アート&カルチャー
2019年02月20日 17時57分 JST | 更新 2019年02月20日 17時57分 JST

「一生、ロリータやめない」 35歳、青木美沙子は“年相応のファッション” の呪縛と戦う

出会い系アプリを通じた恋愛がうまくいかなくとも、男性に敬遠されようとも、「ロリータは一生やめません」と断言する。

HuffPost Japan

青木美沙子さん、35歳。リボンやフリル、レースなどが付いた“ロリータ服”に身を包む姿はまるで、お姫様のようだ。 

15歳の時、原宿でロリータファッション誌「KERA」のモデルとしてスカウトされた。それから20年、流行のファッションに脇目もふらずにロリータを愛し続け、今や世界中のロリータたちのカリスマ的存在だ。

お姫様のようなファッションは、時に“バカっぽい”などと見下されたり、そろそろ卒業したら? と不要に諭されたりすることもあった。しかし彼女は「一生、ロリータをやめない」と宣言する。

いくつになっても同じスタイルを貫きたいーーそう思わせるファッションの魅力とは何だろうか? 青木さんに話を聞くと、私たち日本人が囚われている「年相応のファッション」というものに対する呪縛が浮かび上がってきた。

HuffPost Japan
「ハフトーク」に出演したロリータモデルの青木美沙子さん

ロリータは、コンプレックスの塊だった自分を救う「戦闘服」

 「ロリータは私にとって戦闘服のようなものなんです」。

可憐で愛らしい洋服に身を包みながら「戦闘服」という過激な言葉を口にする青木さん。弱くてコンプレックスだらけの「ネガティブな自分」と戦い、前向きにしてくれるのがロリータファッションなのだという。

《10代の頃、自分の体型が嫌いでした。足は太くて、アトピーもあって。自分に自信が持てなくて、クラスでも目立たない存在だったんです。

そんな私が、ロリータを着ることで強くなれた。ロリータって身体のラインをふわっと隠すことができるんです。

自信がない部分は隠したっていい。そうやって世の中に出ていけばいい。そう思わせてくれたのがロリータだったんです。》

彼女は看護師として働くかたわら、今もロリータモデルとして最前線で活動している。

本人提供

 

世界に羽ばたくロリータ文化。

ロリータは近代西洋のファッションに着想を得た日本発祥のスタイルで、1990年代に東京・原宿で生まれた。

可愛らしくて甘い印象のスウィートロリータ、少しくすんだ色で大人っぽさを演出できるクラシックロリータ、黒や赤を多用したゴシックロリータ(ゴスロリ)、お姫様らしさ全開の姫ロリータなど、色んなスタイルがある。

青木さんは、日本発のロリータファッションの素晴らしさを世界中に伝えたいという思いで2013年、日本ロリータ協会を設立。アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、アジアの25カ国50都市以上を訪問し、ロリータの魅力を“布教”し続けてきた。

気候も文化も違うそれぞれの地で、日本発のロリータファッションと現地の伝統が融合し、新たな流派のようなものが出来ていくのも面白い。

日本では着物と組み合わせたような「和ロリ」、中国ではチャイナ服と合わせた「華ロリ」というスタイルが人気だという。

ひとえにロリータといっても多様なスタイルがある。この「選択肢の多さ」もロリータの魅力だと青木さんは言う。 

ユニークなことに、着る頻度によって異なるネーミングがつく。

病院で白衣を着ている時以外はいつもロリータ服を着ている青木さんは「毎日ロリ」。他方、週末だけロリータ服を楽しむ「土日ロリ」もいる。

仕事や学校通いで普段はなかなか自由に好きな服を着られなくても、休みの日には大好きな洋服を着て本当の自分を解放したい。そんな思いがあるのだろう。

 

本人提供
中国廈門でイベントに参加する青木美沙子さん
本人提供
ブラジル・サンパウロでファンにサインをする青木美沙子さん

 

