ライフとワークの一体化、脱サラして起業した後の変化

サラリーマンから起業するまで

こんにちは、今西由加です。今回のコラムのテーマは、ズバリ起業家人生について! 43歳で脱サラ(!)して起業した経緯と、起業してから自分自身と家族にどんな変化があったのか振り返ります。

サラリーマンから起業するまで

大学を卒業してから起業するまで、私はずっとサラリーマンとして働いてきました。転職を3回繰り返し、合計4社でマーケティングや広告コミュニケーション、PRに関わる仕事してきました。

サラリーマン時代、将来は起業したい! という明確な考えはなかったものの、

「このまま会社員を続けるのかな。こういう働き方が自分にはあっているのかな。」

とぼんやり考え始めたのが3社目の会社に転職する前でした。

とはいえ、自分でやりたいことが明確にあったわけでもなく、第二子が欲しいと思っていたことから、起業するという大きな変化を起こすには至ることなく、3社目、4社目と転職を重ねたのです。

転職を重ねる中でも、第二子を授かるための不妊治療も行っていました。ただ、年齢的なこともあり、なかなか子どもを授からず、授かっても妊娠を継続できずに流産を繰り返したことから、夫と相談して第二子を諦めたのがちょうど40歳になる前でした。

不妊治療もやめて、精神的にも少し余裕が出てきたときに、たまたまインターネットで見つけたのがアメリカの通信教育サービス「Little Passports」でした。

世界各国のお土産や写真、国紹介のレターなどを毎月子ども達に届ける、というサービスです。

それを見たときにすぐ、「私がやりたいのはこういうサービスだ!」と盛り上がり、すぐに保育園のママ友に連絡をしました。

保育園で仲良しだったママ友とはいつも、「子ども達には世界に目を向けて欲しいよね。異文化とか多様性を経験できる環境が与えられるといいよね」と話していたので、きっと共感してくれると思ったからです。

案の定、彼女はすぐに「面白そう! やってみよう」と言って、そこからはトントン拍子に話が進みました。

ただ、実際のサービス立ち上げは、トントン拍子というわけには行かず、紆余曲折を繰り返しながら、少しずつ、少しずつ前に進めた感じです。

会社勤めをしながら起業に向けて準備をするというスタイルを選んだので、二足のわらじで約1年間活動しました。

すぐにサラリーマンを辞めて、自分の会社だけに注力しなかった大きな理由は、収入面のリスクヘッジでした。

大学卒業して以来、常に自分の収入があり、経済的に自立していた私にとって、一時的にでも収入がなくなるという恐怖は簡単には拭えないものでした。ただ1年ほど二足のわらじでやってみて、やはり自分のやりたいことにドライブがかけられない、制限がかかってしまうという状況をもどかしく思うようになったのも事実です。

そこで思い切って夫に「サラリーマンをやめて自分の会社に注力しようと思うんだけど」と相談したら、間髪いれずに「いいんじゃない? やりたいことはやったほうがいいよ」とあっさりと言われました。収入がなくなる不安も伝えたのですが、「それは人生の中で一時的なことだよね。起業して学べることがたくさんあるんだから、少しの間収入がなくなっても、全く問題ないんじゃない? 俺が働いて、定収入があるわけだし」という回答。

その言葉に背中を押されて最終的にサラリーマン辞める勇気が出ました。

思考・仕事時間・スケジュール、起業後の様々な変化

こうしてサラリーマンを辞めて起業したわけですが、起業後も色々なことが起こり、試行錯誤を経て最初に立ち上げたサービスは、留学生を家庭教師やシッターとして日本のご家庭に紹介するサービスでした。

このサービスは、私自身の経験からアイデアが生まれました。ホストファミリーとして数十カ国の学生を受け入れてきた我が家。子どもにとって様々な国の人たち、異文化や生きたが外国語に小さい頃から触れるのは貴重な経験だと考え、積極的にホームステイを受け入れてきました。

おかげで、世界各国に友達ができて、誕生日にはメッセージを送ったり、クリスマスにはカードを郵送したり、交流を続けています。そういう体験から、子どもが異文化に興味を持つようになったのと同時に、みんな違って当たり前という感覚が身についてきたと思います。

我が家のこのホストファミリーの経験を周りのママ友に話すと、みんな口を揃えて「うちもやりたい!」と言いました。小さい頃から子どもに英語習わせているご家庭も多く、生きた言葉として英語を話す機会を作るためにも、ホームステイは良いチャンスです。

ですが、ホームステイを受け入れるには、ゲストのために一部屋開けなければならず、朝晩の食事も準備しなければいけません。東京の住宅事情考えると一部屋まるまる開けるのは困難であると同時に、共働き家庭にとって毎日2食をゲストのために準備するのは大きな負担です。

そこで、そんな課題を解決するサービスを作ったら需要があるのではないかと思って作ったのが、約1年前にスタートしたグローバルシッターサービス「chezmo family」(シェズモファミリー)です。

