フォルクスワーゲン、今後は販売台数の増加よりも「質的な成長」を目指す

来年VWが公表する「2025年成長戦略」では、さらに詳しい指針が発表されるだろう。

フォルクスワーゲン(VW)の目標は、世界最大の世界最大の自動車メーカーになることだった。しかし、これを目指して成長だけをひたすら追い求めたことに、大騒動となっているディーゼル排出ガス不正問題の一因があるのかもしれない。そして同社は今、世界最大の自動車メーカーへの道を自らの手で放棄しようとしている。

今後は単なる販売台数の数字ではなく「質的な成長」を追求するという同社CEOのマティアス・ミューラー氏(写真)は、排出ガス不正問題に対処し、将来の展望を見直すための5つのプランを発表した。これは2016年に打ち出される「2025年成長戦略」を予告するものとなっている。

発表を行った会場で、ミューラー氏は「世界中にいる60万人の従業員が取り組む全ての作業において、核となるのはお客様です」と語った。今回のプランで、最優先事項として挙げたステップ1ではリコール対象となるディーゼル車のオーナーへの対応に重点的に取り組むことを、そしてステップ2では不正問題の調査へ取り組むことを掲げている。「我々は真相を究明し、そこから学ばなければなりません」と同氏は述べた。

そして、ステップ3、4、5には、VWが組織のスリム化を図り、新体制を築くことが挙げられている。

ステップ3として、VWはマネジメントの「分散化」を推進していく方針で、今後は傘下にある各ブランドや地域ごとの独立性を高めるという。さらに、現在300モデルほど存在するラインナップを見直し、「各モデルの収益性から投資を精査する」そうだ。

ステップ4に挙げられているのは、社会的な危機に陥った会社が取る対応の典型例だ。GMイグニッションスイッチ不具合のリコール、そして、トヨタ急発進事故でのリコールでも同じような宣言がされている。ミューラー氏は、VWが「完璧を追求する」ことを諦めることなく「開かれた協力的な文化」を根付かせたいとしている。

そして、最も興味深いのがステップ5だろう。ここでは、既に打ち出されている「2018年成長戦略」の進化を追求するとしている。この「2018年成長戦略」では、世界中で総計1,000万台以上を売り上げることを目標としていた。ミューラー氏は、同社の内外で「2018年成長戦略は生産台数よりも大事なことを設定しているが理解が進んでいなかった」として、今後は視点を変え、世界最大の販売台数にこだわらない経営を行うという。同氏は、問題なのは「競合他社よりも10万台多く販売」することではなく、「質的な成長」なのだと述べている。

来年VWが公表する「2025年成長戦略」では、さらに詳しい指針が発表されるだろう。

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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(2015年11月3日「Autoblog日本版」より転載)

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