「同性パートナー制度はニーズがない」発言の会派に、LGBT支援団体が抗議署名を提出。議員発言の一部を取り消しへ

鹿児島県弁護士会も「きわめて不適切」という強い声明文を発表しました。

鹿児島県のLGBTサポート団体「レインボーポート向日葵」は9月25日、鹿児島市議会の本会議で、所属議員がLGBTの人たちへの支援施策に「慎重であるよう」求めた市議会・自民みらい会派に、抗議の署名を提出した

市議会事務局によると、発言の一部は議事録から削除される方針だという。

問題になったのは、9月11日に開かれた鹿児島市議会の本会議での発言だ。

自民みらい会派の上田勇作議員が「同性パートナーシップ制度はニーズがほとんどない」、「性的少数者であるがために突出して差別を受けているわけではない」、「神の与えたもうた自然な摂理にあった男女の性の考えを強調するなど、市民が納得するバランスの取れた性教育を行うべき」などと発言して、LGBT支援施策の導入に、慎重であるよう求めた。

質疑に立つ上田勇作議員
質疑に立つ上田勇作議員
鹿児島市議会の議会中継より

レインボーポート向日葵は、この発言が「LGBTに対する誤った理解や偏見に基づく差別」であり「当事者を傷つける内容が多数含まれている」として、「発言の撤回と謝罪、そしてLGBTについての正しい知識の習得を求める」署名活動をスタート。

同団体によると、9月23日夜に始まった署名活動には、25日16時時点で10,756人が賛同した(署名はまだ受付中)。鹿児島県だけでなく、全国や海外の人たちからの署名も集まっているという。その署名を25日に自民みらい会派に渡した。

レインボーポート向日葵のメンバー、正貴(まさき)さんは「いろいろな意見があっていいと思うが、差別を助長するような発言はあってはならないと思う。今回のことをきっかけに正しい知識を広めていきたい」とハフポスト日本版に話した。

■発言の一部を取り消しへ

鹿児島市の議会事務局によると、9月25日に自民みらい会派から、発言の一部の取り消しを求める申し出があり、26日の議会運営委員会で、その部分を取り消すことが確認された。

取り消されるのは、上田市議が会派の代表質疑の冒頭で述べた「申し上げておきますが、多様性や寛容を求める人々が、異なる意見に非寛容な態度を取ることは、厳にいさめなくてはなりません」という部分だ。

30日に開かれる本会議で、上田議員から正式に発言取り消しの申し入れがあるという。

■県弁護士会も抗議する会長声明を発表

9月11日の上田議員の発言には、当事者団体に加えて、野党議員や弁護士会からも大きな反発が起きている。

鹿児島読売テレビによると、9月24日に開かれた議会運営委員会では、共産党の大園竜也議員が「優先順位の低いLGBT問題よりも他の人権問題を進めなさいと受け止められかねません」として自民党みらいに質問の真意を問いただした

さらに9月25日付で、鹿児島県弁護士会が「発言はLGBTの尊厳を傷つけ、性自認・性的指向に基づく偏見を助長するものだ」という抗議声明を発表した

鹿児島県弁護士会が発表した、抗議声明
鹿児島県弁護士会が発表した、抗議声明
鹿児島県弁護士会のウェブサイト

同会は声明で「性のあり方は多様である」とし、「身体の性と性自認との間に違和感のない男女による結びつきのみを『自然の摂理に合った』ものととらえ、子どもは男女の親によって育てられるべき、またそのように教育すべきという本発言は、性の多様性を否定するものであり、到底容認できない」と、上田市議の発言を強く非難。

「LGBTに対する偏見や無理解を後押しし、LGBTの人権を否定するものであり、きわめて不適切」と、人権否定に当たるという見解を示した。

さらに、同性パートナーシップ制度などLGBTの人たちを支援する施策は「LGBTではない者に不利益を与えたり、不自由を課したりするものではなく『逆差別』にはあたらない」とし、市議会に対して、誰もが生きやすくいられる社会の実現を求めた。

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