奈良公園のシカが「おじぎ」する理由は感謝ではなかった(研究結果)

シカにかまれる事故が過去最多に。せんべいを上手にあげる方法は?
人に群がるシカたち=奈良市の奈良公園
人に群がるシカたち=奈良市の奈良公園
Yuri Smityuk/TASS

奈良公園のシカにかまれたり体当たりされたりしてけがを負う事故が増えている。2017年度は過去最多の186人が負傷した。海外からの観光客の増加に伴う入園者の増加が背景にある。県など関係団体は3日、シカせんべいのあげ方を英語、中国語、日本語で説明した看板を公園内にもうけた。

■じらすのはNG

奈良県庁奈良公園室によると、2017年度の負傷者数は2016年度(121人)のおよそ1.5倍。186人のうち144人が海外からで、うち122人が中国からきた観光客という。体当たりされて骨折するケースもあったが、ほとんどは軽傷で済んでいる。

事故の多くが、えさになるシカせんべいをあげているとき。奈良公園のシカ特有の、頭を上下に振る行動「おじぎ」が見たくて、名物のシカせんべいをあげるのをじらす客が多いとという。だが、じらす行為について、「野生動物なのでじらすのは危険」と関係者は指摘する。

奈良公園のシカは、シカせんべいをもらうときに「おじぎ」をするという特徴があり、それが人気の一つだ。その様子を見たいがために、集まってきたシカに、シカせんべいをなかなかあげずにじらしてしまい、その結果かみつかれたりする理由の一つにもなっている。

■シカの「おじぎ」の目的は

奈良公園のシカはなぜ、おじぎをするのだろうか。奈良女子大大学院の院生(当時)の西山若菜さんは奈良公園のシカの「おじぎ行動」の意味合いを調べ、2018年3月に開かれた日本生態学会で発表した。

同学会での発表要旨によると、おじぎの回数が多いほど「シカせんべいをもらえる回数は多かった」という。さらに、シカせんべいを見せると「ほとんどのシカがおじぎをした」が、せんべいを持っていない場合はほとんどのシカが「おじぎをしなかった」という。

つまり、「おじぎすることが、せんべいをもらうのに有利」な行動だということが、シカの間で学習された結果のようだ。

■じらしてみると...

調査ではシカせんべいを見せてシカをじらし続けることも試みた。すると、「攻撃してきたシカほど短時間に頻繁におじぎした」という。

ただ、「おじぎそのものには攻撃の要素はなく、攻撃するかどうかは、そのシカの気性による」らしい。

気になるのが、あげる側の認識だ。

■「おじぎ」は「あいさつ」「感謝」と思っている人も

「シカのおじぎをどう捉えているか」と質問したところ、「催促」が最多だったが、「あいさつ」「感謝」などの回答もあったという。

奈良のシカが行うおじぎ行動は、シカにとってはせんべいをもらうための「催促」なのに、人間がとらえる意味と、「若干のずれがあると考えられた」としている。

■公園の住民だけど「野生」です

奈良公園一帯のシカを保護している「奈良の鹿愛護会」の担当者は、シカにせんべいを与える際の注意点についてこう話す。

「何度もおじぎをさせたくてじらす人が少なくないが、奈良公園のシカは野生だということを分かってほしい。じらされれば怒ってかみつくシカもいます」

「せんべいをあげるときは手のひらに乗せた状態であげるとかみつかれにくい」

「シカは自分より小さな人間に対して、優位さを感じて、強い行動に出やすい。小さな子にせんべいをあげるときは、必ず大人も一緒にいてほしい」

■「ホールドアップ」が有効

県奈良公園室の担当者も「朝はおなかをすかせていることが多く、ドッと団体で押しかけてこられた観光客がおびえて、えさを持ったまま手を上げてしまい、よけいに危険。押しかけられた場合は、いさぎよくせんべいを地面に投げて、空になった手を上にあげて何もないことを示すのが予防法」という。

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