「住民の切なる思いに応えていない」神宮外苑の再開発、事業者に説明会を求める声明を発表

事業者が発表した文書に対し、住民団体の代表が「誠意を感じられず、不安が募るばかりです」と語りました

「不安が募るばかりです」

神宮外苑の再開発を巡り、「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」が、事業者が発表した文書に対して懸念を示した。

この有志の会は、「子どもたちに、街の未来をつないでいく責任がある」という思いを抱く、神宮外苑近隣の幼稚園や小学校の保護者ら地元住民からなる。

神宮外苑の再開発が、住民に対する十分な事前説明がないまま進められていることに不安を抱いており、2月に事業者による住民説明会の開催と、いちょう並木の名勝指定を求める陳情書を東京都港区に提出した。

港区も事業者に対し、既存樹木の保全・移植・伐採の方針などについて、住民説明会を開催して丁寧に伝えるよう事業者に要請した。

しかし事業者が4月14日発表した「神宮外苑地区まちづくりを進める意義等について」で、住民が要請している説明会への回答はなかった。

有志の会は4月17日、事業者の発表は「地域住民の切なる思いに応える内容とは言い難いもので大変残念」として、改めて、対話型の説明会を求める声明を出した。

神宮外苑のいちょう並木
神宮外苑のいちょう並木
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「誠意を感じられず、不安が募る」

住民説明会への回答がなかった理由について、事業者の1つである三井不動産は「今回の文書は、4月6日に東京都から出された『多くの都民の共感と参画を得ながら推進するように』という要請に対しての回答であるため、説明会については触れていない」とハフポスト日本版の取材で述べた。

また、説明会を開催するかどうか尋ねたところ「回答するか、するのであればいつ頃になるかも含めて検討中です」と答えた。

今回の文書で、住民側は説明会への言及がなかったことに加え、事業者が「『4列のいちょう並木が伐採される』 等の誤解や憶測が一部生じている」と説明していることに対しても懸念を示した。

神宮外苑の再開発見直しを求める市民団体や専門家らは「再開発ではいちょう並木が伐採される」という主張はしていない。

文化遺産保存の専門家などからなる日本イコモス国内委員会が問題だと指摘しているのは、新設される神宮球場の外壁がいちょう並木間近に迫るため、根を傷つけて衰退させる可能性が非常に高い、という点だ。

有志の会の加藤なぎさ代表は、「『いちょう並木が伐採されると思っている』という書き方はミスリーディングであり、この問題をよく知らない人に、見直しを求めている側が勘違いをしているような印象を与えてしまいかねません。誠意を感じられず、不安が募るばかりです」と述べた。

この点について、三井不動産は「伐採というのは、住民や団体から出された懸念について述べたものではなく、一般の声です」と説明した。

住民と対話できる説明会を開いて

日本イコモスは、いちょう並木を含めた神宮外苑の樹木について現地調査を続けてきた。そして、その調査結果と事業者報告に著しい乖離があるとして、両者立会いでの現地確認を求めている

この日本イコモスの要請に応えるかどうかについて、三井不動産は「個別の団体への返答は、するかどうかも含めて回答を控える」と説明した。

事業者の回答について、加藤代表は「事業者様には、子どもたちにどのような未来を残せる計画なのか、安心安全を守れるのか、さまざまな分野専門家の皆様のご指摘に対する回答含め、対話ができる説明会の開催を求めたい」とハフポスト日本版にコメントした。

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