【アンケート】実名報道、被災地取材、ネットとSNS...「良いメディア」の定義を教えてください。

ネットで繰り返される「マスゴミ」批判。そうした言葉のウラにはどのような「メディアの理想像」があるのか、真摯に向き合いたいと思います。

常にトレンド入りする「マスゴミ」

「また、トレンドになっていますね...」

ハフポスト日本版編集部のオフィスで、ぼそりと呟く。特に誰も相槌を打つこともなく、それは独り言として消えていく。

社会的関心の高いニュースが発生するたびに、ネットでは「マスゴミ」批判が起きます。SNSで繰り返し投稿され、「トレンドワード」になることが多いのも特徴です。

メディアに対する批判は昔からありました。ハフポストにはNHKや全国紙から来た記者がいますが、彼らも一様に、上司や先輩に何年も前からメディア不信があったことを聞かされていたそうです。

SNSが広まることによって、そうした声を誰もがあげやすくなりました。さらに、メディア以上に影響力を持った個人のSNSアカウントも増えてきました。メディアの「特権性」が薄れた分、メディアの欠点も目立つようになったのだと思います。

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Getty Images

アンケートをやります

ハフポスト日本版は、2013年5月に生まれた7年目のネットメディアです。NHKや朝日新聞など伝統メディアとは違った視点を持って報道をするよう心がけていますが、まだまだ足りない部分がたくさんあります。どうしたら読者や視聴者からの信頼をもっと得られるのか、日々考えています。

そこで、ハフポスト日本版では(1)メディアに不信感を抱くようになったきっかけ、そして(2)これからのメディアに期待することを、皆様からご意見を募集することにしました。

アンケートのご回答は、数字にまとめたり、ご意見を引用したりして、ハフポスト日本版の記事として公開し、読者といっしょに会話を始めます。また、専門家をお呼びし、参加者と一緒に調査結果と向き合うイベントも2020年1月下旬に開きます。イベント会場では、集まったご意見の全文または一部を会場で展示いたします。

メディアと読者で「良いメディア像」は共有できるのか

ところで、「マスゴミ批判」の声が特段大きくなった最近の出来事といえば、2019年7月に発生した京都アニメーションの放火殺人事件でした。

反対した遺族がいたにも関わらず、京都府警が亡くなった方の実名をメディアに提供し、メディアがそれを報じたことから、実名報道の必要性について疑問が相次ぎました。

「世界コスプレサミット2019」の会場に設けられた京都アニメーション追悼のメッセージボード=8月4日、名古屋市東区
「世界コスプレサミット2019」の会場に設けられた京都アニメーション追悼のメッセージボード=8月4日、名古屋市東区
時事通信社

メディア側も、こうした声を無視しているわけではありません。例えば、京都アニメーションの事件の際には、NHKは以下のように伝えました

NHKは事件の重大性や命の重さを正確に伝え、社会の教訓とするため、被害者の方の実名を報道することが必要だと考えています。そのうえで、遺族の方の思いに十分配慮をして取材と放送にあたっていきます。

このような説明は重大な事件・事故などが起きるたびにメディア側から繰り返されます。しかし、メディアへの不信感を示す人たちに、十分に伝わっていないのだと思います。あるいは、説明のポイントが「根本的にズレている」可能性があります。

「マスゴミ」不信の声が上がるSNSと、メディア。両者の間には深い溝が横たわっているのではないでしょうか。

「良いメディア」とは?

そもそもメディアに対する「批判」があるということは、その背後には「メディアはこうあって欲しい」という理想があるはずです。

その「良いメディア」の定義が、メディア側と読者のあいだで一致していないことが、この溝の正体なのかもしれません。

「マスゴミ」と呼ばれるほど不信感が高まった点を受け止めながら、「良いメディアとは何か」を読者と一緒に考えたいと思います。

良いメディアとは何かーー。

改めて考えると非常に難しい問いです。

たとえば、(1) 「反権力」や「権力監視」を掲げて、権力者の不正を追及するメディアが「良いメディア」だと思う人もいます。ただ、権力といっても、それは安倍晋三首相のことなのか、もしくは世界中の人の個人情報を一手に握るGAFAと呼ばれるIT企業のことなのか。

とにかく(2) 「事実」だけを淡々と伝えるメディアが「良いメディアだ」と考える読者もいるでしょう。しかし、2019年の香港の反政府デモの報道でも分かるように、市民側から見るのと、香港政府側から見るのとでは、「事実」が異なることが分かります。その一方で、香港に足を運んでない多くの日本人がメディアを通してみる「事実」もまたあります。

あるいは(3) 「怒り」や「悲しみ」を表明したり、一緒に悩んだりしてくれたりするなど、読者に寄り添って共感してくれるメディアが「良いメディア」と信じているユーザーとも出会うことがあります。

このように見ていくと、メディアの役割は様々あり、「良いメディア」を定義することは非常にチャレンジングです。ぜひご協力いただきますよう、よろしくお願いします。

【アンケート概要】

皆様の声を、こちらのフォームで募集しています。

具体的には、次のようなことを皆様の可能な範囲でお聞かせください。

実名報道について(選択式)

事件や事故、災害などで亡くなった方の実名を報道機関が報じることについて、どのような考え方を持っていますか。

被災地での取材・報道について(自由記述)

地震や台風などの被災地にメディアが入って取材することについて、どのように感じますか。その理由をできるだけ詳しくお書きください。また、そう考えるようになったきっかけはなんですか。

メディアへの不信(自由記述)

メディアに対して不信感を抱いている方は、具体的な理由とそのきっかけを教えてください。

メディアの役割(選択式)

もっとも大事なメディアの役割は何だと思いますか。

報道機能:世の中の出来事や動きを知るうえで、もっとも役立つもの

娯楽機能:感動したり、楽しむうえで、もっとも役立つもの

教養機能:教養を身につけるうえで、もっとも役立つもの

情報機能:生活や余暇に関する情報を得るうえで、もっとも役立つもの

解説機能 : 政治や社会の問題について考えるうえで、もっとも役立つもの

慰安機能:疲れを休めたり、くつろいだりするうえで、もっとも役立つもの

習慣機能:生活習慣やリズムをつくるうえで、いちばん役立つもの

交流機能:人とのつきあいを深めたり、広げたりするうえで、いちばん役立つもの

「良いメディア」とは何ですか(自由記述)

「良いメディア」とは何だと思いますか。報道や記事がご自身や社会にとって「プラス」になったとお感じになったことはありますか。どのような記事やメディアが、これからの社会に必要だと思いますか。

表現のこれから
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ハフポスト日本版は「 #表現のこれから 」という特集を通じて、ニュース記事を始め、アート、広告、SNSなど「表現すること」の素晴らしさや難しさについて考えています。記事一覧はこちらです。

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