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2019年05月13日 12時09分 JST

交通事故で子どもが犠牲に…親たちの「心の傷」へのサポートは

滋賀県大津市で園児2人が亡くなった交通事故を受けて、交通事故で家族を亡くした経験がある人たちが、遺族の「心の傷」への配慮の重要性を指摘している。

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  滋賀県大津市で園児2人が亡くなった痛ましい交通事故。事故原因の究明、安全対策、マスコミによる取材のあり方など様々論点が、もう一つ、考えなければならないことがある。それが被害者をはじめ、事故に関係した人々の心の傷である。
 

■長女とお腹にいた孫を失った中江さん「苦しみは悪化するもの」

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 かつて交通事故で長女とそのお腹にいた孫をも失い、現在も心の傷と闘っている中江美則さんは「穏やかな心には戻れないし、心底笑えることはない。人様をみて羨んだりもしてしまう」と話す。車を運転していたのは無免許の少年で、夜通し遊んだ末の居眠り運転が事故の原因だった。事故後、中江さんたちは悪質な運転による事故の厳罰化を求める活動を続け、2013年11月には「自動車死傷行為処罰法」が成立した。しかし、活動中には心身の変調を来した。医師の診断は「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」で、薬の服用を勧められたという。様々な論点があるが、もう一つ、考えなければならないことがある。

 
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 大津市の事故について中江さんは「苦しみは悪化するもの。若いお父さん、お母さんが耐えていけるのか心配になるばかりだ。正直にその人が”苦しい”と言える状況を作ってあげるべきだと思う。正直に”助けて!”と言える瞬間というのを。大津のご遺族…”ご遺族”と、いうのがまた辛くなる。まだ葬儀も終わってないのに。見送ってもないのに。だから、そういうふうな報道は少し控えてあげてほしい。何で僕らだけで終わらなかったのかなと…」と、涙ながらに語った。

 中江さんを悩ませた「PTSD」は、深刻な心の傷(心的外傷)や大きなストレスを受けたあと、フラッシュバック、めまい、頭痛、不眠、うつ状態などが続く障害だ。「犯罪被害者等施策講演会」の資料(2005年)によれば、交通事故などの被害者のうち75.5%がPTSDを発症している。ただ、これは被害に遭った本人の数値で、周辺の関係者も含めると、より多くの人が悩み、苦しみを抱えていると考えられる。

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 交通事故で大学生だった息子を亡くし、現在はNPO法人「いのちのミュージアム」代表理事として被害者家族の支援活動を行う鈴木共子さんは「私の場合もそうだが、家族だけでなく、悲しみが放射線状に広がっていくと感じている。PTSDという名前が付くわけではないが、症状は皆が抱えている」と指摘、「自ら動いて、助けを求めるということもとても大事だと思っている」と話す。

 「私も当初は事故を振り返ることでフラッシュバックすることがあった。あれから19年が経つが、今だに事故が起きた桜の季節になると情景が蘇ってきて苦しくなる。私達は”命日病”と呼んでいるが、何年、何十年と経とうが、それを皆さんが抱えながら生きていて、回復はあり得ないだろうと思う。また、最初は加害者に対する罰則強化の署名活動を展開した。それはまさに怒りがエネルギーになって、行動できたと思っている。ただ、怒りを持ち続けるのは辛い部分がある。今は許すでもなく、憎むでもないという心境だ」
 

■「日常の手助けがありがたいはずだ」

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 2005年、バイクで通勤中にトラックと衝突した長男(当時18)が意識不明のまま植物状態となり、4度の手術を行うも1年半後に死亡したKさんは、「悪いことをしなければちゃんと生きていけるんだと思って生きているはずが、全てが間違っていたのかなと思う。地面があるのが当たり前だが、それが突然崩れたような感じだった」と振り返る。

 「被害に遭った子どもに意識が集中しているので、自分のことは二の次、三の次だった。加害者のこともどうでもよく、子どもを何とかしなきゃ、ということで精一杯だった。事故直後は警察、病院などの対応に追われる。すごく緊張しているので、眠れなくても当たり前だと思ってしまう。次男に対しても、”あなたは生きているからいいでしょ”とほったらかしになってしまった。そして、自分も半年くらい経つと胃が痛くなったり、眠れなかったり。それでも自分のことを構っている暇はないので、体調の悪さが長引いていった」。

 仕事ができない、考えがまとまらない、食欲も味覚もない、見る風景も色がない。そして2011年、PTSDなどの診断を受けた。今も症状は続いている。「朝・昼・晩とニュースが流れて、インターネットでもYahoo!ニュースを開くとバンと出てくるが、怖くなってしまい、足がガクガクする。だから今のような時期はニュースを見ないようにしている」。

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 日常を取り戻せるようになったのは最近になってからだというKさんは「今はパニック状態で、日常生活が送れていない状況だと思う。何が現実で、私たちに何が起こってどういう状況にいるのかが把握できないと思う。ご飯を食べられているかな?寝れているかな?お風呂に入れているかな?着替えができているかな?と心配になる。小さな妹さん、弟さんがいらっしゃったら、その子たちの面倒を見られているのかな、とも思う」と、大津事故の関係者を慮る。

 「日常のことが後回しになっているので、ゴミ出しをしてくれるとか、ペットがいたら散歩をしてくれるとか、そういう手助けがありがたいはずだ。ただ、声をかけるのは難しいと思う。私も傷つけてしまうことがある。”頑張りなよ”と言っても、”どう頑張るのよ”、と。私はNPO法人『交通事故後遺障害者家族の会』に所属している。同じような被害者団体、自助グループとつながると話しやすかったりとか、気持ちを言葉にしなくても分かってくれたり、ケガの状況を分かりやすく教えてくれたりして、それはすごく助かった」。
 

■「誰でもコメントできるわけではない」

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 作家の乙武洋匡氏は「保育園側の記者会見が非常に話題になって、メディアが事故報道、家族の方とどのように向き合っていくのかが問われている。取材をすることで悲しみをより深くさせてしまうこともあるが、悲しみをきちんと伝えることがドライバーの方々への注意喚起につながるという側面もある」と問いかけた。

 鈴木さんは「私自身は怒りがあったが、冷静にコメントを出せている自分もいた。後から考えてみて、それが今の自分につながっていると思える。非常に辛かったと思うが、大津のご遺族がコメントを出された勇気に私は心を動かされた。敬意を表したいし、エールを送りたいと思う」、Kさんは「この擦りガラスが私の気持ちを表している。過失が問われたことに対し、親としての自責の念がすごく、恥ずかしいと思う。私の育て方が悪かったのかとか、躾が悪かったのかもしれない、もっとこうしていればと。ヘルメットがハーフではなく、フルフェイスだったら、と。だから誰でもコメントできるわけではない」と胸の内を明かした。

 テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「あの映像を見たことで、保育園に何か責任があるように受け止めてしまっている方も多くいるようだ。報じ方も非常に難しい。映像の使い方に節度もないといけない。悩ましいところがある」と話していた。AbemaTV/『AbemaPrime』より)
 

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