1回きりの音楽療法がホスピスの患者さんに与える影響とは?

ホスピスで音楽療法をしていると、患者さんとの出会いが1回だけという場合があります。
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ホスピスで音楽療法をしていると、患者さんとの出会いが1回だけという場合があります。出会った時点で死が近い状態にある患者さんもいれば、初回のセッションではわりと元気だった人が、突然状態が悪化し、2度目のセッションを行う前に亡くなることも多々あります。では、1回だけの音楽療法にどれだけの効果があるのでしょうか?

この件について調べたリサーチがあります。米国認定音楽療法士がフロリダのホスピスで80人の患者さんを対象に個人セッションを行い、その結果を調べたものです。

ホスピスというと日本の場合「病棟」を連想する方が多いと思いますが、アメリカのホスピスとは日本の「緩和ケア病棟」「ホスピス」「在宅ケア」を合体させたようなもので、患者さんの住む場所は自宅、老人ホーム、病棟などさまざまです。また、アメリカではどのような病気でも余命が短い患者さんはホスピスケアを受けることができるため、患者さんの病名もいろいろです。

この研究では、音楽療法士たちが患者さんやご家族と信頼関係を築きながら、音楽を使ったリラクセーション、ライフレビュー(回想法)、スピリチュアルケア、グリーフケア、心のケアなどを提供しました。そして、音楽療法の前と後で、疼痛コントロール、身体的な安楽度、リラクセーションについて比較しました。その結果、すべての面で変化が見られたのです。論文には、1回きりの音楽療法セッションでも効果があると思われるとあります。

この研究結果は2001年に発表され、その後数多くの論文で引用されています。私がホスピス音楽療法士になった当時、アメリカのホスピスでも音楽療法士の存在は珍しいものでしたが、現在では多くの音楽療法士がホスピスで活動しています。その大きな理由は、エビデンスが示されたことにあります。今回紹介した研究結果もそのようなエビデンスのひとつです。

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(2018年12月2日「佐藤由美子の音楽療法日記」より転載)

佐藤由美子(さとう・ゆみこ)

ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院を卒業後、アメリカと日本のホスピスで音楽療法を実践。著書に『ラスト・ソング』『死に逝く人は何を想うのか』。