#KuToo呼びかけの石川優実さんに飛び交う理不尽なバッシング。当人が思い語る

「自分は芸能の仕事をしていたので、バッシングに慣れているというか、言い返すことができる。これが一般の女性だったら多分会社を辞めなきゃいけなくなっていると思うし、精神面もすごく辛いと思う。そういう女性を増やしたくない」
#KuTooを呼びかけた石川優実さん
#KuTooを呼びかけた石川優実さん
CHARLY TRIBALLEAU via Getty Images

職場でのパンプスやヒール着用を強制しないでほしい。署名活動「#KuToo」に賛同の声が広がっている。

6月11日、東京・永田町の衆議院議員会館で「パンプス押し付けにさよなら!緊急院内集会」が開かれ、プロジェクトを立ち上げた石川優実さんや労働問題の専門家、厚労省の担当者らが出席。パンプス強制をめぐる問題をどう解決していけば良いかを話し合った。

声をあげた石川さんは、ネット上で理不尽なバッシングにも晒されている。「自分が我慢しているからお前も我慢しろ、という意見の方もいた。みんなで楽になる方、楽しく過ごせる方、心地よく健康に過ごせる方を目指していくのがいいと私は思います」と話し、「(賛同している人が)みんなで協力しあってやっていけたら」と訴えた。

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就業規則で義務づけも。「#KuTooは性差別の問題」

「#KuToo」は、「#MeToo」と「靴」、「苦痛」をかけ合わせた言葉だ。

この運動で石川さんは、職場で靴ずれが起きやすいヒールやパンプスの着用を強制することや、パンプス着用が「マナーや常識」だとみなされる風潮に異を唱えている。

6月3日には、企業でのヒール・パンプス着用の義務づけを禁止するよう求める要望書を、約1万8800人の署名とともに厚労省に提出した。11日時点で署名への賛同者は2万7000人を超えている。

#KuToo問題の根本にあるのは「性差別」であり、「ジェンダーの問題」。石川さんはそう訴える。

「もちろん健康の問題でもあり、労働環境の問題でもあると思うんですが、まず男性と女性の履物が違うことは、忘れずにいてほしいです」

労働法や職場のハラスメント問題に詳しい労働政策研究・研修機構の内藤忍さん(副主任研究員)も、「世の中がこの問題は差別だということをわかっていないのでは」と指摘する。

性差別の定義を「特定の属性の人や集団に対して、他の属性の人や集団より不利益を与えること」と説明した上で、「パンプス・ヒールの着用は、健康リスク・災害リスクという意味で、フラットな男性靴よりも不利益性が高いのは明らか」と話した。

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Lorraine Boogich via Getty Images

厚労省の「パンプス強制を容認」問題、見解は?

「#KuToo」は国会でも取り上げられた。

6月5日の衆院厚労委員会で、根本匠厚生労働相は「足を怪我した労働者に必要もなく、着用を強制する場合などはパワハラに該当しうる」と答弁。

一方で、女性へのヒール・パンプス着用指示や義務づけについては、根本氏は「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」との見解を示した。この内容をめぐり、「パンプス強制を事実上容認しているのではないか」として報道が二分していた。

今回の院内集会には、厚労省雇用機会均等課の担当職員も出席。

根本氏の答弁について、「パンプスの強制を容認したかのような報道もあったが、そういうことを言いたかったわけではない」と説明。「健康被害がある中でパンプスを強制することは適当じゃない。怪我をしているのに、本人が嫌がっているのに強制することはパワハラになりうる」と改めて述べた。

一方で、パンプス強制をパワハラではなく「性差別」の問題として扱うことについては、「現行のルールでは対応できない」という。

男女雇用機会均等法では募集や採用など、雇用の分野での性差別を禁じているが、「現行の解釈では服装の違い、あるいは服の中身の違いで(男女の処遇の違いを)禁止するという議論が法律の中にない」と話した。

石川さんに理不尽なバッシングも

接客業や就活中の女性など、多くの人がヒール、パンプスを履かなくてはいけない環境に置かれ、悩みを抱えている。もちろん自由な服装を認める会社も増えてきたが、職場によっては、就業規則で厳しく服装を規定されている人もいる。

BUSINESS INSIDERのアンケート調査では、回答者205人中、6割を超える140人が「職場や就活などでハイヒール・パンプスを強制された、もしくは強制されているのを見たことがある」と回答した。

「#KuToo」は、こうした性差別に基づいた処遇の違いをなくし、誰もが履きたい靴を履ける社会を目指す運動だ。しかし、発起人である石川さんには、「会社に直接言えばいい」などと非難する声や、「ヒールを履いたらダメなのか」と誤解に基づくコメントが寄せられている。

なかには、石川さんが勤める葬儀社を突き止めようとする人もいたという。

石川さんは、声をあげた人の「粗探し」をするようなネット上の空気によって、「結局問題が解決せずに終わっていくのでは」との懸念も吐露。以下のように訴えた。

「自分は芸能の仕事をしていたので、バッシングに慣れているというか、言い返すことができるんですが、これが一般の女性だったら多分会社を辞めなきゃいけなくなっていると思うし、精神面もすごく辛いと思う。そういう女性を増やしたくないので、賛同してくださっている方がいたら、みんなで協力してもらえたら」

「どうしてもバッシングの方に目がいってしまって、怖かったんですけど、これだけ集まってくれる人もいる。同じ思いの人がたくさんいてくれるということがわかるので、こういう集会を開いてくださってありがたいです。みんなで協力しあってやっていけたら嬉しいです」

石川優実さん
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