小池都政になって「表現の自由」はどうなる?不健全図書指定の運用は、引き続き慎重姿勢を堅持

小池都政に関して、青少年治安対策本部への事務事業質疑から「表現の自由」「不健全図書」に関わる部分についてお話しします。

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

10月から続いてきた

・決算特別委員会

・オリンピックパラリンピック推進対策特別委員会

・総務委員会(事務事業質疑)

の質問ラッシュが、ようやく本日でヤマを超えました…。途中で次女の出産も加わり、6月の「舛添問題」につづいて慌ただしくなった11月でした。

質問の内容は折に触れて順次ご報告していこうと思っているのですが、今日は青少年治安対策本部への事務事業質疑から「表現の自由」「不健全図書」に関わる部分をば。

知事選の時から

「小池百合子氏は、表現規制派なのでは?」

という説が流れており、小池都政が誕生すると過激な(と行政が判断した)作品が恣意的に取り締まられ、表現の自由が侵されるのではないかという懸念が噂されていました。

参考:小池百合子候補の「コミケ応援宣言」、その真意は?表現の自由について直接聞いてきた

東京都には石原都政時代に彼の執念で成立された「東京都青少年の健全な育成に関する条例」というものがあり、この条例に定められている「不健全図書」に作品が指定されてしまうと、事実上の流通規制がかかるという仕組みになっています。

私自身はこの条例による不健全図書指定については、極めて慎重な運用を行うべきとの旨を猪瀬都政・舛添都政の時から提言をしてきたところです。

今回、改めて確認したのは主に以下の2つ。

・不健全図書の二号基準(新基準)

・ネット上の作品に対する取り扱い

まず前者については、不健全図書には認定するための基準が存在していたのですが、平成22年からさらに「二号基準」として新たなものが加わりました。

・強姦や近親相姦を社会的に許されるかのように描いているもの

・性交等に対する抵抗感を弱め、性に関する判断能力の形成を妨げるもの

二号基準とは簡単に言うとこの二点で、特に後者に主観的な判断が入り込む余地が大きいことから、二号基準の濫用が懸念されています。

そして平成24年に初めて、この二号基準が適用される事態になったのですが、当時のことを取り上げたブログ記事には大きな反響がありました。

参考:東京都の『不健全図書』に指定された「妹ぱらだいす!2」を読んでみた

今回の質疑でまず、二号基準は上記の平成24年の1件以外、適用がこれまで他にないことを確認しました。

またテクニカルな点ではありますが、

「一号基準と二号基準、作品が同時に抵触する可能性はあるのか?」

「また仮にあった場合、どのように取り扱われ公表されるのか?」

を確認したところ、両基準に同時に抵触することは理論上ありえるとのことでした。そしてその場合、両方に抵触している旨が審議会でも説明され、そのまま公表されるようです。

ややこしいですがつまり、

「実は二号基準にも抵触していたんだけど、一号基準の方で不健全図書に引っかかったので、表向きは二号基準の不健全図書ではないってことになってます」

という作品は存在しないということなので、やはり都政史上で二号基準が適用されている作品は「妹ぱらだいす!2」ただ一つということになります。

…この作品名、タイピングしているだけで恥ずかしくなるので、なんとかならないでしょうか。。

主観的な要素が大きくなる可能性のある二号基準については引き続き、現在と同様の慎重な運用をしていかれる旨を要望しました。

そして後者のネット上の作品については、現在は条例の対象外となっており、不健全図書に指定される等の可能性はありません。

この点についても、今後条例で規制する予定はなく、あくまでネット上の作品への対応についてはフィルタリングサービスの使用推奨程度に留まることが確認できました。

というわけで、少なくとも現段階においては、小池都政において「表現規制が強まる!」といった心配はないと思います。

コミケ応援宣言に象徴されるように、むしろ若年層の創作活動を促進する規制緩和(=放ったらかし)が行われるよう、引き続き政策提言をしていきたいと思います。

最後にオマケで、不健全図書に関わる部分の質問・答弁要旨を掲載しておきます。

質問マラソンを完走したご褒美に、明日はちょっと長めに寝よう!…が、次女が寝かせてくれないかな。。

それでは、また明日。

【以下、質問内容】

・ 初めに、東京都青少年の健全な育成に関する条例の中から、不健全図書の指定について伺う

・ 主に子どもたちに有害な内容を含む図書を触れさせないという趣旨で行われている不健全図書の指定であるが、ともすれば表現の自由を犯しかねないものであり、その運用には極めて慎重な配慮を必要とする

