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年収の20%は貯蓄や投資に…。人生100年時代に備えるべき5つのポイント

「これから転職、結婚、住宅購入などを考えている世代こそ、いますぐライフプランを見直すべき」ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは指摘します。

「人生100年時代」と言われる昨今。実際、日本において2007年生まれの50%は107歳まで生きるとも予想されている(*1)。とはいえ、「まだまだ老後のことを考えるのは早い」「今の生活で手一杯」と感じている人も多いのでは?

だが、「これから転職、結婚、住宅購入などを考えている世代こそ、人生100年時代に備えて、いますぐライフプランを見直すべき」と語るのが、20年以上ファイナンシャルプランナーとして活動してきた黒田尚子さんだ。

働く世代が人生100年時代を迎えるために、やるべきこと、知っておくべきこととは? 働きかた、マネーなど、5つのポイントを黒田さんに聞いた。

黒田 尚子(くろだ・なおこ)さん:CFP® 1級ファイナンシャルプランニング(FP)技能士。大手企業でSEとして勤務しながらFP資格を取得し、1998年独立系FPに。多くの人のライフプランに携わる。2009年に乳がん告知を受け、自らの実体験をもとに経済的備えの重要性を訴える活動を行う。現在は、各種セミナーの講師、新聞などでの執筆、個人相談など幅広く活動。
黒田 尚子(くろだ・なおこ)さん:CFP® 1級ファイナンシャルプランニング(FP)技能士。大手企業でSEとして勤務しながらFP資格を取得し、1998年独立系FPに。多くの人のライフプランに携わる。2009年に乳がん告知を受け、自らの実体験をもとに経済的備えの重要性を訴える活動を行う。現在は、各種セミナーの講師、新聞などでの執筆、個人相談など幅広く活動。

1. 70代、80代まで働く時代。「ライスワーク(rice work)」から早期の脱却を

―― 「人生100年時代」と言われるいま、私たちはどのように働くべきでしょうか。

人生100年時代、寿命が延びれば、働く年数が長くなるのも当然のこと。今後は70代、80代まで働くことが一般的になっていくでしょう。そんな時代に重要なのが、よりポジティブに、効率よく働くことです。

そのため、まずは生活の糧を得るための仕事「ライスワーク(rice work)」ではなく、自分が情熱を持ってずっと続けられる「ライフワーク(life work)」で収入を得られるようになりましょう。

「ライフワーク」を見つけて仕事にするためには、自分に「何ができるか」と「何をやりたいか」を整理する “キャリアの棚卸し”をおすすめしています。転職予定がなくても、この2点を常に意識して、チャンスを逃さないことが大切です。

また、年齢を重ねるにつれ、体力が落ちていくことは避けられません。その時に必要なのは、短時間で効率よく収入を得られる「高い専門性」です。労働時間と給与のバランスを意識しながら、スキルを磨いていってください。

もし専門性を高めるのが難しい場合は、とにかく「仕事をやめない」「長期のブランクを作らない」ことを心がけるだけでも大丈夫です。仕事を続けてきた「経験」こそが、将来きっとあなたの強みになります。

2.年収の20%を貯蓄・投資に。「資産寿命を延ばす」努力を

――「マネー」についてはいかがでしょう。どのように貯蓄や投資をすればいいですか。

寿命が長くなるということは、「資産の寿命」も延ばさなければいけないということ。「早く、少しずつ貯める」が鉄則です。これから資産のベースを作るという人は、まず、いざという時のために生活費の半年〜1年分くらいと、子どもの教育費や住宅購入の頭金など、目的が決まっている分を目標に積み立てを始めてみましょう。

その上で、貯蓄・投資に回すべき金額は「年収の20%」が目安です。投資は若い人ほど、仮に損をしたとしても取り戻す時間があるため、挑戦しやすいといえます。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、税制優遇のある商品から調べてみてください。

―― 老後の自己資金はいくら必要でしょうか。試算方法を教えてください。

簡単な方法は、まず日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」で年金の支給予定額を確認し、現在の生活費と比較すること。年金額が下回っていれば、その差額が必要な自己資金になりますよね。例えば、月額5万円不足していれば、年間60万円。老後を20年間とすると、「60万円×20=1200万円」となります。

試算額が膨らんでも、老後の生活を見直すなど、これから調整は可能です。金額にとらわれすぎず、まずは感覚をつかんでみましょう。ライフプランに合わせた、より詳細な年金見込額をシミュレーションしたい時は、「ねんきんネット」にアクセスしてみるのがおすすめです。

3.若いうちから「カラダの声に耳を傾ける」習慣を。メンテナンスで将来の健康に差が出る

―― 健康については、どんな点に気をつければいいですか。

寿命が延びると、必然的に病気のリスクも高まります。だからこそ、早くから健康寿命を延ばす努力やメンテナンスで将来に差が出てくると思います。

定期的な健康診断の受診、生活習慣の見直しに加えて、ぜひ「カラダの声に耳を傾ける」習慣を身につけましょう。まだ若くても、少しでもおかしいと感じたら、必ずカラダを休ませ、必要に応じて病院に行くこと。家族や友人の指摘を聞き流さないこと。早期発見によって、簡単な治療で済む病気はたくさんあります。

また、もしがんなどの大きな病気にかかっても、仕事を辞めるのは待ってください。医療の進歩で、がん治療の多くが通院で受けられるようになっています。働くことは、経済的、精神的な支えにもなります。まずはどんな治療の選択肢があるのか、医師に相談してみましょう。

4.公的医療保険は大きなメリット。自己負担が不安なら貯蓄か保険加入を

―― 医療保険についてはどうでしょうか。いざという時の医療費がどのくらい必要なのか、わからない人も多いと思います。

医療保険を考える上で、まず知っておいてほしいのが、日本は全ての国民が公的な医療保険への加入を義務づけられており、医療費の7〜9割が保険でカバーされるということ。医療保険財政は非常に厳しい状況ですが、フリーアクセスで、どの病院のどの医師にも診察してもらえるというのは、他国と比べても優れた制度だと感じます。

手術、入院で高額な医療費がかかっても、自己負担額が上限額を超えた場合に超過分が支給される「高額療養費制度」があります。上限額は、年齢や所得によって異なるものの、月8万円程度で済む人が多いです。ただし自己申告制なので、申請するために正しい情報を集めることが大切です。

高額療養費制度があると言っても、長期の治療を受けると金銭的負担は大きくなりますし、対象となるのは保険が適用になる医療費部分のみです。一般的に、がんの治療にかかるお金は年間100万円が目安ですので、がんによる経済的リスクに備えたい人は、100万〜300万円ほどの預貯金を用意しておくか、民間保険を利用するのがいいでしょう。

5.心構え:3つの力を意識して、他人と比べない生きかたを

―― 人生100年時代を生きるため、心構えとして大切なことはなんですか?

これまでの話を踏まえて、まずは次の「3つの力」を意識することが大切だと思います。

・「稼ぐ力」=長く専門性を持って働き、短時間で高い収入を得る力
・「殖やす力」=得たお金を貯蓄・投資によってできるだけ殖やす力
・「知って得する力」=公的な医療保険制度の給付金など、自分が得する情報を集めて使いこなす力

これらの力を高めながら、さらに、他人と比較せず、自分の生活に満足すること、健康を意識して生きていくことが大切です。そうすれば、きっと幸せな100歳を迎えられると思います。

***
人生100年時代を楽しく生き抜くため、働きかた、マネー、医療保険などのポイントを教えてくれた黒田さん。

黒田さんも触れていたように、私たちの健康を守るため、公的な医療保険が大きな役割を担っている。だが、高齢化で現役世代から高齢者医療への仕送り「拠出金」が膨らみ、国民皆保険制度の存続が危ぶまれているのをご存じだろうか。

国民皆保険の一端を担う健康保険組合の連合組織である「健康保険組合連合会(健保連)」は、「10万ツイート達成してみんなの声を国会に届けるぞプロジェクト」をスタートさせ、健康保険に関する意見を募っている。ツイートはすでに10万を超えているが、現在も参加可能なので、ぜひこの機会に健康保険制度について考えてみてほしい。
集まった意見は今後、国政に届けられる予定だ。

*1 Human Moratlity Database, University of California, Berkley(USA) and Max Planck Institute for Demographic Research(Germany)
参考文献:リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット著, 池村千秋訳「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略」2016年, 東洋経済新報社

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