20代の頃とは、お酒の飲み方が変わったよ。人生を楽しむLiLiCo流「大人の遊び方」

好評連載 第3回 LiLiCoの「もっとホンネで話そう。私たちのこと」
Yuko Kawashima

スウェーデンと日本と、ふたつのアイデンティティーを持つタレントのLiLiCoさん。30年前に来日して以来、独自の視点で日本を見つめ続けてきました。そんなLiLiCoさんが、世間を騒がすイシューからプライベートの話題まで、ホンネで語る本連載。

今回のテーマは、「大人の遊び」です。右肩下がりの日本で、元気がなくなったともいわれる大人たち。でも、本気で人生を楽しむためには、本気で遊ぶことこそ大切。LiLiCoさん流・人生の遊び方について語ってもらいました。

私が見てきたカッコいい大人たち

Yuko Kawashima

一生懸命仕事して、一生懸命遊ぶのが、私の見てきたカッコいい大人。例えば、オンはバリバリ仕事をして、オフはとことん休んで海外へ! そんな遊び方ってとってもかっこいいけど、実現するのって難しいですよね。

でも、休みがないから遊べないというのは間違い。

私も、年中通して休みがないんですよ。ただ、ごはんは食べないと行けない。だったら、食事の時間を遊びの時間にすればいい。例えば、20時まで仕事だったら、21時から23時までが遊びの時間。ディナーが終わったら、翌日に響かないように帰って眠る。

20代の頃は、どんちゃん騒ぎをして、浴びるほどお酒を飲んでいたんです。

二日酔いのまま寝ないで仕事に行ったりもしてたけど、お酒がガソリンになって、毎日頑張れた。飲んべえ人生の始まりは(居酒屋チェーンの)「つぼ八」で、レモンサワーとライムサワーばっかり飲んでたなぁ(笑)。今でも、大好きな味。

だけど私は今、49歳。20代の遊び方と、もうすぐ50代の遊び方は違います。

今はさすがに3、4時間は寝ないと体がつらいし、飲み過ぎたらひどい二日酔いになってしまう。仕事にも影響します。起きられなくて遅刻したり、撮影のある日に目の下のクマがひどかったりすれば、プロ失格。ナレーションの仕事が多くなってきたので、喉に負担のかかる赤ワインは避ける日も多くなりました。

今は、“さわぎまくリリコ”じゃなくて、“しっぽリリコ”を楽しみたいんですよね。

限られた遊びの時間を、本当に大切な人と、おいしいご飯とお酒をゆっくり味わう。密度の高い、粋な遊び方になったなと思います。

何気ない会話してる? 買い物だって遊びになる

だけど、オフの時間だけが遊びの時間ってわけじゃない。普段の日常で人と会話することだって、立派な遊びだと思う。

買い物のときに、スーパーのレジのおばさんとしゃべるのも遊び。パーティーの準備をするために酒屋に行っておじさんと話すのだって、そう。

「今日は、モエ・エ・シャンドン2本ください。冷えてなくていいですよ」

「またパーティーですか?」

「そうなんです。少し先だけど、お酒だけ買っておこうかなって」

「飲み過ぎないでね」

「最近は私は控えめにしてるの。周りばっかり飲んでるのよ」

……なんて何気ない会話も、日常の中の遊びなんですよ。

日本人が遊び下手なのだとしたら、日常のコミュニケーションが足りないからなのかもね。

スウェーデンだったら、ジョギングしてすれ違っただけの人にも「こんにちは」っていうもん。誰かが素敵なシャツを着ていてほしくなったら、「すいません、どこで買ったんですか?」って聞くのも普通。「○○で買いましたよ」「すてきね」って当たり前の会話よ。

でも日本だと、そんな風に声をかけないですよね。

私も、すごくかわいい唇型のポーチを持ってる人がいたから、「すいません、それどこのですか? かわいいから、どこで買ったのかなと思って」って言ったら、すごく驚かれちゃったことがある。

遊びのある日常って超楽しいじゃない? それってつまり、コミュニケーションのある日常ってこと。

私、マンションの廊下で会った人にはあいさつするし、同じフロアにはおすそわけをし合うファミリーもいる。去年の大晦日は、そこの12歳の男の子とばったり会ったから、パーティーに招待したんですよ。そういうやりとりも、ある意味遊びですよね。

売れてないときから、人との縁でここまできた。

Yuko Kawashima

若い時は、外に出て遊ぶのもすごく大事。外に出て遊ばないと、縁って生まれないから。人との縁ができると、遊べる場所や遊べる時間が増えていく。世界が広がっていくんですよね。

