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2019年08月19日 17時57分 JST | 更新 2019年08月20日 22時02分 JST

夏休みになったとたん、やせ細る子どもたち。貧困状態にある彼らにとって「生命線」は給食だった

夏休みが始まると、体重を減らしてしまう子どもたちがいる。そんな話を聞いたことはないだろうか?家で十分な食事をとることができていないため、給食がなくなると、成長に必要な最低限の栄養さえとれずにやせてしまうのだ。そんな子どもたちを少しでも減らそうと、NPO法人キッズドアが奮闘している。

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キッズドアで食事を取る子どもたち

夏休みが始まると、体重を減らしてしまう子どもたちがいる。そんな話を聞いたことはないだろうか?   

家で十分な食事をとることができていないため、給食がなくなると、成長に必要な最低限の栄養さえとれずにやせてしまうのだ。

そんな子どもたちを少しでも減らそうと、子どもの貧困問題に取り組んでいるNPO法人キッズドアが、食の支援を行うプロジェクトを立ち上げた。

東京や仙台で運営している5カ所の「居場所型学習会」で食事を提供するため、クラウドファンディングで支援を募っている。 

貧困状態の子ども約280万人

“日本は豊かな国で、海外のことを伝えるニュースで見るような、食事を取れずに飢えている子どもはいない”……多くの人が、そう思っているかもしれない。

けれども、厚労省の調査によれば、ひとり親家庭を中心として、子どもたちの7人に1人、約280万人が貧困状態にあるという。

厚生労働省 平成28年度「国民生活基礎調査」より
貧困状態にある子どもの割合

日本では服装などの身なりが整っていないと親が仕事に就きづらく、子どももいじめにあってしまう可能性がある。

そのため、ひと目で見てわかるような貧困の家庭は珍しく、「見えない貧困」になってしまっているのだ。

「小ぎれいな外見でスマートフォンを持っている子どもがいたら、その子が貧困家庭で育っていると気づくのは難しいでしょう。けれども東京都においては、小学校からの連絡や課題のお知らせもLINEで届くような学校が多い。自分だけが持っていないと仲間はずれにされてしまうこともあります」(キッズドア理事長 渡辺由美子さん)

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キッズドア理事長の渡辺由美子さん

少ない手取りから携帯代や洋服にかけるお金を捻出すると、削れる部分は食費しかない。  

特に収入の少ない母子家庭では、「トリプルワークをしている母親も多い」と渡辺さんは話す。

以前に比べれば、ひとり親世帯への支援制度はできてきたが、まだ始まったばかりの段階にすぎない。

それなりの金額が支払われていると思われがちの児童扶養手当は、子ども1人につき所得に応じて月額最大4万2330円が支給されるシステムだ。

ただし子どもの数が多いと倍になる訳ではなく、2人目は最大1万円、3人目は最大6000円しかプラスされない。

それ以外の補助がある地域もあるが、自治体ごとに違っている。

内容を知るためには直接役所を訪れる必要があるが、1年間ほとんど休みを取らずに働いているひとり親には情報を知るための時間や、申請に向かうための休日さえ確保することが難しい。

勉強どころではない

キッズドアは2007年に設立。それまでは見過ごされてきた国内の子どもの貧困や、東日本大震災の復興支援に取り組んできた。

「私たちが活動をはじめた頃は、貧困家庭で育つ子ども達への学習支援からスタートしました。けれどもサポートをはじめてみると、”いつもお腹が空いている状態”を通り越して飢えている子ども達があまりに多かった。それでは、勉強どころではありません。そこで食事と、リラックスして過ごせる場所の提供をはじめることにしたのです」(渡辺さん)

筆者が取材した日、江戸川区のスペースではスライム作りのイベントが開かれていて、多くの子どもたちで賑わっていた。

イベントは小学生であれば、誰でも参加できる。こうした楽しい経験を通して場所やこの場にいる大人たちに慣れておくことで、いざ食事の支援が必要になった場合でも躊躇せずにご飯を食べに来られる環境を作っている。

渡辺さんは言う。

「江戸川区と足立区はほかの区と比較して、サポートを必要とする家庭が多い傾向にあります。平均的に小学校ではひとクラスにつき5人ほどが、食事を満足に食べられていないと判断され、こちらに通っています。子ども同士の繋がりでご飯が食べられる場所として紹介されることも、行政からでは手が届きにくい子たちへのセーフティーネットの一つです」

キッズドアでは食事提供だけでなく、学習スペースを確保し、一緒に勉強をしてくれる大学生・社会人のボランティアを常に配置している。

けれども、その場を「勉強をしなければいけない場所」として強調しないようにしている。

子どもたちにはまずお腹を満たす食事と、安心できる居場所があることを伝える。

勉強はしてもしなくてもいい。そうして自主性をもつことを知った子たちは、自分で決めて机に向かうようになっていくのだという。

東京、仙台を中心に65カ所ある拠点に通う生徒たちの高校進学率は100%だ(2017年度、221人の実績)。

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学習スペースの入り口

調理する大人の姿を子が見る大切さ

ダブルワークやトリプルワークをしている家庭では、親が早朝に家を出て帰宅は深夜になってしまうことが多い。

そうなると食事は机にお金やパンが置かれていたり、作り置きできるものが冷蔵庫に入っていたりする。

そうした環境で育ってきた子ども達は、誰かが自分のためにご飯を作ってくれる様子を見ないで育つ。

暖かいご飯とはレンジであたためたもので、食卓とはひとりぼっちか兄弟だけで囲む場所だ。

食事支援の場では目の前で大人が調理をする姿を見せ、自分のために作ってもらったご飯を食べる。

食事を介することで、子どもは心を開いてくれるスピードが速くなる。自分について色々と話を聞かせてくれるようになると、行政が想定していたよりも家計が緊迫している状態が判明することや、虐待の可能性を見つけて緊急で児童保護施設と連携することもあるという。

子どもの食費に、行政の補助金が使えない矛盾

一般開放しているイベント以外の食事や学習支援を受けるには、行政への登録が必要になっている。学校や児童相談所などと連携し、サポートが必要な家庭があれば適切なサービスをすぐに提供できる仕組みだ。

キッズドアの活動では参加者の子どもやボランティア、拠点が順調に増えている。

しかし、大きな問題がいつも運営側を悩ませているという。それは、子どもたちに食べさせる食事をつくるための、食費の確保だ。

行政からの委託を受けていることで、NPOの活動自体には支援が行われている。

しかし子どもへ食事を与えるためにその資金を使うことは、「税金を一部の子どもに直接使うことはできない」という理由で禁止されている。そこに飢えている子どもがいるのに、である。 

そこでキッズドアではこれまでの募金に加え、クラウドファンディングで子どもたちの食費に充てるための支援を募ることにした。  

多くの子どもにとっては旅行やイベントが目白押しの夏休みだが、キッズドアが運営する施設に1日も欠かさず毎日通うことで、なんとか日々の食事を確保している子たちがいる。

運営に関わるスタッフは、「小さくなってしまいがちな彼らの世界を、広げていくことに力を尽くしたい」と話す。クラウドファンディングによる支援の受け付けは8月31日まで。詳細はこちら

(小松田久美 /story’s base Inc.)