PRESENTED BY メルクバイオファーマ

女性の健康への理解をきっかけに『DE&I』を実現することは、企業経営にもプラスに働き、経済の持続可能な発展につながる

女性の健康について考えるイベント「Think W-Wellness──女性の健康のリテラシーを高めて、誰もが生きやすい社会へ──」が開催。

女性が社会進出するなかで見えてきたのが、女性の健康に関する課題。月経や妊娠・出産、更年期など、ライフステージによって異なる課題に、働く女性はどう向き合えばいいのでしょう。

2月20日に開催された、女性の健康について考えるイベント「Think W-Wellness──女性の健康のリテラシーを高めて、誰もが生きやすい社会へ──」では、「経営者が語る『ダイバーシティー経営成功の鍵は女性の健康!」と題したパネル討論がおこなわれました。

始めに「ヘルシーウーマン ヘルシーエコノミー」をテーマに基調講演を行ったのは、メルク・ベトナム社長の池田秀子さん。パネリストに日本航空代表取締役副社長の清水新一郎さん、早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さんを迎えて、議論を深めた様子をお伝えします。

左から、メルク・ベトナム社長の池田秀子さん、日本航空代表取締役副社長の清水新一郎さん、早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さん
左から、メルク・ベトナム社長の池田秀子さん、日本航空代表取締役副社長の清水新一郎さん、早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さん

OECD諸国の女性の34%が経済活動に参加する機会を与えられていない

「ダイバーシティー経営成功の鍵は女性の健康!」と題したパネル討論は、まずはメルク・ベトナム社長の池田秀子さんの基調講演から始まりました。

メルクは、ヘルスケア、ライフサイエンス、エレクトロニクスの3つの事業を柱に、世界66カ国でビジネスを展開する企業です。医療用医薬品などの製造・販売をするヘルスケアビジネスにおいて、とくに重点を置いているのが、がん、免疫、神経疾患、そして不妊治療の領域。女性の健康や生活の質の向上に貢献してきた企業だからこそ、女性の健康の課題に関心を持って取り組んでいます。

池田さんは、メルクが取り組むイニシアティブ「ヘルシーウーマン ヘルシーエコノミー(健康な女性 健全な経済)」について、こう説明します。「『ヘルシーウーマン ヘルシーエコノミー』を推進する理由は二つあります。

一つは、持続可能な経済成長の達成には、潜在的な労働人口のほぼ半数である女性の経済参加が必要不可欠であること。もう一つに、ビジネスにおいて女性の割合が高い企業は業績も良い傾向にあることが挙げられます(池田さん)」

続いて、これらの理由の根拠となる具体的なデータを提示。「国際労働機関のデータによると、低中所得国の62%、OECD諸国の34%の女性がいまだ経済活動に参加する機会を与えられず(※1)、世界の約8億6500万人もの女性が経済に貢献できる可能性を秘めています(※2)。

さらに世界銀行の報告書では、男女の雇用格差が解消されれば、世界は年間GDPのおよそ2倍に相当する約172兆ドルの『ジェンダー平等の配当』を得ることができる(※3)と示されました。

また、女性参加が進んだ企業の方が高い業績をあげる傾向にあることは、ジェンダー・ダイバーシティーが1%増加すると収益が3%増加するというデータ(※4)や、女性役員が30%以上いる企業はそれ以下の企業に比べて業績が高い傾向にあるというデータ(※5)からも示されています。女性が労働に参加することで経済に与える影響はとても大きいのです(池田さん)」

さらに「ヘルシーウーマン ヘルシーエコノミー」に取り組むことは、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にもつながると、池田さんは話します。

「17の目標のうち、8番の『働きがいも経済成長も』、3番の『すべての人に健康と福祉を』、5番の『ジェンダー平等を実現しよう』は、『ヘルシーウーマン ヘルシーエコノミー』に深く関連しています。メルクはこの三つの目標に加え、9番の『産業と技術革新の基盤をつくろう』、12番の『つくる責任つかう責任』、17番の『パートナーシップで目標を達成しよう』にも貢献しています(池田さん)」

ファミリーフレンドリーな社会の構築を目指す取り組みを紹介します

「ヘルシーウーマン ヘルシーエコノミー」の取り組みに関する具体例として、池田さんはメルクがグローバルで行なっているプログラム「WIL──Women In Leadership」と、メルクグループジャパン独自の取り組みである「YELLOW SPHERE PROJECT」を挙げました。

「『WIL』は個人またはプロフェッショナルとしての成長をサポートするために各国、各地域で設けているコミュニティです。参加者の性別や年齢、役職を問わず、誰でも参加できることが特徴。仕事や子育て、人間関係などの悩みを共有し、活発に意見を交換する場として機能しています。

例えば、私が所属しているアジア・パシフィック地域では、『女性がキャリアを進める上でどのような困難を乗り越えてきたのか』や『アジアからヨーロッパへ転勤した社員が言葉や文化の壁をどう乗り越え、プロフェッショナルとして成長したのか』などが共有され、社員のモチベーション向上や励ましになっています。

また、2017年に立ち上げた『YELLOW SPHERE PROJECT』は、妊活を支援することでファミリーフレンドリーな社会の構築を目指す取り組みで、社員への啓発・教育セミナーの開催、不妊治療を受ける全社員を対象とした有給休暇の付与、不妊治療費の助成などをおこなっています。

