アート&カルチャー
2019年04月27日 09時37分 JST | 更新 2019年04月27日 09時42分 JST

「中指立てまくって、自由に生きてこう」 次世代のスター・kemioは、なぜ若者から支持されるのか?

「みんな365日、いろんなことと戦ってる」。初のエッセイを発売したkemioさんにインタビューしました。

Photo: Ayako Masunaga
kemio

10代、20代の若者から絶大な人気を誇るkemio(けみお)。

「あげみざわ」など軽妙な若者言葉を生み出したインフルエンサーは、拠点としているアメリカ・ロサンゼルスから、SNSやYouTubeを通して日常の出来事をユーモアたっぷりに発信する。

人とハッピーをシェアしたい。それがkemioのモチベーションだ。

4月18日、そんな思いがつまったエッセイ『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』が発売になった。「ウチらは5年後には今と違う悩みごとと戦わなきゃいけないの。そして苦しんでまた、5年後のために強くなる」。ページをめくると、悩む若者たちを鼓舞するような力強い言葉が並ぶ。

kemioとは、いったい何者なのか? なぜ彼は支持されるのか。インタビューで迫った。

Ayako Masunaga

6秒動画アプリ「Vine」で一躍有名に

1995年東京生まれ、23歳。

YouTuberやモデルとして活動中のkemioは、Instagramで約75万人、YouTubeで約127万人のフォロワーを抱える強烈なインフルエンサーだ。 

脚光を浴びたきっかけは、かつて中高生の間で大流行した6秒動画アプリ「Vine」。現役高校生として面白おかしい”女子高生あるあるネタ”などを投稿し、一躍有名になった。

エンターテインメントの世界には、幼い頃から強い憧れを抱いていたという。

「自然とエンターテインメントの世界にいきたい、と思うようになってました。目立つことはずっと好きだったので、その延長線上みたいな感じなんですかね。ずっと騒いでいたい、目立ちたいと思っていて、そんな生き方をしながらご飯を食べていきたい、と思っていました」

Vineで人気を集めたことを機に、芸能事務所に所属。高校生活を送りながら、モデルや音楽活動などに専念した。

Ayako Masunaga

「自分、なにもないな」 すべてをゼロにしてアメリカに渡る

しかし、高校卒業後の芸能活動は“順風満帆”とはいかなかった。

Vineを辞め、SNSのフォロワーが減ることが気になったり、自分の「個性」を見つけなくては、と悩んだりすることもあったという。

そんな状況を変えるため、20歳の時、kemioはアメリカに渡った。

「自分なにもないな、と思ったのが1番の理由です。世間の人からしたら、僕は頭が空っぽで、インターネットからポッと出てきただけの高校上がりのガキ、みたいに見えるんじゃないかと思って。それは僕自身も思っていたし、むしろ自分が1番感じていたかもしれないです」

「学生時代は勉強をサボってばかりでしたし、課題も真面目にやらなかったし...。なにもないな、って。アメリカに行って英語を勉強したい、人と違う経験をしたい、と思ったんです」

渡米後は語学学校に通い、日常の様子をYouTubeで投稿するようになった。

Ayako Masunaga
Ayako Masunaga

「クラス替え」の動画にみる、kemioのブレない強さと前向きさ

YouTuberとしてのkemioの振る舞いは、Vine時代と変わらず明るくハイテンションだ。

6秒では短すぎたと言わんばかりにマシンガントークを繰り広げ、独特の「けみおワールド」でYouTubeでも人気者になった。

その中には見る人を元気づけるような、メッセージの込められた動画も多い。

たとえば、2017年4月に投稿された「クラス替え最悪、泣いた。」という動画。新学期を迎え、「新しいクラスが最悪」と悩むファンの声を受けてkemioがアップしたものだ。

「全部自分次第なんだよね。環境づくりって、やっぱり人に任せちゃいけない。誰かが楽しいことを持ってきてくれるとか、そういうことじゃなくて、自分で作っていかなきゃいけないんだよね」 

「もし今嫌なクラスだなと思った人は、ちょっとでも動いてみて。自分から。殻をボーンって破って『こんにちは、私でーっす☆』みたいな感じでいったら、ほんとに絶対変わるから。これはマジで150億パーセント、わたしが証明ですって感じだから。だからみんなお願い、頑張ろう」

(動画より一部抜粋)

画面越しに伝わる、ブレない強さと前向きさ、それと優しさ。kemioの魅力がつまった動画の一つだ。

「みんな365日、いろんなことと戦ってる」

共感、喜び、ちょっとした愚痴、不安、悩み...。kemioが投稿するYouTube動画のコメント欄には、これからの時代を生きていく若者たちのリアルな声であふれている。

