NASA、火星有人飛行用ロケットエンジンをテスト

2015年11月、11.6億ドルの契約がAerojet Rocketdyneと結ばれ、RS-25エンジンの開発が再開された。

NASAは、次期重量物打ち上げロケット、Space Launch System(SLS)用の最初のロケットエンジン、RS-25を500秒間テスト噴射させることに成功した。SLSはコアステージ(第2段)に4基のRS-25エンジンを使用し、小惑星や火星等の深宇宙へ人間を運ぶために設計されている。

NASAは、「次回はロケットエンジン No. 2059を同じ時間噴射させ、45年ぶり以上となる人間を深宇宙に送り込むミッションを実行する」と発表した。

このテストに使用されたエンジンは、スペースシャトルプログラムで使われたものであることが興味深い。スペースシャトルの引退後、RS-25エンジン(スペースシャトルの主要エンジンとしても知られている)は16基残っていた。

RS-25エンジンの主契約業者であるAerojet Rocketdyneは、SLSの性能要求を満たすようにエンジンを改造した。この改造によって、エンジンは109%の推進レベルで動作することが可能になる。一般にスペースシャトルの通常の推進レベルは104%だった。

4基のRS-25ロケットエンジンには、1対のブースターロケットが加わり、初のSLS飛行用に構成される。

Space Launch Systemおよび内蔵された4基のRS-25エンジンと2基の固体燃料ブースターロケット/画像提供:NASA

RS-25エンジンは、1981年から2001年の間に、135回のスペースシャトル作戦で使用されたことから、Aerojet Rocketdyneはこれを「世界で最も信頼性の高いロケットブースターエンジン」と呼んでいる。

スペースシャトルプログラム期間中、RS-25エンジンはスペースシャトル軌道船と共に地球に戻り、調整後に再利用された。SLSでは、エンジンは戻ってこない。

ロケットエンジンが使い捨てとなるため、現在ある16基のRS-25エンジンで、4回のSLS飛行が可能となる。昨年11月、11.6億ドルの契約がAerojet Rocketdyneと結ばれ、RS-25エンジンの開発が再開された。この契約でNASAは、追加で6基のRS-25エンジンを発注できるため、第5回目のSLS飛行が可能になる。

エンジンのテストは、引き続きミシシッピー州のNASAステニス宇宙センターで行われ、SLSプログラムはアラバマ州のNASAマーシャル宇宙飛行センターが管轄する。最終的に、SLSはフロリダ州ケネディー宇宙センターの地上部隊と発射設備を使用する予定だ。

今週のテストは、改造されたエンジンの能力を検証し、SLSに必要な異なる動作環境を確認するために行われた。

「このテストが、SLSの初飛行に向けた現行の設計が正しいことを証明する重要な一歩であるだけでなく、このエンジンがSLSの有人飛行で再び飛行士を宇宙に運ぶための改造を受ける前に、あれほど多くの宇宙飛行士を乗せてきたことを思うと非常に感慨深い」― Steve Wofford、NASAマーシャル宇宙飛行センター、エンジン管理責任者

SLSは、Orionカプセルに最大6名の乗組員を乗せ、NASAの火星探査プロジェクトで計画された深宇宙の目的地へと運ぶ。ただし一部には、資金不足やミッションの目的が不明確であるとして、実現しないのではないかと疑う向きもある。批判者はSLSを、"Rocket to Nowhere" と呼んでいる。

画像提供:NASA

SLSプログラムの運命を決める要素は、来たるべき大統領選挙や政権交代を含め数多くあるが、NASAの次期重量級ロケットが維持可能かどうかは、時期を待つほかない。

RS-25エンジン4基を塔載したSLSの初飛行は、無人のOrionに13基のCubeSatを載せて2018年に実施される予定だ。

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

(2016年03月14日 TechCrunch Japan「NASA、火星有人飛行用ロケットエンジンをテスト」より転載)

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