・ その観点からいくつか伺っていくが、2014年に初めて新しく定められた第二号基準による不健全図書が指定された

・ 第二号基準は「性交等に対する抵抗感を弱め、性に関する判断能力の形成を妨げるもの」など、曖昧かつ主観的な部分が含まれることから、さらなる慎重な運用が求められる

問1

そこで、2014年に初めて第二号基準によって不健全図書が指定されて以降、第二号基準によって不健全図書に指定されたものはあるか伺う。

答1

・平成26年5月16日付で告示の1誌を指定した以降、指定の例はない。

問2

では次に一号基準と二号基準、両方に同時に抵触するということはありえるのか。ありえるとすれば、どのように公開されるのか。所見を伺う。

答2

・ 条例上、ひとつの図書類が両基準に該当する可能性はある。

・ 不健全図書類として指定する際は、該当条項及び理由を明示した上で青少年健全育成審議会に諮問し、審議の内容については議事録を公開する。また、不健全図書類に指定した際も、該当条項及び理由を明示した上で東京都公報において告示

問3

・両基準に該当する場合も含めて、二号基準に該当するものについては平成26年以降、発生していないことが確認できた

・表現の自由を尊重する観点から、二号基準については引き続き慎重かつ適切な運用を求め

・ 次に、東京都青少年健全育成審議会の情報公開について伺う

・ この議事録において、委員の名前が匿名化されていることに疑義が生じている

・ 他の地方自治体では公開されているケースもあり、都も積極的な公開をするべきと考えるが、見解を伺う。

答3

・ 審議会の議事録は、議事録自体を非公開とする県や、概要のみを公開とする県があり、また、公開している県でも委員の氏名の公開・非公開の取扱いについては、様々な状況になっているという現状

・ 都においては、審議内容は、議事録の公開により透明性を十分に確保するとともに、委員が自由に発言できる環境を担保した上で審議する必要があるため、氏名の一部を非公開

問4

・ この点については何度か指摘させてもらっている通り、氏名の公開が自由な発言を妨げるものになるかどうかという点については疑問

・ 表現規制にかかわる分野については、何より情報公開によって信頼性を高めることが必要であることから、情報公開に積極的な先進自治体の例にならって改善されることを要望する

・ 最後に、不健全図書指定におけるネット上の作品について確認する

・ 現在、不健全図書の対象は書店などの流通に乗るもののみで、インターネット上の作品は対象になっていない。この方針は今後も維持されるのか、所見を伺う。

答4

・ 東京都青少年の健全な育成に関する条例で不健全図書類として指定する図書類は、販売もしくは頒布、または閲覧もしくは観覧に供する目的をもって作成された書籍、雑誌、文書、図画、写真、ビデオテープ、データを記録したCD―ROMなどと規定していることから、インターネット上で閲覧する作品は、条例の指定対象外

・ 一方、インターネット上の有害情報については、インターネット接続役務提供事業者に対し、インターネット接続役務に係る契約を締結するに当たって青少年が利用する場合は、青少年有害情報フィルタリングサービスの利用を勧奨するよう努めること等としている。

【所見】

・有害情報についての懸念は理解できる一方で、行政による過剰な干渉は表現者の萎縮を招きかねない

・特にインターネット上は自由な表現空間が最大の魅力であり、それが失われないように現状が継続されることを強く求める

以上

(2016年11月22日「おときた駿オフィシャルブログ」より転載)

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