メディアと表現
2019年09月05日 07時48分 JST

「ハーフは恵まれている」 その言葉に苦しめられた女性たちが声をあげた理由

「ハーフ顔」「外国人風」… 広告などにおけるミックスルーツの人らに対するステレオタイプ化した表現に問題提起をしている二人の女性がいる。その思いを聞いた。

Photo Illustration by Jun Tsuboike / HuffPost Japan
女性向けの雑誌や美容に関するサイトなどでは、「ハーフ顔」という表現が使われている。

メディアや広告におけるミックスルーツの人などへのステレオタイプ化された表現に問題提起をしているGRAY PRIDE(グレープライド)というTwitterアカウントがある。

運営するのは、日本社会で生きてきたミックスルーツの女性二人だ。

「次の世代に自分たちが苦しんだことを経験して欲しくない」と語る二人が、発信に込める思いを聞いた。

 

■「『ハーフ顔』なんてない」 

小澤さん、石井さん提供
幼少期の小澤ナザニンさんと石井マヤさん(左から)

アカウントを運営しているのは、石井マヤさんと小澤ナザニンさんの二人だ。

石井さんは、母親がポーランド人で父親が日本人。小澤さんは、母親が日本人で父親がイラン人だ。

二人は、雑誌や広告などに使われる「ハーフ顔」「外国人風」といった表現に抗議し、その活動の記録をTwitterとnoteで公開している。こういった表現は、化粧品の紹介でモデルの写真と共に「ハーフ顔になれる」と書かれていたり、ヘアスタイルを紹介する人物写真に「外国人風」などと記されていたりする。

様々なルーツをもつ人がいるにも関わらず、特定の見た目の人に「ハーフ顔」「外国人風」といった表現を使うことで、ミックスルーツの人は「こういう外見であるはず」というステレオタイプを強化し、その「ハーフ顔」に当てはまらないミックスルーツの人たちを傷つけていると、二人は考えるからだ。

こういった表現を使う雑誌や美容関係のメーカーなどに対し、電話やメールで問題意識を伝えた上で、「立体感を演出するメイク」「瞳の印象をやわらげるカラーコンタクト」などの代替表現があるのではないかと伝えている。

石井さんは「ニュース番組などで配慮がなされた報道がされていても、子どものころから日常で目にする広告や雑誌が変わらないと、多くの人の意識は変わっていかないんじゃないか」と話す。

「こういった表現を目にすると、『ハーフ』は、人形のように『もの』として消費されていると感じます。ハーフ当事者以外の女性をも美醜にしばりつけ、苦しめているんじゃないか。『ハーフ顔』なんてないと思います」

@graypridejapan / Twitter
Twitterで発信をしているGRAY PRIDE。noteでも抗議の記録や、思いをつづっている。

 

■「ハーフと付き合ってみたい」

二人が活動をするようになった背景には個人的な体験がある。

石井さんが「見た目」について悩むようになったのは、大学生になったころだった。

新しい環境に身を置くと、このような言葉をかけられるようになった。

「ハーフはチヤホヤされるよね」

「私もハーフだったら、英語ができたのかな」

「ハーフは恵まれている」

「ハーフはずるい」

「世間に触れた、と感じました」と石井さんは振り返る。

「『私もなりたい』というような、ポジティブにコーティングして言われるので、相手を切り捨てられずモヤモヤが溜まってしまった」

周りにミックスルーツ著名人と同一視され、「ハーフ芸能人」のファンだという男性から「ハーフと付き合ってみたくて」と言われたこともあった。

「ハーフ芸能人・著名人」が「ハーフの正解」と感じるようになり、その写真と自身を見比べて、美容整形を考えるようになっていた。

徐々に人と会うのが辛くなり、大学を休学。うつ病と診断された。 

 

■自分を「ハーフっぽさ」に押し込めようとした

小澤さんは子どものころ、ミックスルーツであることを理由に、いじめを受けた。

「ガイジン」「早くイランに帰れよ」といった言葉にさらされた。

「もう絶対に傷つきたくない」という思いから、「なるべく日本人に近い見た目になるように」と努力した。

一方、10代後半で、テレビや雑誌に「ハーフ芸能人」が多く出演しているのを見かけるようになった時期に、周りから「ハーフに見えないね」と言われるようになった。

今度は「周囲の求めるハーフ像にならなくてはいけない」という強迫観念にかられ、自身を「周囲が抱くハーフへの『偏見』」の中におしこめようとした。

手足が長く、痩せている妹の方が「ハーフっぽい」と考え、妹に近づこうとし、摂食障害に苦しむようになった。

だが数年前、その妹もまた、見た目のことで辛い言葉を周囲にかけられてきたことを知った。

「その時、一人でメソメソすることはもうやめようと思いました。他のハーフのために何かがしたい」

石井さんもまた、「私は色々と自分で折り合いをつけてきた。けど、自分より下の世代、これから生まれる世代には、苦しんでほしくない」と考えていた。

二人はネットを通じて出会い、2019 年春から GRAY PRIDE として活動を始めた。

 

■活動の中で…

二人の元には、ミックスルーツの人からさまざまな声が寄せられるようになった。

・カットモデルをしたら、写真に「外国人風」との言葉がつけられていた

・広告に白人系のハーフが多いことに違和感がある

・思春期にいじめで苦しんだ時、同じ経験をしている人とつながりたかった

中には「この年まで生きると思ってなかった」という声もあった。

小澤さんは「私も10歳で自殺を考えました」と明かす。

「『辛い』と周りに伝えると、『でも恵まれてるんだから、文句は言わない方がいい』などと返される。深刻だととらえてもらえない。同じように、ハーフとしての辛さを否定されてきた人たちから活動に賛同する声が寄せられるたび、深刻な状況だと痛感します」

 

■「グレーパレード」を!

二人は今後、「共有」に主眼をおいた場づくりをしていきたいと考えている。

例えば、ZINE(自主的に発行する紙の刊行物)を作るなどし、性別やルーツを問わず、問題意識を持つ色んな人の発信を紹介したいと考えている。

そして、二人には夢がある。

ミックスルーツの人や外国籍の人、帰化した人、日本にルーツはあるけど住んではいない人...さまざまなルーツの人たちで「グレーパレード」をするというものだ。

「狭間の存在である私たちを、多文化的で多面的な豊かで美しい存在として祝福したい」

そして、パレードで「見える状態」にすることで、日本社会に伝わることがあるとも二人は考えている。

「日本では相手を決めつけ、判断することが多いと感じます。出身地、血液型、性別とか...。相手を知るには、もっと時間をかけて関わっていかなければならないと思います。誰もが『自分』として生きることが尊重される社会になって欲しい」