「労働を強いられた子どもが、“子どもらしく”生きるのは難しい」 NGO理事が日本の子どもに託したいこと

NGO「国境なき子どもたち」理事の清水匡さんは、「“子どもらしさ”というのは、世界共通のようで、実は共通ではない」と指摘した。
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フィリピンの青少年鑑別所。まるで牢屋のような環境で暮らしているのは、まだあどけなさの残る子どもたちだ。

ここにいるのは、罪を犯した子どもたちだけではない。

ある13歳の少女の場合。レイプの被害者で、本来は保護されなければならないのに行き場がなく、次の被害に遭わないために巡り巡ってここにたどり着いた。

そうした少女にマイクを向けて、「なぜこの施設に来ることになったのですか?」と質問をするのは、同じ年頃の日本人の子ども。彼らはNGO「国境なき子どもたち」(KnK)が派遣する「友情のレポーター」で、動画は2017年のフィリピン取材の様子を撮影したものだ。

KnKの理事・清水匡さんが、ジャーナリストの堀潤さんが司会を務めるネット番組「NewsX~8bitnews」4月22日の放送に出演し、その取り組みについて語った。

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「取材するだけでなく子どもたちは一緒に遊んで仲良くなります。仲良くなった相手に、辛い質問をするのをためらったり、聞く前に泣いてしまったりして、なかなか質問できない子もいますが、彼らのほうも泣きながら答えてくれることがあります」

友情のレポーターは、11歳から16歳までの子どもたちが対象。2017年はフィリピン、18年はカンボジアというように、これまでの20年近い活動で64人が派遣された。

友情のレポーターとして、現地での学びはたくさんあるが、参加した子どもたちの一番の変化は、とても身近で基本的な振る舞いなのだという。

「ご飯を残さなくなる、家の手伝いをするといったことを実践するようになります。世界の様々な環境の子どもたちと出会って、自分がいかに恵まれているかを実感して帰ってくるからだと思います。“子どもらしさ”というのは、世界共通のようで、実は共通ではない。子どもが労働しなければいけない環境では、“子どもらしく”生きるのは実は難しいことでもあります」と清水さんは言う。

国境なき子どもたち(KnK)は、現専務理事を務めるドミニク・レギュイエ氏(現専務理事)が1997年に日本で設立したNGOだ。

レギュイエ氏は1983年にフランスの国境なき医師団(MSF)活動に参加。1年間エチオピアで過ごした後、MSFパリ事務所で働く。1992年、日本でMSF日本を立ち上げ、97年に仲間と「国境なき子どもたち」を設立。これまで15の国・地域で9万人以上の子どもたちに教育の機会を提供し自立を支援してきた。

「国境なき医師団は、医師免許や看護師資格が必要で、現場で働くにはハードルが高い。日本の若い人たちが海外に出て国際協力の現場で活躍するには、ハードルを高くしてはいけないと当時の事務局長(レギュイエ氏)が考えて、子どもでも何かできるのではないかと始まったのが国境なき子どもたちの活動です」

そんなKnKでは現在、友情のレポーターの応募受付中だ。5月7日必着で、審査の上で2人が選ばれる。審査員を務めるのは堀潤さんとフォトジャーナリストの安田菜津紀さん。安田さんは10代の頃に初めて自身が友情のレポーターとして海外に行ったことが、今の仕事のきっかけになったという。

「行ってみないと感覚としてわからないことはたくさんある。日本の子どもたちに、外に出てもらってたくさん学んでほしいと思っています」(清水さん)

堀さんは「皆さん、ぜひ世界に目を向けてください」と番組を締めた。

(文:高橋有紀/編集:南麻理江)

堀潤さんがMCを担当する月曜の「NewsX」、次回は5月6日夜10時から生放送。番組URLはこちら⇒

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