継母ではなく「ママラ」。次期副大統領カマラ・ハリス氏が築いた温かい「ブレンドファミリー」のかたち

新副大統領のカマラ・ハリス氏は子どもたちから「ママラ」という愛を込めた言葉で呼ばれています。
バイデン氏とハリス氏の当確が伝えられた後、支持者の前でスピーチするカマラ・ハリス氏(2020年11月7日)
バイデン氏とハリス氏の当確が伝えられた後、支持者の前でスピーチするカマラ・ハリス氏(2020年11月7日)
ANDREW HARNIK via Getty Images

「これまで、様々な肩書きで呼ばれてきました。副大統領という肩書きが加われば、もちろん素晴らしいでしょう。だけど私に取って、最も大切なのはママラです」

黒人そして南アジア系女性として初めて、アメリカの副大統領になるカマラ・ハリス氏は、8月に副大統領候補に指名された後のスピーチでそう語り、ママラという呼び名を紹介した。

「ママラ」は、ハリス氏のふたりの子どもがハリス氏を呼ぶ時に使う言葉だ。

ハリス氏は、2014年に結婚した夫のダグラス・エムホフ氏と、息子のコールさんと娘のエラさんの4人家族。

(ハリス氏が副大統領候補に選ばれた後にダグラスさんが投稿したツイート。「愛するカマラ、おめでとう」と祝福のメッセージが綴られている)

家族は、マルチレイシャル(複数の人種が混ざり合う)なブレンドファミリーだ。

ブレンドファミリーとは、再婚したカップルと、彼らの以前のパートナーとの子どもが一緒になった家族のこと。コールさんとエラさんは、エムホフ氏と前妻のカースティン・エムホフ氏の間に生まれた子どもだ。

ハリス氏がエムホフ氏と交際を始めた時、コールさんとエラさんはともに10代。ハリス氏はカリフォルニア州の司法長官だった。

自身の親が離婚しているハリス氏は、コールさんとエラさんに会う前に、十分に時間を置くようにしたと2019年にELLEに寄せたエッセーの中で綴っている。

「子どもの時に親が離婚したので、親が誰かとデートするつらさを私はよく知っていました。だからダグとの関係が長く続くとわかるまで、私は家族の生活に深く入り込まないようにしようと心に決めていました」

「子どもは変わらないものを必要としています。私は彼らのいっときだけの支えにはなりたくなかった。彼らをがっかりさせたくなかったからです。子どもをがっかりさせるほど最悪なことはありません」

子どもたちが作った大切な呼び名「ママラ」

家族のお気に入りのシーフードレストランで初めて会った時、コールさんとエラさんは父親の新しいパートナーのハリス氏を温かく迎え入れてくれた。

当時高校入学前だったエラさんは、会う前は緊張したが会ったら何もかもが自然で「ずっと昔からお互いを知っていたようだった」と語っている

ハリス氏は最初に子どもたちに会った時のことを「私はすでにダグのことが大好きになっていましたが、私を強く引き寄せてくれたのは、コールとエラだと思います」と振り返る

「ステップマム(義理のお母さん)」という言葉が好きではなかったコールさんとエラさんとハリス氏。

2014年に結婚した後、コールさんとエラさんがハリス氏を呼ぶ名前として「ママラ」を思いついたとハリス氏は説明する。

そんなコールさんとエラさんは、政治家としてのハリス氏を支える存在でもある。

エラさんは8月の民主党全国党大会で流された動画に登場し、「私と兄にとって、あなたはいつでもママラ。世界で最高の義理のお母さんです」「私たちの父親にとってだけでなく、3世代にわたる私たちの大きなブレンドファミリーの中で、あなたは最高に素敵な存在」と、ハリス氏への思いを述べた。

動画には、ハリス氏の大切な家族である妹のマヤさんと姪のミーナさんも登場していて、ミーナさんは「あなたは私のロールモデル。あなたは私に望むことはなんでもできると教えてくれた」と尊敬する伯母へのメッセージを語っている。

夫の元パートナーも大切な家族

コールさんとエラさんだけではなく、ハリス氏は夫の前パートナーのカースティン・エムホフ氏とも良好な関係を築いている。

「カースティンとはすごく気があって、仲の良い友達になりました」とELLEのエッセーでハリス氏は綴る。

一緒にエラさんの水泳大会やバスケットボールの試合で応援するなど、ふたりの母は協力して子育てをし、コールさんとエラさんに愛を注いでいる。

カースティンさんはハリス氏が副大統領候補になった後にInstagramにハリス氏の写真を投稿し、「ジョー・バイデン氏は素晴らしい人を選びました。歴史的な瞬間です。私たちはバイデン/ハリスが11月に勝利するために、熱くなっています」とハリス氏にエールを送った。

ハリス氏が子どもたちや夫の元パートナーと築いている関係は、「継母」につけられがちだった、ネガティブな印象を払拭するパワーがある。

新しいかぞくの形を伝える新政権

大統領選挙の間、弁護士であるハリス氏の夫のダグラスさんは、応援演説をするなどして妻の選挙戦を支え続けた

11月7日(現地時間)にバイデン氏とハリス氏の当確が報じられた後、ダグラス氏は「あなたを心から誇りに思う」というメッセージと、妻を抱きしめる写真を投稿した。

さまざまな人種やバックグラウンドを持った人たちが愛し合う自分の家族を「何より大切」と語ってきたハリス氏。

当確後のスピーチでは「夫のダグ、子どもたちのコールとエラ、妹のマヤ、そして家族全員に、言葉では表現できないほど愛していると伝えたい」と家族への愛と感謝を口にした。

ちなみに、ジョー・バイデン氏の家族も、再婚した妻のジル・バイデン氏とともに子どもを育ててきたブレンドファミリーだ。

1月の就任を見据えてすでに動き始めている、バイデン/ハリス政権。

人種差別的な発言を繰り返したトランプ政権に代わり、多様な家族を愛する新大統領と副大統領が、多様な人種や背景を持った人たちが暮らす国アメリカを支えていく。

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