メンタルが限界だと思ったら誰に相談すべきか? ~良いカウンセラー・悪いカウンセラーを見分け方~ (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)

悩みを聞く専門家であるカウンセラーの詳細については一般にはよく知られていない。

「勤務先がブラック企業でメンタル的に限界」「パワハラ上司の言動でうつ病になってしまった」といった話が日常的に聞かれるようになった。メンタル受難の時代である。先日のドイツ旅客機の墜落事故では一部報道でパイロットに精神疾患歴があったとも言われている。

うつ病などの精神疾患が誰でもなりうるという認識は広まりつつある。職場にメンタルヘルスの不調で休職者がいる事ももはや珍しい状況ではない。自分もうつ病になってしまいそうだ、という人もいるのではないだろうか。

「悩みは抱え込まずに専門家に相談を」とはよく聞くフレーズだが、悩みを聞く専門家であるカウンセラーの詳細については一般にはよく知られていない。本稿では、カウンセラーの資格等をご紹介しながら、その良し悪しの見分け方について紹介したい。

■カウンセラーとは?

カウンセリングとは、「依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助」のことである。カウンセリングを行う者をカウンセラーと呼ぶ。カウンセリングというと、色々な道具を使った心理テストや、最近見た夢の内容を分析する夢診断的なイメージをお持ちになるかもしれない。しかしながら、カウンセリングの基本は「話を聴くこと」である。カウンセラーの対応としては、まずは相談に訪れた人の話をじっくりと聴くことにより、相談者がいったい何を問題と感じているのか等について共に明らかにしていく作業が始まる。まさに「他人の話を聴く専門家」と言えよう。

それでは、どういう経歴の人がカウンセラーとなっているのであろうか。意外に思われるかもしれないが、我が国の法令上、特段必須の資格・経験はない。カウンセラーの国家資格は存在せず、その職務を規定する法律も存在しないからである。

■カウンセラーの資格

しかしながら、多くのカウンセラーは何かしらの民間資格を取得していることが多い。代表的な資格としては、「臨床心理士」「産業カウンセラー」「キャリアコンサルタント(キャリアカウンセラー)」等がある。なお、ここでいう「代表的」の定義としては、契約により他企業の社員の相談に乗ることを生業とするいわゆるEAP企業で採用に際し必須の資格とされていることが多い等を基準にしているのでご注意いただきたい。

臨床心理士は、(公財)日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格である。臨床心理士となるためには、大学院修士課程を修了する必要がある。我が国におけるカウンセラーの資格としては、最もメジャーなものであると言えよう。公立の小中学校に配置されるスクールカウンセラーの大半が、臨床心理士の有資格者である。

産業カウンセラーは、(一社)産業カウンセラー協会が認定する資格である。産業カウンセラーになるためには、協会が主催する養成講座を受講する必要があり、およそ半年間にわたり、傾聴訓練を受ける。かつて労働省(当時)認定の公的資格であったこともあり、臨床心理士に次いでメジャーな資格である。職場をめぐる問題を主な領域としていることから、企業の人事労務担当者や看護職等を中心に資格取得を目指す者が多い。

キャリアコンサルタント(キャリアカウンセラー)は、就職を希望する人や職業上の様々な悩みを抱える人に対して、多種多様な相談支援を行う資格である。官民共通のプログラムにて要請が行われている「標準レベルキャリアコンサルタント」(CDA,CDF等)と、国家検定である「熟練レベルキャリアコンサルタント」(1級・2級キャリアコンサルティング技能士)がある。近年の雇用環境の悪化を受け、厚生労働省の政策としてキャリアコンサルタントの配置推進がなされており、ハローワークの相談員や民間の人材支援会社の社員等に有資格者が多い。

ちなみに、国家資格である「精神保健福祉士」がカウンセラーの資格として紹介されることが多いが、当該資格は、精神保健福祉法で位置づけられた、社会福祉業務(精神障害者に対する相談援助等)に携わるものであり、厳密にはカウンセリングに特化した資格ではない。

■良いカウンセラー・悪いカウンセラーの見分け方

さて、国家資格も適用法令もないカウンセラーは、玉石混淆であることは想像に難くない。それでは、相談者の立場から、どのように彼らの良しあしを判断すればいいのだろうか。以下ご紹介する。

「臨床歴・訓練歴を公開している。又は照会すれば丁寧に教えてくれる」。前述したとおり、「俺はカウンセラーだ!」と宣言すればカウンセラーになれる、というのが現状である。今までどのくらいの相談に乗ってきたのか、拠り所とする心理療法はなにか、学歴や保有資格は何か、について、HP等で公開しているかがポイントとなる。先に述べたとおり、臨床心理師であれば2年間大学院で座学・実習に従事したことになるし、産業カウンセラーであれば最低6月の傾聴訓練を受けている。今までどのような相談に乗り、どのような実績あるかという情報も、込み入った相談をする相手であれば是非とも押さえておきたいところであろう。

「他機関との連携が充分になされている」。例えば、相談者にうつ病等の精神疾患が疑われる場合、カウンセリングの範疇を超え医師の診断が必要となる。提携している医師がいるかどうかは重要なポイントである。カウンセリングは健常者であるがゆえに効果があるのであって、病気の治療行為は医師の範疇である。なんでも抱え込むカウンセラーは一見親切なようであるが、時に相談者の不利益となってしまうものである。

「相談方法、相談料金等が明瞭に示されている」。相談は2週間に1回、1回60分で5,000円等、明朗に示されているか。一般にカウンセリングとは、相談者自身の振り返りが重要視されている。毎日等頻回に行えばよいというものではないため、必要以上の頻度で面談回数がセットされている場合等は、いわゆる商業主義的なカウンセラーなのかもしれない。また、料金設定の公開も、良識や実績のあるカウンセラーならば堂々と情報提供するものである。この辺りが曖昧な場合は注意が必要があるだろう。

いかがだったであろうか。繰り返しとなるが、我が国におけるカウンセラーの力量は、まさに玉石混淆である。悩んでる時に更なる悩みを抱えないよう、本稿がカウンセラー選びのヒントとなれば幸いである。

【参考記事】

後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント