これからの経済
2020年12月23日 07時27分 JST | 更新 2020年12月23日 09時16分 JST

「生理がきた、とはっきり言う人が増えた」 ガラケー時代から20年、ルナルナが見続けてきたもの

「ルナルナがきた」って、意味わかりますか? 生理が「隠語」だった時代はもう終わり。生理のつらさを、個人の閉じた苦しみのまましておくのではなく、社会全体で向き合うものにするために今できることは?

ハフポスト日本版にて作成
ライブに登場したarcaの辻愛沙子さんとルナルナ事業部副事業部長の那須理紗さん

生理日管理アプリ「ルナルナ」がサービス開始から20年を迎え、ブランドをリニューアルした。

ガラケー時代から多くのユーザーに利用され続け、2020年11月には1600万ダウンロードを達成。ユーザーの妊活サポートにも注力し、2019年の1年間で、利用ステータスが「妊娠中」に切り替わったアカウントは約28万にのぼる。

女性の社会進出、SNSの台頭、生理や妊活をめぐる風潮の変化——。

常に女性とともにあったルナルナの新しいキャッチコピーは、「カラダと向き合い、あなたに寄り添う。」

株式会社エムティーアイ提供
ルナルナの新しいビジョン

「女性とひとくくりにせず、多様で一人一人違う“あなた”のために」という思いを込めたという。

リニューアルを記念して12月15日、ルナルナがTwitterライブ配信を実施。ルナルナ事業部の那須理紗副事業部長が、新コンセプトの企画を手がけた「arca」CEOでクリエイティブディレクターの辻愛沙子さんらとともに登場した。

ルナルナが見てきた日本の女性の20年を振り返りながら、生理や女性のヘルスケアを個人の問題だけで終わらせないために問題提起した。 

 「ルナルナ」が「生理」の隠語だった

ルナルナがサービスを開始したのは、男女共同参画社会基本法が施行された1999年の翌年。そこから20年。女性の就業率があがり、多くの女性が、働きながら「生理」や「妊活」と向き合うようになった。

そうした中、「かつては生理という言葉自体がタブー視されていたが、だんだんとオープンに語る人が増えてきた」と、生理アプリを長年運用してきた那須さんは実感をこめて語る。

「2010年ごろまでは、生理と直接言わずに、『ルナルナがきた』と表現するツイートが結構あったのですが、最近では『生理がきた』とはっきり言う人が多いように感じます」(那須さん)

ルナルナ事業部の那須理紗副事業部長

また、今ではユーザーからの評価も高い、パートナーとのシェア機能。女性側の生理の情報をパートナーも閲覧でき、生理日やPMS(月経前症候群、生理前に起こる体や心の不調)が始まる時期には相手にメールで通知が届く便利なサービスだが、こんな歴史があるという。 

「前身となるサービス『彼女の医学』を2010年にリリースした時はプチ炎上しました。男性から『気持ち悪い』などのご意見、女性からも『そんなの共有したくない』と言われたりして、男女ともに厳しい声をたくさん頂戴しました」(那須さん)

それでも最近では、男性が積極的に生理について語ることが賛同を得たりするなど、大きな変化を感じているという。

これまで“黙殺”されてきた声がシェアされるように

こうした背景のひとつに、SNSの台頭がある。

生理について男性目線で語るコラムなどが話題のライターの5歳さんは、「ここ数年、生理についてみんなが考えたり喋ったりする土壌は育ってきていると思う」と発言。

「今までしゃべりにくかったことが、(辛さを)訴えることでたくさんの人に『いいね』されたり、経験を共有したりできるようになったのは、とても良いと思う。今まで黙殺されていた声がたくさんあった。それをシェアして立ち上がろうという、いい流れを感じます」(5歳さん)

SNSでメンタルケアやヘルスケアなどについて発信する臨床心理士のみたらし加奈さんも「生理を恥ずかしいことだ、と思ってしまう人に対して『恥ずかしいことじゃないよ』と言ってくれる人たちがSNSで活躍しはじめたことはとても心強い」と同意。

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臨床心理士のみたらし加奈さん

一方で、世界経済フォーラムが発表しているジェンダーギャップ指数において、日本のランクが後退してきていることを示し、「国としては落ちている、みんなで考えていかないといけない」と呼びかけた。

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内閣府ホームページ「共同参画2020年3・4月号」のデータを元に作成

