々から救ったもの

AI:患者さんが落ち着いて生活していくためには、薬の治療以外にどんなことが必要ですか。お兄さんは今、どんな暮らしをしているのでしょう。

渡辺小百合さん(薬剤師、Ph.D):ヤンセンファーマ株式会社研究開発本部 Clinical Science統括部 Clinical Science Associate Director。研究テーマは、統合失調症の回復期の治療など。
渡辺小百合さん(薬剤師、Ph.D):ヤンセンファーマ株式会社研究開発本部 Clinical Science統括部 Clinical Science Associate Director。研究テーマは、統合失調症の回復期の治療など。
Kaori Nishida

渡辺:精神疾患はストレスで悪化するといわれていて、周囲の理解が重要です。兄は50歳手前ぐらいなんですけれども、学校を卒業してから、上司や同僚の理解が得られず、職を転々としたんですね。

例えば、兄はお金の概念がないんです。100円玉と500円玉と1000円札だったら硬貨で一番大きい500円が高いと思って、1000円札はいらないからドブに捨てちゃうとか。自分のものと他の人のものの区別もあまりつかない。

だから会社のお金がなくなった時、証拠もなく兄のせいにされる……といった経験もしてきました。今は図書館の喫茶店という理解ある職場をやっと見つけて、20年以上も生き生きと働き続けています。

Kaori Nishida

AI :やっぱりどんな人でも普通に暮らせるのが一番いい。異質な存在を避ける人もいるけど、程度の差こそあれ、誰もがどこかしら変わっているんです。私は子どもの頃から肌の色が違う人、障がいのある人とかが周りに多くて、気にせずしゃべりかけてきました。失礼だと怒られたこともあったけど、とにかく相手を理解しようとすることが大切。

ただ、「変わっていると叩かれる」のは、残念だけど誰もが経験している。だから、わかっている人がサポートしてあげること。自分が大丈夫な時は、そうじゃない人を守ることも大事だと思います。

◾️ “製薬”を超えて。VRやアートに挑む理由

Kaori Nishida

渡辺:製薬会社としては革新的な薬を作ることが第一目標ですが、薬だけでは到達できないところのサポートも大切です。例えば統合失調症でいうと、社会復帰の支援。やっぱり何年も引きこもっていた人がいきなり自立をしようとしても、難しいこともあります。だから、東京ヴェルディさんと2020年から就労体験の取り組みを始めました。

また、2003年から統合失調症の症状である幻覚、妄想などを体験できるバーチャルリアリティのツールも開発しています。患者さんがどう苦しんでいるのか理解できると、突然騒ぎ出した時などの対応も変わってきます。患者さんも理解してもらえていることがわかると、すごく安心できる。

「ハートアートコンテスト」の2019年受賞作品。左から菊池猛さん『山のふうけい』、長友香菜美さん『天の川の夜に 〜文字のない絵本の1ページ〜』。
「ハートアートコンテスト」の2019年受賞作品。左から菊池猛さん『山のふうけい』、長友香菜美さん『天の川の夜に 〜文字のない絵本の1ページ〜』。
ヤンセンファーマ提供

他にも「ハートアートコンテスト」という絵画イベントも2002年から毎年実施しています。作品自体もすごいんですけど、一つの絵を描く過程で、心理師さんや家族とコミュニケーションの“きっかけ”が生まれたらいいなと思っています。

◾️ AIさん、新曲で挑戦した“問いかけ”

AI :テクノロジーからアートまで、本当に幅広い機会を提供しているんですね。私も、世界中の人たちが仲よくなるきっかけづくりをしたくて歌い続けているんです。世の中にはいろんな問題があるけど、ちょっとずつでも希望を増やしていけたらと。

Kaori Nishida

これまで『ハピネス』などの曲では、あえて具体的な問題や背景は説明してきませんでした。でも、新曲『Not So Different』では「花束を銃のかわりに」など、初めて「問題を解決していくために、こうすればいいんじゃないかな?」とみんなに問いかけてみたんです。

(編集註:AIさん新曲『Not So Different』MVは文末でご覧いただけます)

◾️“隣人への笑顔”から始まる協力

渡辺:たくさんの課題に向き合い、その中で自分に何ができるか考えてできた曲なんですね。私の考えにも通じます。

「大変なこともあるけど、兄は素直に嬉しいことは嬉しいと表現してくれるし、その存在に救われることもたくさんあるんです」と渡辺さんは語ってくれた。
「大変なこともあるけど、兄は素直に嬉しいことは嬉しいと表現してくれるし、その存在に救われることもたくさんあるんです」と渡辺さんは語ってくれた。
Kaori Nishida

私個人ができることは、やっぱり患者さんが本当に必要とする薬の開発です。会社としては「Beyond the pill」として、革新的な薬の提供を超えて、統合失調症など精神疾患を抱える人も、もっと普通の生活を送れるような社会づくりをしたいと考えています。

AI :みんな協力し合えば、世の中は絶対もっとよくなる。隣の人に笑顔で「こんにちは」と言えば、もう協力だと思うんですよ。それが難しかったら、まずは頑張ろうとする人を見守るだけでもいい。そしたら、どんどん協力の輪が広がっていくはずです。

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AIさん新曲『Not So Different』のMV

『Not So Different -One Young World Japan Version-』

「Not So Different -One Young World Japan Version-」のMVを「見る」ことで”SDGsに貢献する世界の次世代リーダーを応援できる「#見る募金」プロジェクト”がスタート。詳細は、リンク先のプロジェクト詳細をご覧ください。

撮影:西田香織

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