ロリータは「男ウケ」が悪い。でも…。

世界中の女性たちを魅了してやまないロリータファッションだが、青木さんいわく「男ウケがすこぶる悪い」のだという。

結婚がしたい、彼氏が欲しいーーそんな思いから出会い系アプリに登録し、実際に12人の男性と会ったという青木さん。

 《会った瞬間、相手がサーーーーーってドン引きしていく音が聞こえるんですよ。会う前にスマホでメッセージのやりとりをしている時には、趣味の話、医療に関する話などについて、対等に会話していたはずなのに。私のロリータ服を見た瞬間、格段に会話のレベルが下がる。下に見られているのがわかるんです。》

男性たちがかける言葉はこうだ。

「コリン星からきたのかな?」

「毎日、マカロン食べてるの?」

「おうちはお城なの?」

まるで子供の相手をするかのような口ぶりで質問をしてきたかと思うと、挙げ句の果てに「そんなファッションやめなよ」と“諭そう”としてくるのだという。

理解してくれる男性がいるはずだ、と最初は信じていたけれど現実はそうじゃなかった、と青木さん。驚くべき話だが、出会い系アプリのプロフィール欄に、彼女のもう一つの仕事である「ナース」を入力すると、「今度は急にモテはじめる」のだという。

 《ロリータに対する偏見は大きいと思います。これを理解してくれる男性と付き合いたいですがなかなか…。

中国では派手な服装の女性がモテるから、男性からもロリータは人気があります。でも日本人は保守的な人が多い。一緒にデートしていて目立つ女性は嫌なんだと思います。

どうしても、みんなと一緒がいい、目立たない方がいい、というカルチャーなので、ロリータは奇抜な格好として変な扱いを受けてしまう。》

《私たちの方にも責任があるなと感じています。ロリータってどうしてもイロモノのような感じで、メディアでも面白おかしく扱われてしまいがち。それを見て誤った理解をしている方が多いんでしょね。

そういう意味では私たちにもまだまだ足りていない部分もあるし(適切な理解を得るために)頑張らないと思います。》

 

ロリータは一生やめない。ファッションは自由でいいはずだから。

出会い系アプリを通じた恋愛がうまくいかなくとも、男性に敬遠されようとも、青木さんは「ロリータは一生やめません」と断言する。

《何というか、恩があるんです。ロリータは、自分のネガティブなところと向き合う力をくれた。自分を変えてくれたし、人生を支えてくれたものなんです。 

こうして先頭に立つことで、同じようにロリータに救われている人たちの希望でありたい。35歳の私が続けていることで勇気が出る人もいると思うんです。出産や子育てで一度ロリータをやめて、また帰ってくる人たちもいるから、そういう人たちの受け皿にもなりたい。

それに、プライドや使命感もありますけど、何よりもロリータが好きなんです。カワイイじゃないですか。どんなにみんなの思いを背負っていても、自分が好きじゃなきゃ続けられないですしね。》

好きだから着続けたい。

カワイイから着続けたい。

ロリータへの一途な愛を語ってくれた青木さん。最後にあえて「本当にいくつになってもロリータファッションを続けますか?」 と問うと、青木さんは淡々とした口調でこう答えた。

《年齢によって、ファッションを変える必要はないと思います。20代だからこの服、30代だからこの服、ママだからこの服、という思い込みはおかしい。おばあちゃんになっても、男性でも、ロリータを着ていいんです。私の夢は、まだ見ぬ娘との親子でロリータを着ること。ファッションはもっと自由でいいと思うんです。》

ロリータ大使として、25ヵ国以上をめぐってきた青木さんはこう続ける。

《ファッションだけじゃない。結婚や職業選択もそう。年齢で色々規定するのは日本人ならではの感覚じゃないでしょうか。35だからロリータ着ちゃいけないとか、結婚してなきゃおかしいとか…。そういう考え方こそおかしいし、実はすごく勿体無いんです。 

年齢で何かを諦めるなんて勿体無くないですか? 好きなら絶対、諦めちゃいけない。私はそう思うんです。》