ご家庭に紹介する留学生をどうやって確保するのか、ご家庭でどんなアクティビティを行うのか、オペレーションはどうやって回していくのか等、サービスを始める前に確認しなければならないことが本当に沢山ありました。それを一つ一つクリアしていき、やっとローンチとしたのが約1年前。すばらしいお客様達に恵まれ、様々なフィードバックを頂きながら、少しずつサービスが大きくなっています。登録留学生の数も200名を超え、30カ国以上の多様な学生たちが関わってくれています。

色々な大学に実際に足を運んだり、留学生のイベントに参加するという、とても地道な活動を続けたり、経理から資料作成、営業からPRまで、全てを自分でやらなければいけないなど、苦労は確かにあります。起業に関する華やかな部分があるとしたら、それは本当にほんの一部で、実際は日々のスモールステップの積み重ねです。

しかし、起業したことにまったく後悔はありません。今まで触れることのなかった世界、会うことのなかった人達、気にもとめていなかった社会の動きに敏感になることができて、日々勉強になることばかりです。また、起業を通じて、自分の可能性や世界が広がったと感じています。まだまだ道半ばで、前に進むためには様々な困難が待ち構えていると思いますが、そのプロセスを楽しめる自分に出会えたことも大きな収穫だったと思っています。

サラリーマン時代はほとんど残業をしていなかったので、スケジュール的には規則正しい生活でした。家事や子育てに関しても、比較的回しやすい状況だったと思います。起業してみて、自分の時間を自由にコントロールできるようになったものの、ライフとワークがより一体化し、基本的には常に仕事しているような感じです(ライフとワークの境界線が曖昧、といった方が正しいかもしれません)。やるべきタスクが多いので、やってもやっても終わらない感覚にもなります。意識して休みを作らないと、やりすぎる傾向にあるため、週末はできるだけ外に出かけたり、深夜まで仕事しないなど、自分のルールを持つ必要があると感じています。

一方で、毎日同じ場所に行く必要がないため、パソコンさえあれば自由にどこででも仕事ができるのは大きなメリットだと思います。また、行きたいイベントや会いたい人とのミーティングなど、フレキシブルに動けるようになったのも起業をしてからです。子ども関係のイベントやPTAのミーティングなども自由にスケジュールが決められる今の状況は、やりやすいと感じています

また、色々な予定が急に入ったり突発的な案件が湧いてきたりするので、マルチタスク能力はかなり鍛えられたと思います。数ヶ月前までは、「ああこれはもう無理だ! 回らない!」と思っていた量のタスクが、今はなんとか片付けられるようなったり。人間、慣れって怖いですね(笑)

国費留学生と卒業生を取りまとめる団体MEXT Scholars Associationのイベント集合写真。詳しくはhttp://mextsa.org

こうして少しずつできることが増えていくという、ポジティブな経験が実感できるのは貴重です。自分の裁量権が多ければ多いほど自分を律する強さも必要になりますが、私の場合まだまだ律する心が弱いので、もっと精進して会社の、そして自分の成長につなげていかなければ、と思う毎日です。

母の背中を見て育つ子どもの変化

起業して何か子育てに影響があったかというと、Uber Eatsの利用回数が増えたことくらいでしょうか(苦笑) タスクが詰まっている時はなかなか家事に手が回らず、さぼることもしばしば。自宅で仕事することも多いので、プライベートと仕事が一体化している状況です。そんな母親の働き方を見て、「こういうワークスタイルもあるのか。会社に勤めるだけが選択肢じゃないのか」と、子どもは感じているようです。

将来どんな仕事をしたいのか、何がやりたいのかを話す時、「自分で何か立ち上げてやってみようかな」と話すことも増えてきました。「上手く行くか行かないか、成功するかしないかは、誰にもわからない。でも一つ言えることは、実際にやらないと一生わからない、ということ」という話を何度か子どもにしたこともあり、「とりあえず試してみる」というスピリットは植え付けられているような気がします。

社会がもの凄いスピードで変わっていく中、今までの常識や考え方が通じないこともたくさんでてくるでしょう。その時に、傍観者ではなく、チャンスを見つけて自分の力で道を切り開いて行ける、そんなマインドが子どもの中に育つと良いな、と思っています。自分のやりたいこと、得意なことで楽しそうに仕事をし、試行錯誤しながらも少しずつ前に進もうとする母親の背中が、子どもにとって自分の人生を考えるきっかけになればいいなと思いながら、ドタバタする毎日です。

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「バリキャリママは悩みだらけ、それでも前に進む」

今西由加

CURIO Japan株式会社代表取締役社長

上智大学外国語学部卒業後、レコード会社で海外アーティストのマーケティング・PRを担当、その後は複数の外資系企業でオフライン/オンラインのマーケティング事業に幅広く携わり、ビジネス経験を積み上げる。

自身の留学・職業経験から、国内外で活躍できる人材育成の必要性を強く感じるものの、日本での英語偏重グローバル教育に疑問を抱くようになる。国内においては、求めるサービスが見当たらないため、グローバル人材のための新しいサービスを自ら始めるべく起業。

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