 「女性のために」ではなく「あなたのために」 

女性の悩みの変遷とともにサービスを進化させ続けてきたルナルナ。

ブランドのリニューアルは、「このまま生理日管理ツールに固執していていいのだろうか?」という自問自答とともに幕を開けた。

「この20年、諸外国に比べてあゆみが遅い部分もありながら、女性にまつわる社会の変化がたくさんありました。『女性の人生』が定義されていて、こう生きるべきだとされていた時代ではもうない。ルナルナも変わらなくてはいけない、という課題意識からブランドアップデートに着手しました」(那須さん)

那須さんらのチームから相談を受けて、ともにコンセプトやデザインを作っていった辻さんは、「カラダと向き合い、あなたに寄り添う。」というキャッチコピーを提案した。

arca CEOでクリエイティブディレクターの辻愛沙子さん

「よく、『女性のための』とか『女性に向けた』という言葉を聞きますが、女性をひとくくりにしても(その実態は)捉えられないと思うんです。コンビニで生理用品を袋に入れて欲しい人もいれば、入れて欲しくない人もいる。生理痛のあり方、性自認、価値観も本当に多様です。ルナルナも女性の生理日管理というだけでなく、ピルモードやパートナーとの共有機能など、どんどんサービスを拡充しています。一人一人違う『あなた』に寄り添う、というところに進化していると感じたので、こうした言葉になりました」(辻さん)

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ルナルナのブランドロゴとカラー

ブランドの新ロゴは「Futura(フーツラ)」という文字フォントを元にデザインした。「Future=未来」が語源のフォントだという。

アプリやサイトの基調となるブランドカラーは、これまでより落ち着いたピンクとネイビーの2色に変更。 

「生理はくるけれど性自認が女性ではない人、体も性自認も女性だけどキュートな世界観が好きではない人…。多様な価値観にフィットするようにニュートラルなトーンを目指しました」(辻さん)

「今回の変更に際して、ルナルナの女の子らしさが実は嫌だったという声もTwitterでいただいたこともあり、変えてよかったと思っています」(那須さん)

「生理のつらさ」を個人の問題から社会の問題と捉えるために 

生理のつらさを、個人の閉じた苦しみのままにしておくのではなく、社会全体で向き合うものにするために何が必要なのか。

番組を締めくくったキーワードは「教育」「学び」だ。

2人の息子を持つ5歳さんは、家庭内での教育の重要さを挙げた。

「幼いうちから『今日お母さんの体調が悪そうだね』といった会話を重ねることで、そういうものなんだと自然と受け入れられる部分もあるので、家庭でできることは積極的にするべきだと思う」(5歳さん)

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ライターの5歳さん(右)とみたらし加奈さん

みたらしさんは、男女二元論で語る危うさを指摘し、みんなが学ぶ大事さを語った。

「生理の話はどうしても男性と女性の対立構造で語られがち。でも、男性だからわからない、体験してないからわからない、というのは違うと思います。女性でも個人差やコンディションによって全然違う。逆に(生理を)体験しているからこそ、PMSがひどい人に『何でそんなにイライラしてるの?』と思うなど、自分の価値観を押し付けてしまう場合もある。体験したからわかる・体験してないからわからない、ではなく、みんなで平等に学んでいく姿勢が大事だと思います」(みたらしさん) 

最後に、同性のパートナーと一緒にルナルナを使っているというみたらしさんから、那須さんに向けて「生理や妊活の話だと、パートナーが男性であるというのが前提になることが多いので今後はそこも加味してほしい」というフィードバックも飛び出した。

リアルタイムで移り変わる女性の悩みに耳を傾け、サービスを進化させてきたルナルナ。 

妊活への意識の高まりを背景にしながら、自社だけで完結しない様々な連携もはじめている。例えば、ルナルナで記録したデータを、婦人科診察時に患者の同意のもと医師のパソコンで確認できる機能をつくり、2020年11月までに全国900以上の医療機関と提携。また、東京都や大阪府など複数の自治体と提携し、妊活についての相談窓口や助成金制度などについてルナルナアプリ内に特設ページを設置している。

そして今後は、女性のヘルスケアをさらに社会全体の課題としてとらえていくため、女性の身体について教育の機会を提供する新たな取り組み「FEMCATION(フェムケーション)」(商標登録出願中)をはじめる。

生理が辛いのはなぜ?婦人科に行くタイミングは? などの前提知識をはじめとした女性の身体にまつわる情報を知ってもらう機会をつくり、発信していく。企業などでの研修なども検討しているという。 

「フェムケーションは、ルナルナ単体でやっていくものではないと思っています。辻さんたちはじめ、一緒にやってくださる企業さんや団体さんがいればそうした方たちとともに押し上げていけたらいいなと思っています」と那須さんは意気込んだ。

(取材・文:南 麻理江 @scmariesc / ハフポスト日本版)