35歳を過ぎたら、行きつけのお店が3軒はあるといいと思うな。誰かに「食事に行きたいね」と言ったら連れて行けるような、店員さんとコミュニケーションの取れているお店。自分が心を許して遊べる空間を外に持っていた方が、人生はもっと楽しくなる。

“さわぎまくリリコ”時代は、お酒の席の出会いがよく仕事につながったものです。

まったく売れてないときに、バーで飲んでいて意気投合した相手が、実はプロデューサーさんだった……とかね。後日「低い声のナレーションがほしいな。確かあのときバーにいた人、芸能の仕事やってたよね?」って私を思い出してくれて、仕事をもらったり。

私、人のつながりでここまできたんです。

今でも自分からやりたい仕事を探すし、やりたい仕事があれば、自分で連絡をして、食事の席をセッティングして、気持ちを伝える。

仕事が実現したら、次につながるように自分にできることは精一杯する。アイデアは惜しまない。

ほとんどの仕事は、そうして私が自分で獲得したものだし、事務所に来た仕事も受けるかどうかは自分で判断しているんです。

人と人とがつながっていると、仕事って遊びになる。コミュニケーションが生まれるからね。仕事中にも遊びを見いだす方が、人生が楽しくなります。

人と人の縁をつなげるのも好き。

例えば、最近メイクの仕事に力を入れてるんだけど、メイクアップ・アーティストって美容関係の会社と仲良くした方がいいんですよね。

だったら、みんなで仲良くなったらいいと思って、私の知り合いのメイクアップ・アーティストたちと化粧品会社の社長さんたちとを引き合わせる会を開いたんです。

化粧品会社同士ってライバルだけど、ライバル関係なんて作ったって仕方ないからね。一気にみんながつながっていい機会になったと思うよ。社長さんもすごく喜んでくれた。

映画業界が偉いと思うのは、宣伝会社も映画会社もみんな仲がいいってこと。

業界内で転職する機会が多いのもあって、海外俳優の情報を交換してたりするんだよね。みんなで業界を盛り上げようという雰囲気がある。

日本の職場には、飲みニケーションよりフィーカを

Yuko Kawashima

こういう話をすると、「いや、日本の職場には飲みニケーションがあるから」っていう人がいるかもしれないけど、「酒が入れば無礼講で、みんな友だちだ」っていうのは遊びとは違う気がする。

酔いが冷めたらもともとの上下関係に戻って、翌朝「おはようございます」って何もなかったかのように振る舞うんでしょう? 一緒に酔っ払うほど楽しかったのに、その関係は元に戻っちゃうんだよね。

私は、日本の職場にスウェーデンの「フィーカ文化」を導入したらどうかなって思う。そうしたら、もっと仕事がはかどるんじゃないかな。

フィーカとは、コーヒーブレイクのこと。飲み物はソフトドリンクならなんでもよくて、甘いおやつをつまんだりしながら、自分一人で、または他の人とおしゃべりしながら過ごす時間です。

スウェーデン人は、1日に最低でも1回はフィーカの時間を取ります。

友だちとショッピングに出かけても、「ちょっとフィーカする?」なんて、すぐお茶したがる(笑)。だからスウェーデンはカフェだらけなんですよ。リラックスして本音でしゃべり合う文化があるんです。

(写真はイメージ)スウェーデンのフィーカ
Alexander Farnsworth via Getty Images
(写真はイメージ)スウェーデンのフィーカ

仕事中だって、フィーカ。出勤したら、まずフィーカ。それからすぐにランチ。3時にまたフィーカしたりして意識的に休憩を取る習慣がある。

一緒に机を囲んで、表情を見て、声のトーンを聞きながらおしゃべりして、互いの考えを理解し合う。

洋菓子の老舗企業ヨックモックは、今年から社内福利制度としてフィーカを取り入れはじめたそうです。ヨックモックという社名は、スウェーデン北部にある町の名前が由来なので、スウェーデンの文化を取り入れたのでしょう。

同じ職場にいても、みんな仕事はバラバラですよね。そのうえ、やりとりはオンラインのみ、声を掛け合うのは来たときと帰るときだけでは、コミュニケーション不足。仕事中の遊びだって、なくなってしまう。

働き方改革を考えるのであれば、残業をなくすだけじゃなくて、働きやすい職場づくりも必要ですよね。フィーカは、そのヒントになるんじゃないかな。

(聞き手:有馬ゆえ 写真:川しまゆう子 編集:笹川かおり)