「鳥獣戯画」の寺に台風被害。世界遺産の京都・高山寺が復興に向けてクラウドファンディング

「鳥獣戯画」で知られる京都・高山寺は、2018年9月の台風21号で、金堂が半壊するなど大きな被害を受けた。
巨木が倒れて半壊した金堂=高山寺提供
巨木が倒れて半壊した金堂=高山寺提供

国宝「鳥獣人物戯画」(鳥獣戯画)で知られる栂尾山高山寺(とがのおさん・こうさんじ)。

京都市右京区にある古刹で、創建は奈良時代にさかのぼるともいわれている。

紅葉の名所としても有名だが、2018年9月の台風21号で、境内のスギやヒノキが300本以上倒れ、金堂が半壊するなど大きな被害を受けた。復旧工事には億単位の費用が必要で、クラウドファンディングで支援を募っている

石水院廂の間。影になっているのは善財童子像=高山寺提供
石水院廂の間。影になっているのは善財童子像=高山寺提供

鎌倉時代初期の1206年、後鳥羽上皇から寺域を賜った明恵上人が名を「高山寺」として再興し、それ以来、学問寺として栄えた。1966年には国の史跡に、1994年には「古都京都の文化財」として、ユネスコの世界文化遺産にも登録されている。

寺には平安・鎌倉時代の典籍を中心に、国宝・重要文化財あわせて1万2千点あまりが伝わっている。ウサギやカエルなどの動物を擬人化した絵が有名な鳥獣戯画も、その一つだ。

鳥獣戯画=高山寺提供
鳥獣戯画=高山寺提供

竜巻のような強い風が境内を襲い…

2018年9月の台風21号は、各地に大きな爪痕を残した。高山寺では、竜巻のような強い風が境内を襲った。時間にすれば30分程度だったというが、樹齢100~300年のスギやヒノキが次々と倒れ、本尊の釈迦如来を奉る金堂は半壊した。明恵上人座像が安置された開山堂や宝物の収蔵庫、鎌倉時代から伝わる石築地やその地盤なども深刻な被害を受けた。

巨木が倒れ、境内は大きな被害を受けた=高山寺提供
巨木が倒れ、境内は大きな被害を受けた=高山寺提供

現地では、ヘリコプターを使って倒木を搬出するなど、災害直後から懸命な復旧作業が続いている。

半壊した金堂は大規模な修繕が必要で、開山堂も屋根を全面的に葺き替える必要がある。倒壊した仏足石の覆屋は、一から復元しなくてはならない。石築地や地盤が崩壊した表参道は、地盤を築き直し、一つ一つ石を積み直していく必要があるという。

ヘリコプターによる倒木の搬出作業=高山寺提供
ヘリコプターによる倒木の搬出作業=高山寺提供
修復が進む高山寺金堂の屋根=朝日新聞社撮影
修復が進む高山寺金堂の屋根=朝日新聞社撮影

クラウドファンディングに踏み切った理由

台風によって大きな被害を受けたのは、高山寺の長い歴史でも初めてのことだという。

復旧にかかる費用は総額4億8千万円以上にのぼる。国庫補助や各方面からの支援もあるが、1億円ぐらいは寺の自己負担が必要になる見込みだ。少しでも資金を集めるために、高山寺ではクラウドファンディングに踏み切った。

「今回大きな被害を受けましたが、明恵上人の遺構である国宝・石水院は難を免れ、境内には豊かな自然や修行跡地がまだまだたくさん残されています。災害からの復興を通じて、改めて上人の息吹が感じられる寺にしていきたいと考えています」

「2031年は、明恵上人800回忌にあたります。当山一同、御遠忌までを目標に整備に努め、精進いたす所存でございます。当プロジェクトによってご縁を賜りました皆様とともに復興を進められれば、幸甚の限りでございます。皆様のご支援ご協力のほど何とぞよろしくお願い申し上げます」

今回のクラウドファンディングでは支援額に応じて、鳥獣戯画をあしらった限定のお守りや朱印帳、鳥獣戯画甲巻の原寸大複製などの返礼品が用意されている。

鳥獣戯画をあしらった朱印帳=高山寺提供
鳥獣戯画をあしらった朱印帳=高山寺提供

クラウドファンディングによる支援の受付は12月28日まで。詳細はこちら。

(朝日新聞社 伊勢剛)

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