特集
2019年04月21日 09時35分 JST

「ちゅんちゅんこわい」気弱な息子と動物園に出かけたら……?

村橋ゴローの育児連載「ワンオペパパの大冒険」10

人間、おぎゃあおぎゃあと生まれて2年も経つと、性格というものが段々と現れるようになる。ウチの息子が2歳になってわかったのだが……まあ気が弱い。

まず、「かーしーてー」が言えない。公園のお砂場にある共有のお砂場道具、キッズスペースに置いてあるおもちゃ。あれらをほかのお友だちが遊んでいると、自分もそのおもちゃで遊びたいのに「かーしてー」が言えない。すると決まって僕の手をぐいぐいと引っ張り、「ぱぱがとってきてよ」とやってくるのです。

そんなときは「遊びたいなら自分で言いなさい」と突き放し、遠くから彼の動向を見守ることに。すると彼は結局「かーしーてー」が言えないまま、余っているほかのおもちゃで遊び出す。近づくと「ぼく、これであそびたかったんだ」と妥協を言い訳で返してくる。そんな折につけ、何かこう胸の奥が締めつけられるというか、親としてとても切ない気持ちになっていました。

また夏の日、一緒に外を歩いていてふと気がつくと息子の姿がない。すると後方から「ぱぱーー!!」と泣き叫ぶ声が聞こえてきたんです。やおら見てみると、息子の足の先にセミの死骸が。それが怖くて踏み出せず、泣いていたのだ。

村橋ゴロー

極めつけは、「ちゅんちゅん、こわい」。お前スズメが怖かったら、何が怖くないんだよ! 男の子だから強くなれとは思わないが、息子のあまりのチキンっぷりに忸怩たる思いは隠せませんでした。

 

動物園での一コマ

そんななか、息子を動物園に連れて行くことに。まだ連れていったことはなかったし、動物園デビューをしたくなったのです。何せセミの死骸に号泣し「ちゅんちゅんこわい」のだから、ゾウやキリンのでかさに圧倒されるでしょう。それでも「ぱぱ、おっきいね」「ぞうさん、すごいね」というリアクションを、親としてやっぱ期待しちゃうじゃないですか。

そんな思いを込め、品川区の自宅から上野動物園まで片道13キロを電動チャリこいで行ったわけですよ。するとまあ、キリン、ゾウ、ゴリラには近づこうともしない。絵本でそれらは「でかい、こわい」と知ってるようで、「まだ見ぬ強豪」とのコンタクトを避けようとする。それでもキリンのいるゾーンに差し掛かり、あの巨体が目に入った瞬間に彼の足は止まり、大号泣。何かオレ、悪いことしてるみたい……。

村橋ゴロー

やっぱり彼にはまだ動物園は早かったのかな。彼には彼の歩みのスピードがあるし、オレのわがままに付き合わせちゃったかな……と少し反省していると、前方を歩いていた息子が「ぱぱー、みてー!!」と大興奮している。お! 何か素敵な動物でも見つけたのか? 上野くんだりまでやって来た甲斐があるってもんよ!「どうしたー!? なんか見つけたか?」嬉しくなって息子に聞くと、とんでもない答えが返ってきた。

「ぱぱー! ありさんがいるー!!」

ありさんかいっ! 上野ZOOにまで来て、ありさんかいっ!

それでも帰宅後、息子は妻に「ままー! きょう、どうぶつえんにいったんだー!」と興奮気味に報告。やっぱ連れていってよかった、彼なりの発見もあったんだろうと少し安堵していると、妻が「何が一番面白かった?」と聞くと「あいすがおいしかったー!」。昼に買ってやったアイスかいっ!

 

意外と冷静な一面も

そんな我が家の育児史に燦然と名を残す〝上野ありさん事件〟から2年。4歳となった息子は、まあやんちゃな男の子に。スーパー戦隊モノにどハマリし、「なんちゃらレッド!」とポージングし、僕との遊びももっぱら「たたかいごっこ」をねだられるようになったのです。

テレビの影響で一人称も「おれ」を気取り、「パンチ! キック!」を僕のどてっ腹にねじこんでくる。「ちゅんちゅんこわい」なチキンボーイは2年という時間が、見事に取りさってくれたのです。

そんなある日も、息子は買ってやった戦隊モノの剣で「えいや! えいや!」と遊んでいます。テレビのなかのヒーローはその剣で、おどろおどろしい悪者をやっつけている。そのため息子に、こんなことを言ってみました。

「あのな、ヒーローは強くてやさしいんだぞ。だからな、もしママが悪者にさらわれたら、お前がその剣で悪者をやっつけるんだぞ」。するとみるみるうちに息子の顔色はひょう変し、か細い声でこう訴えてきたのでした。

「このけんはこどものおもちゃだから、わるものをやっつけられないよ。わるものは、ぱぱがやっつけてね」。

冷静だな、オイッ! お笑い芸人カミナリのたくみくんばりのツッコミを、心のなかでするしかありませんでした。そして「ちゅんちゅんこわい」から本質的には何も変わってない、気が弱い子なんだなあと。

でもそんなお前が好き。全部、大好き。愛しさがこみ上げ「ねえ、ほっぺ食べていい?」「いいよお」。いつものように4歳児くんのぷくっと膨らんだほっぺを、あむあむしたのでした。

 

■村橋ゴローの育児連載

第1回 妻はきっと知らない。ボクが家事・育児の“ワンオペ夫“を14年続けられる理由。

第2回 不妊治療の末に授かった赤ちゃん。出ないおっぱい。ボクたちが経験した「産後うつ」

第3回 「この子捨てていい?」――地獄のような「産後うつ」乗り越え、ふたりで涙した夜

第4回 【週5で銭湯】子どもに社会を知ってもらう「湯育」(とういく)のススメ

第5回 結婚のきっかけは「あなたの子どもが産みたい」。借金地獄を救ってくれた妻のために、ボクができること

第6回 男の子がピンクを選んだっていい。4歳の息子が感じた「性別と色」の世界

第7回 「子育てやめます」妻に宛てた一通の手紙。ボクはあの時、育児うつになっていた

第8回 親にとって最高の「ぷじぇれんと」 言い間違いは、子どもが成長している証だ

第9回  42歳おっさんの「孤育て」 平日の昼間、公園にいたらヘンですか?

親も、子どもも、ひとりの人間。

100人いたら100通りの子育てがあり、正解はありません。

初めての子育てで不安。子どもの教育はどうしよう。

つい眉間にしわを寄せながら、慌ただしく世話してしまう。

そんな声もよく聞こえてきます。

親が安心して子育てできて、子どもの時間を大切にする地域や社会にーー。

ハッシュタグ #子どものじかん で、みなさんの声を聞かせてください。