コメント欄での会話も盛んで、kemioを中心に、一つの団結力のあるコミュニティができているかのようだ。

「この間、Instagramでいろいろ喋っちゃったんですけど...。たぶん年配の方だと思うんですけど、『いいですね、ヘラヘラ毎日生きてて。私たちの将来をあなたたちが背負うのがすごく心配です、怖いです』みたいなコメントがYouTubeにきたんです。

基本的に嫌なコメントはスルーするんですけど、それはちょっとカッチーンときちゃったというか。ウチだったら、絶対下の年代の人にこういう言葉はかけない、ダサッと思って。そういうコメントがくるたび、ハァってため息をついちゃいます」

明るく笑いながら、kemioは話す。

「ヘラヘラしてないとやってられないじゃないですか、人生って。みんな365日、いろんなことと戦ってるし、クヨクヨしてたって時代はすごいスピードで過ぎていっちゃうから。立ち止まっていたら置いていかれちゃうから。

自分で自分を盛り上げるじゃないですけど...。少しでも自分をハッピーにするために、こういうことをしてみるといいかもって、みんな1人1人葛藤して考えているわけじゃないですか。

それぞれの年代で思うことって違うだろうし、そのコメントをされた方も、若い時はきっと楽しいことをしたり、悩んだりもしたと思うんです。だから、楽しんでいる一部だけを切り取って勝手に判断して、そういうことは言わないでほしいですよね。その発言が出てくることに対して、逆にウチらの方が不安になります、って思いました」

Ayako Masunaga

「自分が思ってるほど1人じゃないよ」 セクシュアリティについて書いた理由

初のエッセイ「ウチら棺桶まで永遠のランウェイ」では、今まで語ることがなかった自身の恋愛観や、セクシュアリティについても書いた。

「大々的に、『こうです』って発表するような話題でもないんじゃないかな、と思うんです」とkemioは語る。

「わざわざババンって出すことでもないのかなと思ったので、真ん中の章ぐらいに、ひっそりとペペッて書きました。どういう言い方をすればいいのかわからないんですけど...僕は多分そんなに重く考えていないんです。

でも、日本には僕みたいな考えではなくて、『自分は変わってるんだ』とか『こんなことを言ったら嫌われちゃんじゃないか』と思っている方ってまだまだいると思うんです。

そういう方たちに、意外とそうでもないよ、自分が思ってるほど1人じゃないよ、っていうことを伝えたかったので、それを本に書きたいと思いました」

アメリカでの生活や、質問コーナーでファンから寄せられる悩みのメッセージも心境に変化を与えたという。

「みんながダイレクトメッセージでいろんな悩みを送ってくださるんです。その中には、僕なんかが答えていいのかって思う悩みもあって。

答える時に嘘はついていないですけど、自分の中で『逃げている』みたいな、そういう部分があるかもしれないな、と思って。本を出す時にしっかり文字で伝えたい、伝えられたらいいなとも思いました」

Ayako Masunaga

「嫌なことを言われたら、頭の中で中指立てまくるんです」

「男らしさ」や「女らしさ」など、性別の枠に閉じこめられた言葉もkemioとは無縁だ。

「男らしさとか女らしさとかって、1人1人考えは違うじゃないですか。それにはめ込まないでほしいって思います。

小さい時、ディズニーとかプリキュア、おジャ魔女どれみの本を持っていたことに、『なんだこれ男らしくない』って言われたのを今でも覚えてるんです。でも、その男らしさはあなたの思う男らしさだから、って。僕はナンセンスなワードだなと思います」

kemioはピンク色の服も着るし、スカートも履く。マスキュリンなスーツも着る。

ファッションを楽しみ、好きな人とつるみ、好きなことに一直線で生きている。そんな自由さがひしひしと伝わってくるから、kemioは多くの若者たちから愛されるのだろう。 

ストレスとプレッシャーだらけの毎日で、kemioのように自由に生きるためには、どうすればいいのだろうか。 

終始軽やかな笑顔を浮かべてインタビューに答えていたkemioは、最後に、こんなアドバイスをくれた。

「頭の中で中指立てまくるんです、嫌なことを言ってくる人に。私の中指立ちました、サヨウナラって。

僕は、自分がその人のために『我慢してる』とか『努力してる』とか、思わないようにしています。好きだからやってる。自分の夢までの通過点と思って、気にしないようにしています。でも、病むので、病む時は病みましょうって思います。

自由に生きてください、本当に」 

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Ayako Masunaga
Ayako Masunaga

(聞き手・執筆:生田綾 / 写真:増永彩子)