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2019年04月05日 11時27分 JST | 更新 2019年04月05日 11時27分 JST

LGBTに関する「モデル条例」が豊島区で成立。地方から加速するパートナーシップ制度や差別禁止条例の広がり

渋谷区・世田谷区で初めて導入されたパートナーシップ制度が、全国に広がっています。

新元号「令和」が発表された4月1日。新たに9つの自治体で、LGBTのカップルを承認する「パートナーシップ制度」が施行された。

これまでに導入済みの自治体と合わせると、「20」の自治体でパートナーシップ制度が導入されたことになる。

さらに3月末には茨城県、東京都豊島区でLGBTに対する差別禁止を盛り込んだ条例が成立した。特に豊島区の条例は、LGBTへの差別禁止、パートナーシップ制度、アウティングの禁止、SOGIハラの規定も盛り込まれており、近年の自治体のLGBTをめぐる「モデル条例」と言えるだろう。

国会では、自民党がLGBT理解増進法案の骨子を党本部で了承し、条文化に入ったと報じられた。4月には統一地方選、7月には参院選を控える中、特に自治体を中心にLGBTを取り巻く法整備の動きが加速している。

 

パートナーシップ制度導入自治体は「20」に

地域からパートナーシップ制度導入を求めてきた「自治体にパートナーシップ制度を求める会」によると、4月1日時点で「パートナーシップ制度」を導入している自治体は20になった。さらに、導入を予定している自治体を合わせるとその数は約30になり、導入を検討している自治体まで合わせると50を超える。

fairより
「自治体にパートナーシップ制度を求める会」より

導入済み・予定・検討中の自治体の推計人口を合算すると約3000万人になる。つまり、日本の人口のうち約2割が住む自治体で、パートナーシップ制度が利用できる可能性がある。

2015年11月に、東京都渋谷区・世田谷区で初めて導入されたパートナーシップ制度。まさにオセロが裏返るように、加速度的に全国に広がっている。

 

広がるLGBT差別禁止条例

2019年3月、茨城県と東京都豊島区で「LGBTへの差別禁止」が条例で明記された。これは、2018年3月に東京都世田谷区で成立したLGBTや外国人への差別を禁止する条例や、10月に東京都で施行された人権尊重条例の影響が大きいだろう。

茨城県は当初、条例にパートナーシップ制度も盛り込む予定だったが、最大会派のいばらき自民党の反対によって導入されなかった。差別を禁止する規定は問題なく取り入れられ、都道府県としては2例目となった。

差別禁止は、あくまで「LGBTであることを理由に差別してはいけない」という基本的なルールを示しているにすぎない。しかし、基本だからこそ「差別してはならない」と明記することで、行政として差別や偏見に対処し、当事者を守り、啓発や理解を促進できる。

実は、パートナーシップを初めて導入したことで注目が集まった渋谷区の条例にも、同様の規定は入っている。他にも、東京都多摩市、和歌山県橋本市、兵庫県宝塚市などで差別禁止規定は盛り込まれている。

 

「男女共同参画」条例の改正

パートナーシップ制度や、東京都の人権尊重条例など、「新しい仕組み」として扱われた方が世の中からの注目が集まりやすいかもしれない。一方、今年3月の茨城県や豊島区の条例は、「男女共同参画推進条例」の改正によってLGBTへの差別禁止などが取り入れられている。

この条例は、1999年に「男女平等」を目的として施行された「男女共同参画社会基本法」が根拠となり自治体で施行されている条例だ。

残念ながら男女格差を表すジェンダーギャップ指数で110位と低迷している日本では、女性が平等に扱われているとは言えない。国会議員や民間企業のトップ層に女性を増やしていく必要がある。

しかし、そもそも性のあり方は女性/男性と二分化できるものではない。「女性」という枠の中にも多様性はある。「女性」が平等に扱われることと同時に、そもそも性のあり方は多様であるという前提で制度を整えていくことも進めていけるはずだ。

 

「モデル条例」となった豊島区条例

特に豊島区で成立した男女共同参画推進条例の改正案では、LGBTへの差別禁止、パートナーシップ制度、アウティングの禁止、SOGIハラの規定も盛り込まれており、近年の自治体のLGBTをめぐる「モデル条例」と言えるだろう。

豊島区条例の4つポイントは以下だ。

1.「性別」の定義に性的指向・性自認を含む

改正前の条例で「性別」としていた所を「性別等」にし、その定義として生物学的な性別、性自認、性的指向を含むと明記することでLGBTの存在を含んでいる。つまり、既存の「男女共同参画」という概念の中にSOGIが含まれるようアップデートしたと言う意味では、非常にエポックメイキングなことと言えるのではないか。