なかでも私が気に入っているのが、社員への啓発・教育セミナーです。妊活においては、治療を受けやすい環境や体制づくりがとても大切。だから、男性も含めた全社員を対象にセミナーを実施し、生殖に関する基礎知識や不妊治療、そして会社のサポート内容について伝えています。

より多くの人が知ることで、妊活に対する理解が進み、不妊治療をおこなう社員へのサポート環境も整っていきます。こうした風土ができると、家族の病気や介護など、様々なライフステージにいる他の社員にとっても、働きやすい環境になっていくと考えています(池田さん)」

池田さんは経営者として「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)」の重要性を日々感じていると言います。

「組織の生産性向上のためには、性別や年齢、肩書きなどのバックグラウンドに関わらず、誰もが認められ、参画できる機会を得られる職場づくりが必要。なぜなら、それは多くの人の心身の健康に関係し、社員のエンゲージメントや会社への信頼、愛着にも良い影響を及ぼすからです。女性の健康への理解をきっかけに『DE&I』を実現することは、企業経営にもプラスに働き、結果として経済の持続可能な発展に貢献することにもつながります(池田さん)」

「リーダーはあえてマイノリティに自分の身を置いてみては」と入山教授の提言

基調講演を受けて、女性の割合が50.1%を占める日本航空代表取締役副社長の清水新一郎さんも「女性の健康なくして企業の成長なし」と断言しました。

「日本航空では、2010年の経営破綻以来、社員の物心両面の幸福を追求する社員ファーストで、健康経営を実践しています。女性の健康への取り組みとしては、昨年から月経や更年期、妊活に関するセミナーを開始。自分の体に関する知識を身につけ、何か不安があればオンラインで相談、気になる症状があったらクリニックを受診する。これらを一つの流れとして、おこなっています(清水さん)」

セミナーには男性も参加できるそうで、参加した男性からは「月経でこんなに様々な症状が出るなんて知らなかった」といった声が寄せられました。

「池田さんや清水さんが既に実践しているように、まず知ってもらうのが第一歩なんですよね」と、早稲田大学教授の入山章栄さんは話します。

「日本は男性中心の企業が多いので、圧倒的に女性にハンディキャップがあります。清水さんのお話にもあったように、男性のほとんどが女性の月経や更年期について何も知らない。この『知らない』ということは、『DE&I』を進めるうえで障害になるんです。

先ほどの基調講演で池田さんがデータで示されていたように、女性社員の割合と企業の業績には相関関係があります。私たち一人ひとりが持っている知見の組み合わせによってイノベーションは起こるのですが、知見と知見の組み合わせは離れていればいるほどいい。

つまり、多様な人材がいた方がその組織は活性化するんです。中年男性ばかりの日本の企業がダイバーシティーを目指せば、自然と女性やLGBTの方、外国人の方、障がい者の方の雇用が増えるはずです。しかし、マイノリティー側が何に困っているかを『知らない』ままにしてしまうと、それが暗黙のハンデとなり、せっかくの多様な人材も実力を十分に発揮できません(入山さん)」

これに対し、「まだハンデの克服には至っていないものの、ハンデを克服するための対話ができる企業風土に変わってきているのは感じます」と、清水さん。「男性社員の理解が進んだことで、女性社員も『体の変化でパフォーマンスが落ちても、カバーしてもらえるんだな』という安心感が持てるようになったようです」

これまで「DE&I」を進めてきたメルクでは、対話による心理的安全性の確保を重視してきました。「そのためにはリーダーシップが重要なので、管理職は全員リーダーとして必要な研修を受けています。

私も実践していることですが、会議の前にリーダーが『みんなの意見を聞きたい』としっかり伝え、誰かが発言しているときは口を挟まずに最後まで耳を傾けるようにしています。上下関係なくフィードバックし合うので、私が改善提案を受けることもあります。『Feedback is a gift. (フィードバック イズ ア ギフト)』を合言葉に、お互いの考えを伝え合っています(池田さん)」

日本航空でもメルクと同様に管理職研修を重視していると、清水さんは言います。「企業理念の研修として全社員を対象に、肩書き関係なく6人くらいのグループで話す場も、年に3、4回設けています。これもまた対話のしやすい風土作りに役立っています」

これに対して入山さんは、「対話ができる風土醸成のために、管理職研修は有効ですよね」とコメント。

「リーダーの仕事は話すことではなく、聞くこと。ファシリテーターとしていろんな人の意見を引き出すことに価値があるんです。また、管理する立場にある人は、一度マイノリティーを経験してみるのもいいのでは。マジョリティー側にしか立ったことがない人は、なかなかマイノリティーの感覚が持てないものです。あえて自分が少数派になる場所に飛び込んでみると、何かしらの気づきがあるのではないでしょうか(入山さん)」

※1.OECD labor market statistics

※2.International LabourOrganization: “Women at Work Trends 2016”/2022 World Bank data

※3.The World Bank report: “How Large Is the Gender Dividend? Measuring Selected Impacts and Costs of Gender Inequality”

※4.2015 “Diversity: Bringing the Business Case to Life” by Boston Consulting Group

※5.2019 “Diversity wins: How inclusion matters” by McKinsey & Co.

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