2. LGBT差別禁止規定

差別の禁止については、条例の第7条で以下のように規定されている。

「何人も、家庭、職場、学校、地域社会などあらゆる場(以下「あらゆる場」という。)において、性別等による差別的取扱いその他の性別等に起因する人権侵害を行ってはならない。」

ポイント1の通り、「性別等」の中に性的指向・性自認が含まれるため、LGBTに関する差別禁止が含まれる。

さらに、苦情処理委員会に申し出れば、必要によって調査が行われ、関係者に対する助言や指導、人権侵害の是正の要請がされるなど、実効性も一定担保されることになる。

3. パートナーシップ制度

条例の第8条の2で、区長はパートナーシップの届出に対して受理証明書を交付することができると示している。

パートナーシップ制度を導入している他の多くの自治体では、条例ではなく「要綱」によって、パートナーシップの宣誓書の受領書を発行している形だ。これは、首長の権限で法令の範囲内における行政の事務的な取り扱いを決められる制度。法的な拘束力はないため、残念ながら首長が変わると制度がなくなってしまう可能性もある。

一方、条例でパートナーシップの届出に対し受理証明書を発行するルールは、制度として明記されるため、首長が変わっても基本的に運用は変わらないことになる。

4. アウティングの禁止

豊島区の条例では、その人の性自認や性的指向を本人の同意なしに公表することを禁止している。さらに本人のカミングアウトを強制または禁止してはならないとも規定している。

アウティングについて広く知られるきっかけとなった一橋大学が置かれている国立市で2018年4月に施行されたアウティングを禁止する条例を踏襲した形になっている。

5. 性的指向・性自認に関するハラスメント(SOGIハラ)を規定

条例では、セクシュアルハラスメントの中に、性的指向や性自認に関する偏見に基づく言動(SOGIハラ)も含まれることとなった。

条文では以下のように記載されている。

「セクシュアル・ハラスメント(性的な関心又は欲求に基づく言動をいい、性別により役割を分担すべきとする意識、又は性自認若しくは性的指向に関する偏見に基づく言動を含む。)又は婚姻、妊娠、出産、育児若しくは介護に関するハラスメント及び配偶者、パートナー若しくは交際相手である者又はあった者に対する暴力的行為の防止を図るとともに、これらの被害を受けた者に対し必要な支援を行うこと」

fairより
豊島区議会2019年x月xx日fairより転載

自治体の動きに遅れをとる国の法整備

視点を国レベルの法制度の動向に向けてみると、自民党の特命委員会がLGBT理解増進法の骨子案を党本部に説明し通過。これから条文化に入り、その後与野党で交渉するフェーズに入るという。

骨子の内容を見る限り、「国はLGBTに関する基本方針をつくり、教育や広報でLGBTについての理解を広げる。企業はこれに協力し、研修したり相談窓口を作る等が盛り込まれている。しかし、あくまで努力が求められる規定のため、なにもしなくてもお咎めはない」というものだ。

確かにLGBTの存在を認知するという意味では一定の価値はある。しかし、法的な拘束力もなく「努力してね」というものに実効性はあるのだろうか。

さらに、法律がない現状でも、LGBT施策に取り組む企業は増え、一部LGBTについて取り上げる教科書も出版されるようになってきた。こうした理解を進める動きに加え、国に先行して差別禁止を条例で規定する自治体も広がりつつある。

パートナーシップ制度も加速度的に広がっているが、残念ながら自治体の条例は法律の範囲を超えられないため、法的な効力はない。本来は国の法律で同性婚が認められていれば必要のない制度だ。

先日、ILGA(国際レズビアン&ゲイ協会)が発表した報告書によると、世界では約134ヶ国で性的指向による差別から法的に保護されることを規定している。さらに26の国と地域で同性婚が認められている。

実効性のある法整備のために、動いてくれる議員を増やす

日本でも、2月14日に同性カップルが結婚できないことは違憲だとする訴訟が全国で提起された。同性婚の訴訟を勝ち抜くためには、裁判官に判断してもらうために世論を盛り上げていく必要がある。

今月は統一地方選挙、7月には参院選も控えている。どちらも出馬を表明しているLGBTの候補者も現れている。

差別をなくすための実効性のある法律や、同性間のパートナーシップを保障する法律をつくるためには、私たち一人一人が、法整備のために動いてくれる国会議員に投票し、実現のために力を尽くしてくれる議員の数を増やさなければならない。

(2019年4月4日fairより転載)